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旧コラム 2011年1月 2ページ目
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「債務はどう相続されるの?」【相続・家庭問題10】
弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。
水槽がいよいよ凄いことになって来ました。白コリドラスが増え続けていますし,オトシンクルスネグロの赤ちゃんまで登場してきました。
みんなが大きくなったら水槽を増やさないといけないなと頭が痛いです。
さて,相続のご相談を受ける中で,個人の借金がある場合の相続のされ方や遺産分割協議での扱いについて,ご存じない方や誤解されている方が多くいらっしゃると感じています。
そこで,今回は,故人(「被相続人」といいます)に債務がある場合の,債務相続のルール,それを踏まえて遺産分割ではどう扱ったらいいのか,についてお話しようと思います。
◆ 債務の相続についてのルール
被相続人Aさんが亡くなり,その相続人が妻のBさんと子のC,Dさんだったとしましょう。AさんにはE銀行から借りた1000万円の借金を残しました。これだけなら相続放棄をすればいいのですが,そこそこの財産があったため,皆が単純承認しました。
債務はどのように相続されるのでしょうか。
借金は「可分債務」です。
例えば,「車一台」を引き渡す義務など分割できない(分割して車の一部を引き渡されても意味がないですね)債務を「不可分債務」,借金のように金額・数量などで分割できる債務を「可分債務」と言います。
相続が発生すると,「可分債務」は,各相続人に,法定相続分に従って,当然に分割して承継されます。上の例では,Aの相続に関し,相続人の各法定相 続分は,Bが1/2,C,Dが各1/4です。したがって,可分債務であるAの1000万円の借金は,Bが500万円,CとDが各250万円とに分割して受 け継がれることになります。
E銀行の方から見ると,遺産分割を待たずに相続人に対して請求することができる一方,Bに対して500万円,C・Dに対して各250万円しか請求することができないことになります。
もちろん,BがAの借金の保証人であった場合には,Bは保証人として1000万全額の債務を負いますが,それは相続とは別の話です。
◆ 遺産分割協議での取り扱い
借金は各相続人にその法定相続分に応じて「当然に」承継されます。
そのため,遺産分割が終了していなくてもE銀行は各相続人に返済を請求することができます。
では,相続人BCDの話し合いで,債務はすべてCだけが引き受けるという遺産分割協議を成立させることはできるでしょうか。
実は,そのような遺産分割協議は相続人BCD間だけで有効になるだけで,債権者E銀行には主張できません。「可分債務」である借金は,法定相続分に したがって「当然に」分割承継されますし,もし債権者にも対抗できるとすると財産・収入がない相続人に債務を集められて債権者が損失を被ってしまいかねな いからです。
財産を多く受け継ぐ相続人が債務も引き継ぐという遺産分割協議を行うことは稀ではないと思います。商売をされている方の相続は特にそうでしょう。
そのような内容の遺産分割協議が債権者に対抗できないということは,次のように困った事態が生じえます。
Cが財産を多く引き継ぐ代わりにE 銀行の借金も承継する内容で遺産分割を行って,E銀王に対して事実上返済を続けていたとしましょう。その後,Cがなんらかの事情で返済をできなくなりまし た。E銀行から,B・Dに対して,その法定相続分に応じて,返済要求をされました。B・Dは遺産分割の結果をE銀行に主張することはできませんから,返済 要求を拒めません。という事態です。
B・Dからすれば,遺産は多くCに取られにもかかわらず,借金は法定相続分に応じて支払わされるという,矛盾した結果を受け入れることになるかもしれません。
◆ どうすればいいか?
債務はCが引き継ぐ遺産分割協議の結果を借金にも及ぼそうとすれば,債権者との合意がどうしても必要です。そのような協議は,債権者の合意が得られてから成立させる必要があるでしょう。
具体的には,BCDが,E銀行との間で,Aの債務はCだけが引き受けるという契約(免責的債務引受契約)を締結すればいいのです。免責的債務引受契 約とは,引き受ける人が債務を負い,引き受けてもらう人は債務を免れるという契約です。そうすれば,Cがもし借金を支払えなくなっても,BDがCに代わっ て支払う必要がなくなります。
その際,BDが,保証人になったり,「重畳的債務引受契約」(引き受けてもらう人と引き受ける人が重ねて債務を負う契約)を締結したら,あまり意味がありません。
◆ 最後に
以上のように,遺産分割協議を行う際には,財産だけではなく,被相続人の債務の取り扱いが今後どうなるのかも考慮に入れて行う必要があります。
なお,保証債務の相続のご相談もよくあります。
保証債務も,法定相続分に応じて分割承継されます(なお,故人が代表者包括根保証を入れている場合には,保証人の地位は相続されませんが,すでに発生している債務については分割承継します)。
保証債務の場合は,その存在がわかりにくいこともあって,知らずに相続を受けたり,それを考慮せずに遺産分割をするケースもあります。気をつけて下さい。
(なかた法律事務所) 2011年1月19日 00:35
「忘れた頃に借金返済の督促が来たら」 【借金問題】
弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。
職業柄,首と肩がよく張ります。そのため,定期的に事務所近くのマッサージ屋さんに行っています。
昨年,上海に行った際,気功院というところに表敬訪問して来ました。気功院といっても,公的な病院兼教育施設です。気功の先生はみな医師資格を持っ ているということでした。日本とは違い,気功・マッサージの位置は,西洋医術に劣らない権威があるようです。私もマッサージを受けたのですが,気功の 効果か,体が半日ぽかぽかしていました。
肩こりの悩みを持っていると,健康維持のために,マッサージはありがたく,それは他の医者とは変わりません。健康保険が使えたり,医療費控除の対象となったりしないものでしょうか。
さて,忘れた頃に借金返済の督促が来たという話をよく聞きます。「知人から借りたお金は返したと思うのだけど古いことだから思い出せない」,「督促 が来ないからもう大丈夫だと安心していたら多額の遅延損害金と一緒に請求された」,など事情は様々です。中には,古い債権を買い取って督促してくるような 悪質な業者もあるようです。
そこで,「忘れた頃に借金の督促が来たら」というテーマで,消滅時効のお話と注意点をお話したいと思います。
◆ 借金の消滅時効をご存知でしょうか?
忘れた頃に借金の返済の督促が来たとしたら,もうその借金は時効にかかっているかもしれません。
貸金などの債権は,権利を行使することができるときから,10年間行使しないときは消滅します。貸金業者の貸金債権は,商事債権として扱われ,5年間で消滅します。
それが,債権の消滅時効であり,誰から借りたのかによって消滅時効の期間が異なります。
貸金業者からの督促でしたら,最終返済日から5年経っていれば時効にかかっていると疑ってください。支払督促,訴訟,差押えなどの時効中断手続をとられていないかぎりは,時効にかかっている可能性が高いです。
もし時効にかかっていたら,「時効の援用」をすれば,借金は確定的に消滅します。時効の援用とは,消滅時効の効果を確定させるために必要な意思表示です。法的に形式は問われないのですが,念のため内容証明郵便で行った方が安心です。
時効制度の詳細は,また機会を見つけてお話します。
◆ 督促に対してはどのように対応したらいい?
消滅時効にかかっているのでしたら,あなたが時効を援用すれば支払わなくてすみます。相手には支払義務があるか調べると答えればいいです。
また,借金をすべて返済したはずだが,古い話だからその証拠(領収書など)が見つからないという場合も,時効を援用すればいいのです(返済した事実を証明しなくても支払い義務を免れることができます)。
しかし,時効制度を知っている人物や業者は,もし自分の貸金が消滅時効にかかっていたとしても,その上で,あなたに対し「少しでもいいから払ってくれ」「誠意を見せてくれたらいい」と言ってきます。
しかし,「時効にかかっているかもしれない」と思うなら,あなたはそのような言葉に応じて支払ってはいけません。それが小さい金額でもです。債務承認書に署名したり,返済の約束もしてはいけません。
実は,時効が完成した後,あなたがそれを知らずに一部でも返済等債務の承認をしてしまうと,信義誠実の原則により,あなたの時効の援用は認めないというのが判例です。
それを知っている人物は,あなたに対して,小さい金額でも払わせたり,債務の承認をさせようとしたりします。払ってしまうと,残りの金額も「時効は援用できないから返せ」と言ってきます。
実際にしばしばある話です。
判例の理屈は次のとおりです。
時効の完成後に債務者が債務の承認をすることは,時効の主張と相容れない行為である。債権者は,債務者がもう時効の援用をしないだろうと信頼するだろう。したがって,その後は債務者に時効の援用を認めないことが信義則上相当である。
でも,時効が完成した後に返済すると時効の援用を認めないということが,常に正義に適うでしょうか?現実にそれを悪用する人物はいます。時効を知らない人がそのような人物にだまし討ちを食らう可能性があります。
そこで,最高裁の判例ではなく,下級審の裁判例ですが,時効が完成した後に返済があっても例外的に時効の援用を認めたものがあります。
先にお話したように,時効完成後の返済があれば時効援用を認めない判例の理屈は,もう時効援用はないだろうと債権者が信頼・期待する以上,そのとお り時効援用を認めないのが信義則に適うというものでした。そのような理屈であったら,相手方がそのような期待をしない場合には,債務者の時効の援用を否定 する必要はないはずです。
そこで,裁判例では,「債権者及び債務者の各具体的事情を総合考慮の上,信義則に照らして,債務者がもはや時効の援用をしない趣旨であるとの保護す べき信頼が債権者に生じたとはいえないような場合には,債務者にその完成した消滅時効の援用を認めるのが相当といわなければならない。」として,その事例 では消滅時効の援用を認めました。
どういう事情があれば債権者に保護するべき信頼が生じていないと認められるのかは,まだ裁判例の蓄積がないため,判断しずらい状況です。ただし,もし返済などの債務承認をしてしまった後でも,争う余地があることは確かです。
◆ 最後に
忘れた頃に請求が来たという相談は意外に多いです。
その場合には,遅延損害金が加算され,元金の2倍の請求が来たりして,驚かれるようです。
その中には,時効にかかっていたり,引き直し計算をすると逆に過払金が出たりするケースも多いです。
ご自分で判断するのではなく,弁護士に相談して対応するのが安心です。
(なかた法律事務所) 2011年1月18日 00:34
「遺言書が見つかったらどうしたらいい?」 【相続問題】
弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。
週末から非常に寒かったですね。雪が少しでも降ると,慣れてない分,滑らないように歩くのに気を使いますね。
さて,遺言作成がなぜ必要かについては以前にお話しましたところです。今回は,故人が遺言を残していたことが,亡くなられてからわかった場合にどうしたらいいのかをお話したいと思います。
◆ 自筆証書遺言の形式をとった遺言書が見つかった場合
自筆証書遺言が見つかった場合には,家庭裁判所において検認の手続をする必要があります(しなくても遺言の効力には影響しませんが,過料に処されると法律で決まっています)。
検認手続とは,遺言書の存在や内容の保存を確実にして,後日の隠匿や変造を防ぐ手続です。遺言の有効性を確認するものではありません
なお,封印がある遺言書の場合には,勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で開封する必要があります(反した場合,過料に処されると法律で決まっています)。
また,遺言書を変造・破棄した人は,相続欠格者となり,相続人としての資格を失います。
なお,公正証書遺言の場合には,検認手続は要りません。隠匿や変造の危険がないからです。
◆ 遺言書が見つかったのが遺産分割をする前だったら
相続人全員の合意(遺贈がある場合には受遺者も含みます)があれば,遺言と異なる遺産分割をすることはできます。ただし,遺言で遺言執行者が定められている場合には,遺言執行者との関係で問題が生じます。
なお,遺言の執行に関しては,遺言執行者が遺言で決められていない限りは,一部の内容の遺言を除いて,相続人が執行をすることができます。
もちろん,遺言執行者を家庭裁判所に選任してもらうこともできます。
◆ 遺産分割をした後に遺言書が見つかったら
遺産分割後に遺言が見つかった場合も,次の理屈ですでに行った遺産分割の効力を考えることになります。
遺産分割は,相続人等の遺産分割協議当事者の1人でも欠けると無効になります。また,遺産が実はなかったということだと当然に無効になります。
さらに,遺産分割協議の前提となる重要な事項について錯誤(そのことを知っていたら合意しなかった)がある場合も無効とする余地があります。そんな遺言があったなら,あんな分割合意はしなかったと主張するのです。
少し説明すると,以下のようになります。
◆ 相続人資格に変更がある遺言があった場合は?
認知,排除またはその取消しが遺言に書かれていた場合には相続人資格に変更があります。そのため,分割協議は有効だが金銭で賠償しないといけなくなる,分割協議が無効となる,などの事態を招きます。
◆ 遺贈がある場合は?
遺贈(遺言による贈与)があった場合には,それが全ての財産の遺贈であれば分割協議の対象となる財産が存在しないことになり,すでに行った遺産分割協議は無効です。
相続人ではない第三者に割合的(遺産の2分の1など)遺贈をした場合には,遺産分割の当事者が欠けていたことになります。そのため,すでになされた協議が無効となります。
相続人に対してそのような遺贈があった場合には,遺言があったらそんな不利な内容で合意しなかったという相続人から錯誤無効を主張できることになります。
特定の財産の遺贈があった場合は,その財産は遺産分割協議の対象から外れますので,その限りで遺産分割協議が無効となります。もちろん,それ以外の部分も,錯誤無効の話が出てきます。
◆ 「相続させる」旨の遺言があった場合は?
特定の相続人に対して,「包括的」に,「割合的」に,あるいは「特定」の財産を,「相続させる」との遺言があった場合です。その性質は,遺産分割方法の指定だとされています。
不動産を「相続させる」旨の遺言を残しておくと,単独申請で移転登記できるため(遺贈だとすると登記義務者である相続人との共同申請になります),このような遺言がさせているという事情があります。
包括的な場合には,全ての財産の遺贈と同じく,遺産分割協議は無効となるでしょう。
割合的な場合には,当該相続人が錯誤無効を主張できます。
特定の財産の場合には,相続人に対する特定遺贈の場合と同様に,その限りで遺産分割協議は無効となるでしょう。もちろん,それを前提に行った協議については錯誤無効の話が出てきます。
◆ その他の内容の遺言があった場合は?
その他の内容が定められた遺言が見つかった場合も,はじめに書かせていただいた理屈で考えていくことになろうかと思います。
◆ 最後に
今回は,少し難しいお話かなと思います。
遺言が見つかった場合,このように少しややこしい話になりかねません。
お早めに弁護士にご相談ください。
(なかた法律事務所) 2011年1月16日 00:33
「事業承継対策の必要性」 【企業法務】
弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。
大昔の話ですが,私が就職活動をする際,最初に受けた某企業の集団面接において,「企業にとって何が一番大切か?」と聞かれたことがありました。
私が「心です」と元気に答えると,面接官やほかの学生に笑われてしまいました。他の学生はもっともらしいことを話しており,恥ずかしかったです。
幼稚な考えだと思われたのでしょうか。当然,面接には落ちました。
しかし,銀行員あるいは弁護士として多くの企業を見てきた現在でも,「企業には心が一番大事だ」という考えは変わっていません。
心=経営理念は企業組織を貫く柱です。経営者の「心」が,組織の末端にまで到達していなければ,営業活動は上手くいくはずありません(営業マンが何 を話してもお客さんに何も伝わりません)。また,企業不祥事の原因も,経営理念が行き渡らなかったためのモラルが低下であることが多いようです。リスク管 理の根幹も経営理念の浸透にあります。
事業活動の根幹は,「心」だと思います。
ちなみにその会社は,斜陽の一途をたどっています。
さて,今回は,中小企業の「事業承継対策はなぜ必要か?」についてのお話をさせてください。
事業承継対策の必要性については,近年さかんに宣伝され,経営承継円滑化法など立法や金融支援制度などの手当てもされているところです。経営者の方に対して,金融業界や弁護士,税理士など,様々な業界からアプローチがされているのではないでしょうか。
私なりの考えることを,銀行員として多くの中小企業経営を見てきた経験やリスク管理部署にいた経験も踏まえた上で,かつ法律の専門家としての観点から(といっては偉そうですが),お話しさせていただきたいと思います。
結局は,「心」の引継ぎが必要だというよくわらない話になりそうですが…
◆ 中小企業の事業の継続のためには・・・
企業は,事業を継続していくことに存在意義のある組織です(ゴーイング・コンサーン)。企業活動には,経営者一族はもちろん,従業員や取引先など利害関係者が多く存在します。企業がその事業活動を止めてしまうと,それらの利害関係者に多大な影響を与えてしまいます。
大企業をイメージすると,一般的には株主(企業の所有者)と経営・事業資産は分離しています(「所有と経営の分離」)。株主の経営に対する影響力 は限られていますし,よほどの大株主が変更しない限り経営者は代わりません。事業資産も会社名義なので株主の変更により影響を受けません。そのため,株主 が代わっても事業継続に支障をきたすことはないのが一般的です。
個人事業主はもちろん,法人であっても,わが国の中小企業の場合は様子が変わります。所有(株主)と経営は分離していません。事業自体が株主(兼経 営者)の資質に左右されることが大きいことはもちろん,株主の変更は即経営者の変更を意味します。さらに,工場や社屋など事業用資産が株主名義になってい るケースも多いです。したがって,株主(兼経営者)が交代すると,事業継続への影響が大きいのです。
そのため,中小企業においては,事業の継続を確保するために,ひいては多くの利害関係人のために,後継者などにスムーズに事業を引き継ぐことを考えなければならないのです。
それが事業承継の問題です。
◆ 中小企業の事業承継対策をしないと
具体的な話をしましょう。
例えば,経営者が,遺言を作成することなく急に亡くなったとします。経営者の遺産の大部分は持ち株や事業用資産でした。法定相続分に応じて,持ち株や事業用資産(事業用不動産など)が分割相続されたとしましょう。
後継者はなんとなく長男みたいなのですが,まだまだ周りから信認されているとは言えず,そのため他の相続人も納得していません。
そして,仕事ができて従業員や取引先の信認も厚い次男が,他に株を持っている親族なども抱きこんで後継者争いが始まりました。
長男は何とか遺産分割協議をまとめたいが,話合いがまとまりそうもない。
極端な,最悪なケースです。この会社は,事業継続自体が危ぶまれますし,会社が分裂する可能性もあるでしょう。
このようにならないために事業承継の対策が必要なのです。
上の会社は何が悪かったのでしょう?
◆ 後継者の育成
上の例では,そもそも後継者の育成がおざなりでした。
まず,事業承継の肝は,言うまでもなく,後継者の育成です(M&A,MBOも含めて)。
後継者が育たなければ,他のどんな対策をとっても意味がありません。
ちなみに,銀行時代の経験上,経営者代替わりによって取引先の企業が傾いたという実例は珍しくありませんでした。
さらに,後継者争いが起こった企業の有形無形のダメージは相当なものでした。
そのようなことがあって,銀行も,取引先企業に後継者候補がいるかいないか,また後継者候補の資質などを,みなさんが思っている以上に気にしています。銀行の融資対応にも少なからず影響すると言ってもいいと思います。
◆ 一般的に言われる「事業承継対策」
一般的に「事業承継対策」といわれている方策は,後継者育成のための環境作り,引き継いだ後継者へのサポートの意味合いを持ちます。
企業は,「ヒト・モノ・カネ」で出来ています(「ジョウホウ」を含めることもありますが,ここでは「ヒト」に含まれると考えてください)。
事業承継というからには,それらを後継者にスムーズに引き継ぐ必要があります。
せっかく育てた後継者に,会社の「ヒト・モノ・カネ」をスムーズに引き継がないと,後継者を育成した意味がありません。これも当然に重要なことです。
◆ 「モノ・カネ」の承継の問題
上の例の「モノ・カネ」の面を話すと,まず,事業用資産が分割取得されている面が問題です。上の例のように親族間の関係が悪化すると,事業継続に支障を来たすおそれがあります。
また,持ち株が共有取得されている問題もあります。そもそも関係悪化による事業継続への支障がおきるという問題に加え,新しい取締役等の決定もままならない手続上の問題も生じ得ます。
さらに,資産形成面でも,持ち株と事業用資産に集中をさせすぎていて,遺産分割に柔軟性を持たせられない問題もあります。
◆ 「ヒト」の承継の問題
一方,「ヒト」の承継の問題は,従業員の志気,取引先との関係,銀行との関係など,「心」の問題になります。
上の例では,経営者の生前の行為あるいは遺言によって,他の親族が事業の引継ぎを納得できるような環境を作れなかったため争いを招きました。
さらに,従業員がモラルを維持できるような,取引先や銀行との関係を維持できるような後継体制が整備されていなかった問題もあります。対策をしない うちに争いが起きてしまった以上は,従業員の士気は下がり,築き上げた企業風土は消え去ります。取引先もどちらにつくか混乱するでしょう。もしかしたら銀 行は融資を引き上げるかもしれません。
そのようになってしまうと収拾をつけるのは難しくなります。事業継続が難しくなるか,あるいはダメージを負ったまま分裂してしまうかもしれません。
◆ 事業承継対策の必要性
上に挙げたのは極端な例ですが,多かれ少なかれ,中小企業にとっての経営者の交代は企業の命運を左右するリスクがあることなのはわかっていただいたと思います。
中小企業の事業承継が,企業にとっての大きなリスク要因である以上(しかも保険ではカバーできません),経営者にとって,そのリスク管理は必須です。
「家族が争って事業をだめにするようなことはあり得ない」と考える方もいらっしゃるでしょうが,それは事業承継リスク管理の放棄です。問題が起きた 場合のダメージは大きいため,問題発生の可能性が完全にゼロと証明できない限りは,それに対する対策をする必要があります。
◆ 事業承継対策っていうけど・・・
事業承継対策は具体的にどういうことをするべきか,上の例に沿って,ほんのさわりだけお話しさせていただきます。詳しくは機会を見つけてお話しようと思います。
◆ 後継者の育成には
企業理念,取引先とのパイプ,企業人として心構え,経営者の自覚,カリスマ等々の引継ぎは非常に難しく,皆が納得できるような後継者育成には時間がかかります。
また,経営者は,往々にして,自分が元気なうちはすべて自分がやりたいと思う傾向があると思います。企業経営者には,ある程度自分を抑えて,計画的に後継者を育てる責任があると思います。
後継者の育成の方法としては,他社に修行に出す,社内で育てていく,子会社や一部門を任せる,などいろいろな方針があると思います。
経験上,社内で育成する場合には注意が必要だと思います。どうしても,裸の王様になりがちなような気がします。
銀行のジュニア層向けの親族会に積極的に参加させたり,社内でもきつい仕事を受け持って苦労を知ってもらうなどもいいかもしれません。
個人的には,中小企業経営者やその後継者が集まる企業法務あるいはマネジメントの講座や私塾に参加することもいいと思います。意識の高い目上の人あるいは対等の人との交流は,きっとよい財産になると思います。
我田引水ですが,私も大学と連携して他の弁護士や税理士などと,そのような戦略的ビジネス法務の研究会の準備をしているところです。
◆ 「モノ・カネ」の承継は,財産権の承継の問題です。
財産権の承継の問題である以上,持ち株や事業資産の分散を防ぐ対処は,遺言の作成や生前の売買・生前贈与・死因贈与によってできます。ただし,どの 方法をとっても,極端な場合には遺留分減殺請求をされて結局争いが生じかねません。この点で,経営承継円滑化法の特例も万全とはいえません。
また,資産の形成方法にも配慮する必要があります。過度に持ち株と事業用資産に集中せず,遺言作成や将来の遺産分割に柔軟性を持たせる方がベターです。
なお,株式が共有状態になる手続上の支障は,きちんと定款等の手当てをすれば大丈夫です。
◆ 「ヒト」の承継の問題はどうでしょう。
「ヒト」の引継ぎは,従業員の志気,取引先との関係,銀行との関係,他の株主との関係など,「心」の問題になります。対策は簡単ではなく,一朝一夕にはいきません。
「ヒト」の承継には,納得のいく後継者の育成を前提に,経営者の想いやメッセージを利害関係人に対して伝えていくことが必要です。経営者の想いを 表す遺言の作成によって,経営者の理念,会社に対する想い,後に残された関係者に対する願いを伝えることも1つの方法でしょう。
「モノ・カネ」の承継対策だけでは限界があり,「ヒト」の承継対策が不可欠です。
「モノ・カネ」や相続税対策ばかり考えても意味はないのです。利害関係者の納得を得られないような(「ヒト」がうまく承継できないような)対策を講じても,万全な対策にはなりません。
「ヒト」の承継が完全なら,そもそも争いは生じません。むしろ,他の方策をとる必要はないとも言えるかもしれません。
もっとも,実際には万が一にも争いが生じるリスクは消せないため,「モノ・カネ」の対策も不可欠なのですが。
そのような観点で事業承継を準備して初めて,一般的な事業承継対策も実を結ぶことになります。
◆ 最後に
企業戦略としての事業承継は,経営者が自ら決断・実行する部分が大きなウェイトを占めます。企業や経営のことがわからない専門家のアドバイスだけで準備をしても不十分です。
今回は,抽象的な話に終始してしまった感があります。具体的な話はまたの機会にさせていただきます。
(なかた法律事務所) 2011年1月15日 00:32
「新卒者の内定を取り消さざるを得ない」 【企業法務】
弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。
先日の中国新聞紙上に,日本郵便が新卒者の採用を中止するという記事が載っていました。
近年の経営環境の悪化によって,新卒採用を見合わせる企業が増えてきていますが,学生には気の毒なことです。士気の低下や社員構成がいびつになるなど,ゴーイング・コンサーンとしての企業自身にもいい影響はありません。
新卒採用を見合せる会社が増えているとともに,経営状況の悪化により採用内定を取り消す会社のことも毎年のようにニュース出てくるようになりました。
そこで,今回は,採用内定の取り消しのお話をしようと思います。
◆ 採用内定とは?
採用内定とは,企業が新規学卒者を採用する場合、在学中に選考を行い合格通知を出した上で、翌春の卒業を待って入社させる採用方法です。
現在では,採用内定段階で一定の労働契約が成立するとされています。契約が成立していないと考えてしまうと,就職活動をすでに止めて入社日を心待ち にしている学生の保護が図られないからです。(なお,口頭の内々定段階ではまだ1社に絞っておらず契約が成立したとは認められがたいです。)
入社は翌春であるから契約には「始期」がついており,また採用内定期間中は企業に特別の「解約権」が「留保」されていると考えられているため,結局,「解約権留保付始期付労働契約」が成立するとされています。
◆ 採用内定取消とは?
採用内定によって上記のような労働契約が成立するため,その取り消しは,「解雇」の性質をもちます。したがって,合理的理由・社会相当性がない取消は,解雇権の濫用として無効になります。
そして,内定において解約権が留保されている趣旨は、採用内定段階では十分知りえなかったことにつき必要な補充調査を行うため、最終的な決定を留保する点にあるとされます。
したがって、内定取消は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由とした採用内定の取消しが、解 約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的理由が存し社会通念上相当と是認されるものに限り,許されることになります(大日本印刷事件判決)。
具体的には,長期療養を必要とする病気の罹患が判明した,犯罪で訴追され入社日以降通常通り勤務できない,経歴書・身上書への虚偽記載が見つかった,卒業延期(不能)が判明した,などです。
◆ 経営状態が悪化したために採用内定を取り消すことが認められるか?
経営の危機も,客観的に合理的理由が存し社会通念上相当と是認される限りで,採用内定取消の理由になります。
経営状態の急激な悪化状況,採用過程の事情,内定取消を回避する経営努力状況など,具体的な事情に基づいて判断されます。
実際の例では,訴訟までもつれることは少なく,一定の謝罪金などを交付して学生側に誠意を見せることが多いと思います。
◆ 採用内定取消のペナルティ
新規学卒者に対する採用内定取消は,あらかじめ公共職業安定所長と学校長に対し,通知をしなければならないことになっています。
そして,一定の場合には,企業名等が厚生労働省のサイトなどに公表されますし,ハローワークから管轄地域の学校に情報が提供されます。
やはり,企業にとって一番大きい損失は,企業イメージの悪化や信用失墜でしょう。取り戻すのに何年かかるかわかりません。採用内定取消の目的である経営改善どころではなくなるかもしれません。
◆ 自宅待機
採用内定を取り消すのは忍びない,しかしラインが1つ停止しており,今来てもらっても仕事がない。
そのような場合には,自宅待機の方法をとることがあるでしょう。
自宅待機には,従業員との合意による場合と一方的な自宅待機命令の場合とがあります。前者では合意による手当,後者の場合には休業手当相当の手当を支払う必要があるでしょう。
どの方法であっても,あらかじめ公共職業安定所長や学校長への通知が必要となります。
◆ 最後に
採用内定取消や自宅待機は,それがやむを得ない事情による場合であっても,新規学卒者にとっては大きな損失を与えることになります。また,企業イメージや信用も大きく傷つくことになります。誰も得をしません。
新規採用は計画的に行う,雇った以上は不義理をしない,というのが企業側に必要な心構えでしょう。かといって,採用に慎重になりすぎるのは,企業の活性化を阻害し本末転倒ですが・・・。
(なかた法律事務所) 2011年1月13日 00:31
「亡くなった父の借金が見つかった!」 【相続問題】
弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。
「冬晴れ」という季語の印象が強いからでしょうか,冬にはすっきりと晴れる日が多いようなイメージを持っています。
ところが,この冬はからっと晴れる日が少ないですね。
そのため,洗濯物が乾きにくいようで,私のタンスの中の衣類はどんどん減っていって,中身がすかすかになっています。
猛暑の昨夏はあれだけ憎らしかった太陽が,今は恋しいものです。
さて,前回は,相続放棄などについて簡単にお話をしましたが,今回はその補足です。
◆ 遺産がなく負債があるだけなら,相続放棄すればいいの?
単純にそうとも言い切れません。
以前に,過払金返還請求を説明させていただきました。
例えば,被相続人が10年以上も前からずっと消費者金融からお金を借りていた場合には,引直し計算をすると過払金が発生している可能性が大きいです。
外見上は「負債」を負っているようでも,実際には過払金返還請求権という「債権」を持っていることもあるのです。
過払金返還請求権は遺産です,負債が大きいからといって相続放棄をすると,それも引き継ぐことはできません。
「単純承認」をすると,被相続人の過払金返還請求権は,法定相続分に応じて各相続人に分割して帰属することとなります(もちろん請求し取り立てることができます。)。
過払金がでる可能性が高ければ,早めに弁護士等の専門家に相談し,熟慮期間中に過払金の存否の調査をしてもらってから,相続放棄の要否を検討するのもいいでしょう。
◆ 父の相続人は子の私1人だけですが(祖父母もいません),自分だけ相続放棄すればいい?
相続放棄をすると,初めから相続人ではなかった扱いになります。
ところで,相続が発生すると,被相続人に配偶者がいれば常に相続人となり,それとともに,子(第1順位)→子がいなければ直系尊属(第2順位)→子も直系尊属もいなければ兄弟姉妹(第3順位)の順で,相続人になります。
同順位の相続人の全員(子ならすべての子)が相続放棄をした場合には,その順位の相続人が最初からいなかったことになり,後順位の推定相続人が相続人となります。
ということは,あなたが相続放棄をすれば,第1順位の相続人がいないことになり,第2順位の直系尊属(父方の祖父・祖母)もいないから,第3順位の兄弟姉妹(あなたから見ると叔父叔母)が相続人となります。
第3順位の推定相続人である兄弟姉妹がすでに亡くなっているが,その子(あなたから見るといとこ)がいる場合には,代襲相続によって,いとこが相続人となります。
あなたの後順位に推定相続人がいなければ,あなただけが相続放棄をすると,もはや相続人がいなくなることになって,それでお終りです。
一 方,あなたの後順位の推定相続人がいる場合には,あなたが相続放棄をすると,後順位の推定相続人(いとこまで)が負債を相続してしまうことになります。通 常は,後順位の推定相続人も相続放棄をする必要があるでしょう。あなたが相続放棄をする場合には,後順位の推定相続人への配慮も必要になります。
◆ 親戚に相続放棄を依頼できない場合は?
例えば,被相続人の負債が大きく,残された妻と子にも財産がなく支払える見込みがないというケースで考えてみましょう。
妻と子が相続放棄をした場合は,上に記載したとおり,後順位の推定相続人が負債を相続します。そのため,後順位の推定相続人に対し,「子の相続放棄によってあなたが相続人となってしまうから相続放棄の手続をとってもらいたい」旨,お願いする必要があります。
一方,母と子が一度相続を受けて(単純承認),その後母と子が自己破産をした場合には,どうなるでしょう?
負債は単純承認した母子が引き継いだことになりますので,実際に相続人となっていない後順位の推定相続人は債務を相続することはありません。
その母子が自己破産をするだけで,結局は債務を免れることができます。後順位の推定相続人に対して相続放棄の依頼をする必要はありません。
どうしても親戚に迷惑をかけられないという場合には,ここら辺のことも,参考として考えていいかもしれません。
◆ 最後に
相続放棄は,簡単なようですが,法律的に難しい問題もあります。戸籍の取り寄せなどの手続も意外に大変だったりします。
弁護士等の専門家に相談・依頼されることをお勧めします。
(なかた法律事務所) 2011年1月12日 00:30
「入学辞退による授業料返還の話」 【消費者問題】
1月に入って,いよいよ受験シーズンがスタートしますね。
受験生がいらっしゃるご家庭は,いろいろご苦労が多いと思います。
ただ,往々にして,受験生本人だけは,そんな苦労は知らずのんびり構えているものです。
ちなみに,私が大学受験した年は大雪の年でした。ずいぶん寒い冬だったと記憶しています。今年も寒いので,もしかしたら雪の中での受験になるかもしれませんね
さて,今回は,受験に絡むお話として,授業料返還問題のお話をしようと思います
◆ 入学時納付金の返還問題とは?
大学受験をする場合,1校に絞って受験するのはまれなケースでしょう。いくつかの学校を併願するのが通例だと思います。
そのような場合に入学時納付金の返還問題が出てきます。
日程の早い大学(専門学校でも同様です)に合格し て,その大学の入学金や授業料など初年度納入金を支払ったとします。その後,日程の遅い本命の大学から合格通知が来ました。もちろん本命の大学に入学した いのですが,日程の早い大学に納めたお金の返還も要求したい。ところが,日程の早い学校の入試要項には,「納入された入学時納付金の返還は一切しません」 という「不返還特約」が存在する。それでも返還を要求できるか?
それが入学時納付金の返還問題です。
ちなみに,私の受験のときも日程の早い大学に入学時納付金を納めた記憶があります。
◆ 最高裁判例のルール
現在この問題については,最高裁の判例で一定のルールが示されています。
そのルールとは,
まず,在学契約は消費者契約にあたり消費者契約法 の適用がある。そのため要綱の不返還特約は,消費者契約法9条1項1号の損害賠償の予定または違約金の定めにあたる(同条項には,契約解除に伴う損害賠償 額の予定または違約金の定めは,解除の理由や時期等に応じて生じるべき平均的な損害額を超える部分が無効となると定めています)。
したがって,不返還特約のうち,入学辞退によって生じるべき「平均的損害」(客観的に通常生じると認められるであろう損害です)を超える部分は無効になる。
そして,入学時納付金のうち,授業料・施設利用料・自治会費などは,大学の学生に対するサービスの対価であるから,現実に授業などのサービスを受けていない以上は,返還するべきである。
一方,入学金は,大学に入学しうる地位を取得するための対価であり,学生がその地位を取得した以上は返還する必要がない。ただし,その額が不相当に高額であるなどの特段の事情があれば別である。
というものです。
したがって,入学金以外は返還してもらえる可能性が高いことになります。
◆ 入学辞退の申し出の時期に注意!
入学辞退の意思表示の時期は,原則として,3月31日までです。
4月1日には学生が進路をほぼ決めており,大学側が学業のレベルを落とさずに新たな入学者を確保することが難しくなるから,授業料等も入学辞退による「平均的損害」を超えないと判断されるのです。
もっとも,要項などに「入学式の無断欠席をもって入学辞退とみなす」旨の定めがあれば,その定めに従った入学辞退をしても返還を受けられるという判断がされています。
したがって,そのような定めもなく,4月1日以降に入学辞退をした場合には,授業料等の返還も請求できないことになります。
◆ 入学辞退の方法は?
法律的には,要項などの定めにかかわらず,口頭での申し出であっても,有効な入学辞退の意思表示になります。
もっとも,上に書いたとおり,入学辞退の時期が重要です。実際の裁判でもその点が争われたケースがあります。そのため,書面で,日付が証拠に残る形で,入学辞退の申し出をする必要があります。
◆ 推薦入試の場合は?
日程の早い学校が,一般入試ではなく,特殊な入試形態の場合には注意が必要です。
契約の時点でその学生が入学することが客観的に高い蓋然性をもって予測される場合は,大学が代わりの入学者を容易に確保することができる時期を経過していないなどの特別の事情がない限り,授業料等も入学辞退によって生じた「平均的損害」を超えないとされているからです。
契約の時点でその学生が入学することが客観的に高 い蓋然性をもって予測される場合というのは,例えば,専願あるいは第一志望とする推薦入試,入学を確約する推薦入試です。その場合には,特別な事情がない 限り,入学時納付金全額が大学側に発生すべき「平均的損害」と見られ,返還が請求できません。
◆ 最近の判例
専願などを条件としない推薦入試で合格して納付した初年度納付金の返還を求めた裁判の最高裁判決が昨年ありました。
まず,入学辞退時期が争われ,原告は3月中に電話連絡をしたと主張しましたが,大学側の記録などにより4月5日に入学辞退があったと認定されました。
先に書いたとおり,4月1日以降の辞退申し出によっては,原則として授業料等の返還を求められません。
ところが,争われたケースでは,要項に「補欠者に ついては4月7日までに通知がなければ不合格になる」旨の定めがありました。そこで,原告は,4月1日以降に入学辞退があっても補欠者を入学させることを 織り込んでいるから大学側に授業料等を含む「平均的損害」は発生しないと争いました。
その点について,最高裁は,上記のような定めは大学が最終的な入学意思の確認を4月7日まで留保する趣旨の定めだとはいえず,学生の多くの進路を決定している4月1日以降は学力を維持しつつ入学定員を確保することは容易でない等の理由で,原告の主張を認めませんでした。
◆ 最後に
法律的には少し難しいお話ですが,皆さんの身近で起きうる問題なので,今回のテーマにさせていただきました。
先ほど触れました消費者契約法の詳しいお話しは,また別の機会にさせていただきたいと思います。
受験生の皆さん,体に気をつけて最後まで頑張って下さいね ファイト
(なかた法律事務所) 2011年1月 8日 00:27
「債務整理をしたいけど・・・」 4 【借金問題】
弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。
今回は,破産について補足をさせていただきます。
以前にも破産の話をさせていただいているところですが,そこでお話できなかったことを書かせていただこうと思います。
◆ 免責不許可事由とは?
破産制度は,多重債務によって支払不能状態(返済を続けられない状態)にある方の,経済的更生を図るために法律が認めた制度です。
他方,債権者には多大な損失を負わせることになってしまう制度です。
そこで,法律は,誠実な債務者に対してのみ,「免責」(借金をちゃらにすること)を許可するということになっています。
何が誠実な債務者なのか?というと,具体的には,「このような場合には免責をすることはできないですよ」というように「免責不許可事由」が法律で定められています。
そのような免責不許可事由がない破産者は,「権利として」免責を受けることができます。免責不許可事由がある破産者については,裁判所が事情を考慮した上で仕方がないと判断したに限って「裁量で」免責を与えてくれることになります(裁量免責)。
免責不許可事由で,よく問題になる行為を簡単に説明します。
次のような行為に注意してください。
○ 債権者を害する目的で財産の隠匿など財産を不当に減少させるような行為
破産申立に近い時期の財産処分行為などが問題となります。
○ 特定の債権者に対する不公平な返済などの行為
親族など特定の債権者だけに返済する行為がよく問題となります。
○ 浪費や賭博行為により借金を作る行為
ギャンブル,遊興費,高額な商品の購入,投機行為で作った借金がよく問題となります。
○ 詐欺的な債務負担行為
名義貸しやショッピング枠の現金化などがよく問題となります。
上記のような行為があっても,上に書いた「裁量免責」を受けられる途がありますので,弁護士とよく相談してください。
また,免責不許可になるような行為を続けるとだんだん免責を受けられる可能性が小さくなってしまいます。泥沼にはまってしまう前に,早くご相談ください。
万が一,免責が不許可になった場合には(私の経験ではまだ不許可になった例はありませんが),免責不許可事由がない民事再生などを検討することとなります。
◆ 破産の手続って?
管財事件になるか,同時廃止事件になるか,の違いが重要です。
管財事件とは,簡単に言うと,裁判所が弁護士から破産管財人を選任し,その管財人が,破産者の財産の整理や免責をしていいかの調査をする破産手続です。
同時廃止事件とは,裁判所が管財人を選任しないで手続を進める破産事件です。
両者の違いで何が一番大きいかというと,裁判所に納める予納金が,管財事件になると多額になるという点です。
債務者の財産が少なく破産手続費用も出ないような場合には,原則として同時廃止手続になります。
管財事件になるケースは,一定額以上の財産がある場合(広島地裁では60万円が一応の目安のようです),個人事業者や会社代表者の場合,免責不許可事由が存在し免責していいか調査が必要な場合,負債額が大きい場合,価値のある不動産を所有している場合,などです。
同時廃止事件になるか,管財事件になるかは,最終的には裁判所が決定するのですが,微妙なケースもあり,弁護士とよく相談して見込みを把握し,管財事件になる見込みがあれば費用の準備をしていく必要があります。
なお,財産がないとおっしゃる方も,調べてみれば財産があったということは稀ではありません。退職金見込額の一定割合が財産と見られますし,保険の 解約返戻金があったり(実際に解約はしなくてもいいのですが),過払金が返ってきたりするケースもあります。よく相談してください。
◆ 自己破産をするにもお金がかかる?
残念ながらお金はかかります。
自己破産にかかる費用は,弁護士費用と裁判所に納める印紙代・切手代・予納金です。
弁護士費用は,事務所によって異なります。ただ,見かけにはだまされないでください。重要なのはトータルでいくらかかるかです。
裁判所に納める費用は,個人の破産で管財人が入らない手続であれば15,000円程度あれば足りると思います。管財人が入る手続になってしまうと,15万から40万はかかります。
お金がないから破産をするのにお金なんか用意できない!と思われるかもしれません。
どのようにお金を用意するのでしょうか。
まず,換金できる財産がある場合には,換金して裁判費用等に当てることはある程度許されています。また,どこかの債権者から過払金が回収できる場合も回収した過払金を費用に充てればいいのです。
次に,月々の収入がある方には,費用が貯まるまで,月々積み立ててもらうことになります。良心的な法律事務所では,一括で支払えとは言わないでしょう。
一定の条件の下では,法律扶助制度を利用して弁護士費用を立て替えてもらうこともできます。
さらに,全く収入がない方については,生活保護を受けられている場合であれば,法律扶助制度を利用した上で,弁護士費用等の立替金の返還を猶予・免除される制度もあります。
このように,費用のことが心配でも解決方法はあります。とにかく相談してください。
◆ 法人の破産について
会社などの法人の破産の特徴は,個人の破産に比べてお金がかかることと(必ず管財人が入ります),破産にとりかかるタイミングが重要なことです。
弁護士費用を相当額支払う必要があるだけではなく,裁判所費用がかなりかかります。ケースによって裁判所に納める必要がある予納金(費用に当てられる)の額は異なりますが,最低100万円は確保したいところです。
また,法人の破産はタイミングが重要になります。まず,申立書類の準備は大変です(経理の知識ある従業員さんなどの協力を得られる方がベターで す)。また,取引先などの債権者に対する対応や従業員さんに対する手当ても慎重に準備する必要があります。さらに,法人の破産には一定の現預金が必要とな るため,資金繰り上,タイミングを図る必要がありますし,裁判所へ納める予納金を少なくするためには事務所の退去の手当てなど事前の準備も欠かせなくな ります。
もちろん,法人を破産させる場合には,保証債務などを負っている代表者なども自己破産を検討する必要があります。
法人の資金繰りにお悩みの方は,個人の破産よりもより早い段階で,弁護士への相談を検討する必要があるのです。
◆ 最後に
自己破産に負のイメージを持たれている方は多いと思います。
それは,ある意味,健全なことだと思います。債権者に多大な迷惑をかけてしまうからです。
しかし,反面,自己破産は,負債に苦しむ方に経済的に立ち直ってもらう,前向きな制度でもあります。破産者の経済的更生を目的にわざわざ法律が認めている制度ですから,自己破産は「悪」ではありません。「自己破産は悪いことだから」と諦める必要はないのです。
もっとも,破産は,それが債権者に多大な迷惑をかける以上,先ほど説明した免責不許可事由を始め,手続上あるいは法律上,様々なことを考えて行う必要がある制度です。
借金に苦しまれている方は,自己破産も選択肢の一つとして,信頼できる専門家に早めに相談してみてください。
債務整理のお話は,今回で一旦お休みにさせていただきます。債務整理に関する個別の問題点など,もっと細かいお話は,これからも機会を見つけてさせていただきます。
(なかた法律事務所) 2011年1月 7日 00:26
「債務整理をしたいけど・・・」 3 【借金問題】
弁護士の仲田誠一です(広島弁護士会所属)。
今年は,干支の組み合わせでは「申卯」の年だそうです。「申卯」は,「かのと・う」とか「しんぼう」とかと読むみたいです。
日本証券新聞のHPを見ると,「申」「卯」の年は,株の世界では縁起の良い年とされているようです。「卯」は跳ねる,「申」は新生,革新,を表すそうで,過去の株式相場の成績もおおむね良好なようです。
期待したいですね。
前回の「申卯」の年は,1951年,サンフランシスコ講和条約締結により日本が国際社会に復帰した年だそうです。
一方,地元の神社へ初詣に言った際には,神主さんから,今年は「しんぼう」の年だから,新しいことには挑戦せずに力を蓄えるよう言われて帰りました。
日々の研鑽を頑張って力を蓄えようと思います。
さて,前回,前々回と,債務整理についてざっと眺めてきました。
今回には任意整理,次回には自己破産について,もう少し詳しいお話をして,一旦,債務整理のお話はお休みにしたいと思っています。
◆ 法定金利を超える借入期間があれば残高は減る
以前にも書きましたが,法定金利を超える金利での取引期間があった以上は,過払金が出ないケースでも,法定金利で引き直して計算した結果として残った残債務を返済していくことになります。
過払金を回収するには,諸般の事情から,こちらで計算した過払金の100%を任意で回収するのは難しいところなのですが,残債務が残るケースでは100%差し引けるので,逆に効率的とも言えます。
◆ 時効にかかった過払金返還請求権の扱い
10年以上前に完済し,数年経って同じところから借り始めたケースでは,以前に書かせていただいたとおり,前の取引によって生じた過払金返還請求権は消滅時効にかかっています。
しかし,諦めてはいけません。
時効が完成した過払金返還請求権でも,今残っている残債務との相殺に使える場合があります。その場合は,新しい取引で残った残債務と時効にかかった過払金の差額を返すことになります。
◆ 遅延損害金,将来の利息はどうなるのか?
以前は,弁護士が入れば,ほぼ例外なく遅延損害金や将来利息をカットした形で和解ができました。
現在では少し状況が変わってきています。そのような形では和解をしてくれない業者も出てきています。業者の経営が悪化したり,身売りが続いて債権回収会社ばりの経営をする会社が出てきたためです。
もともと多重債務に苦しむ方の経済的更生を図るために先輩弁護士が築き上げてきたルールなのですが,それに応じない業者が出てきているため,現在,弁護士がそのような業者と戦っている状況です。
◆ 過払金が回収できた場合の扱い
当事務所では,過払金が回収できたら,よほどの事情がない限りには,他の残った債務の返済に回してもらっています。
任意整理は借金問題を解消するため,経済的に更生を図ってもらうためにやるものです。
回収できた過払金を返済に回して借金総額を減らすことがその目的に適うのです。
おそらく,一般的な法律事務所の扱いなのではないでしょうか。
◆ 弁護士費用
費用が恐いから債務整理をするのを躊躇した,お金がないから依頼するのを躊躇した,などのお話を聞くことが多いです。
心配しないで下さい。
良心的な弁護士であれば費用は柔軟に対応してくれます。
弁護士が受任すると一旦返済をストップさせるので,分割で弁護士費用を払うことが可能なケースが多いです。
また,一定の条件の下,弁護士費用を立て替えてくれる民事法律扶助制度を利用することもできます。
さらに,過払金が返る見込みが高い場合には後払い的な支払方法もできます。
まずは,相談してみることです。
◆ 最後に
今回は,任意整理について補足をさせていただきました。
債務整理を文章で説明すると,簡単なようでなかなか難しいところがあります。個々のケースに応じた対応が必要だからです。
債務整理を機械的な仕事だと考えて弁護士がろくに対応しない事務所も残念ながら存在するのですが,それは依頼者さんにとって不幸なことだと思います。
結局は,信頼できる弁護士選びが大事です。
(なかた法律事務所) 2011年1月 6日 00:25
「債務整理をしたいけど・・・」 2 【借金問題】
弁護士の仲田誠一です。
前回は過払金返還請求の話で終わってしまいました。
過払金返還請求は,どの債務整理の方法をとってもついて来る話なので,始めにお話させていただきました。
今回は,ざっと債務整理の方法を眺めた上で(もう少し細かい話は次回にします),じゃあどの方法を選択すればいいのか,ということをお話したいと思います。
◆ 任意整理とは?
任意整理とは,裁判所を通さずに,債権者と弁護士などが直接交渉し,前回お話した引き直し計算をした上で,返済すべき金額を一括あるいは分割で返済していくものです。
もちろん,過払金が発生する先があるのであれば,それを回収して全体の借金を減らしていきます。
◆ 特定調停とは?
厳密に言うと違いはあるのですが,簡単に言うと,裁判所を通じて行う任意整理だと考えればいいと思います。
調停委員が債権者と話をしてくれます。
過払金の回収まではやってくれません。
◆ 自己破産とは?
個人の自己破産とは,裁判所に破産と免責(借金が棒引きになること)を申し立てるものです。財産や事情によって破産手続の詳細は異なりますが,裁判所から免責決定を受けると,借金が棒引きになります。
以前に書かせていただきましたが,個人が破産しても,一定の財産を残すことはできますし,破産手続自体によって生活ができなくなるということはありません。
なお,法人の場合の自己破産は,まさに清算手続であり,破産手続が終了するとその法人の法人格が消滅します。
◆ 民事再生とは?
民事再生も裁判所を通じた法的整理です。簡単に言うと,可処分所得を3年なり5年なり債権者に返済していき,残額をカットしてもらうものです。
住宅ローンを支払い続けながら他の債務を整理することもできます。
◆ あなたにとってどの債務整理の方法が最適か?
考えることは,大まかには,①借金総額,②毎月の返済可能額,③手放したくない財産があるか,④財産総額,でしょう。
まず,借金の総額がどれだけなのかを考える必要があります。そのためには,金利が高かった借入れがある場合には,取引履歴に基づいて引き直し計算をする必要があります。
そして,「毎月の返済可能額がどれだけ出るか」を,家計収支を作ってもらうなどして考えます。3年ないし5年で引き直し計算後の借金総額が返済できるようならば任意整理の方法をとることになると思います。
ただ,その際には,お子さんの学費など,ライフプランを考えた計画を立てる必要があります。
3年から5年で返済できない場合にはどうでしょうか?
その場合には法的整理を検討することになります。
ただ,どうしても手放したくない財産がある場合には,破産など法的整理の選択は難しいことになります。住宅ローン付の自宅の場合には,民事再生により自宅を残す方法があります。
もっとも,依頼者さんとじっくり話し合った結果,今後の生活を考えると住宅など財産を手放した方がいいという結論になるケースも実際に多いです。お悩みであれば,弁護士などの専門家と話し合ってください。いい解決方法があることも多いですよ。
また,財産が多い場合には,破産や民事再生が難しいケースもあります。その場合には,財産を処分して任意整理することになります。
簡単に書いてきましたが,考えることはまだまだあります。債務整理といっても,生活状況や財産状況は千差万別です。個々の依頼者さんとじっくり話さないと最適な解決方法は見つかりません。
上に書いたのは,本当の触りだけです。
実際には,弁護士費用,裁判所費用,ご職業(破産手続き中に就けない職業もあります)なども含めて,ご相談者の今後の生き方にまで入り込んでじっくり話合いをしなければいけません。
◆ ブラックリストとは?
債務整理のご相談の中でよくある質問として,ブラックリストの話があります。
ブラックリストとは俗称で,正確には,各金融機関が加盟している信用情報機関に登録される「債務整理」「弁護士介入」「自己破産」などのネガティブ情報のことを表しています。
債務整理をすると,加盟金融機関が信用情報機関に上のような情報を登録します。
その後に,新たに借入の申し込みなどをすると,申し込まれた 金融機関が情報を調べ(申込書の裏面などに小さく同意条項が入っています),借入やカードの作成を拒否します。要するに,上のような情報が登録されてし まうと,新たに借りたり,新たにカードを作成したりすることができなくなるのです。
でも,情報が登録されているのは5年から7年という一定期間です。一生借りられなくなるわけではありません。
ブラックリストに載りたくないというご相談者も確かにいらっしゃいます。
でも,多少の不便はあっても,苦しめられた借金とは一旦手を切っ て,一定期間は返済に集中するべきです。私は,債務整理がうまくいった依頼者さんのほっとしたお顔をいつも拝見しています。一度しかない人生です。借金や カードがない生活が今は想像できなくても,それは感覚が麻痺してしまっているからなのです。
ブラックリストを恐がる必要はありません。
なお,過払金請求の形になる場合には,信用情報にネガティブ情報を登録しないというのが,情報機関のルールとなっています。
◆ 最後に
債務整理は,事情をよくおうかがいした上で,どうすれば生活が再建できるのか,一緒に悩み,解決策を見出す必要があるものです。「一緒に解決策を見出す」というのは,話合いの中で依頼者さんにも決意をしてもらうということです。
巷では,簡単に債務整理ができるかのような宣伝も多いですが,あまり感心はできないところです。債務整理を商売としてしか考えない一部の弁護士などによるトラブルも聞こえてきます。
良心的な専門家であれば,きっと,あなたと一緒に悩んで,考えてくれると思います。お悩みの方は,是非一度相談してみてください。
(なかた法律事務所) 2011年1月 5日 00:25
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