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旧コラム 2019年10月
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民法改正講座11 【身近な法律知識】
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
今回は、契約の総論です。
【契約の締結及び内容の自由(民法521条)】
契約の自由が明文で定められました。
契約締結の自由、相手方選択の自由、方式の自由、内容決定の自由は元々認められている原則です。
契約をするかどうか、誰と契約するか、どのような形式で契約するか、どのような内容で契約するか、は本来自由です。
勿論、法律に反しない限りです。
例えば、公序良俗に反する内容の契約は無効になります。
また、消費者契約法など特別法にて、契約の効力は制限されています。
自由だからこそ、契約締結は慎重にしなければなりません。
契約を締結してしまうと、その効力を覆すことは大変です。
訴訟では、争いの解決は契約条項の解釈によることが多いです
一度立ち止まって考えてから、内容をきちんと確認して契約を締結してください。
【契約の成立と方式(民法522条)】
契約は、申込に対して相手方が承諾したときに成立する旨明文化されました。
申込みに際して、承諾の期間を定めたり、撤回する権利を留保することは勿論できます。
民法523条で明文化されました。
また、契約の成立には、法令の特別な定めがない限り、書面の作成その他の方式を要しないとする方式自由の原則も明文化されました。
例えば遺言は、要式行為といって、方式が法定されています。
【承諾の期間の定めのない申込み(民法525条)】
申込みは承諾の通知を受けるのみ相当の期間を経過するまでは撤回できないです。
ただし、申込者が撤回をする権利を留保した場合は撤回することができます。
これに対し、対話者に対する申込みは、対話が継続している間は撤回できます。
対話中に承諾の通知を受けなかったときは反対の表示をしない限り申込みの効力を失います。
契約の成立の有無及び時期は裁判でよく争われますが、契約書などの書面が作成されていないケースでは、様々な間接事実が考慮されて判断されることになります。
【同時履行の抗弁(民法533条)】
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができます。
これを同時履行の抗弁といいます。
双務契約は通常の契約ですね。
一方が他方に義務を負うだけではなく、売買の引渡義務と代金支払債務のように双方が義務を負う契約です。
実際にはどちらかが先履行である旨を定めることも多いです(代金後払い、代金先払いなど)。
気を付けてくださいね。
【債務者の危険負担等(民法536条)】
当事者双方に責任なく債務の履行ができなくなったとき(履行不能)、債権者と債務者のどちらが負担をするのかという問題を危険負担の問題といいます。
従来は、危険は債権者が負担するという債権者主義が定められていましたが、改めました。
不合理だからです。
新法では、債権者が反対給付の履行を拒むことができます。
ただし、契約関係から離脱するには、理屈上、契約解除をする必要があります。
勿論、債権者の責めに帰すべき事由による履行不能のケースでは、債権者は反対給付の履行を拒むことができません。
当然ですね。
お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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(なかた法律事務所) 2019年10月31日 07:47
破産と生活保護費の返還債務 [借金問題]
今回の借金問題コラムでは、生活保護返還債務と破産の関係のお話です。
破産をお手伝いするときに、生活保護費の返還を求められている、あるいは返還請求された金額を少しずつ返還されているという方がいらっしゃいます。
働きながら保護費を受給していた方、各種年金・手当を受給しながら保護費を受給していた方に多いでしょうか。
収入認定との兼ね合いで調整が必要なケースですね。
生活保護を脱した方、現在も受給中の方、双方ともあり得ます。
先日申立てた自己破産案件も保護費の返還債務を負っているケースでした。
以前は、返還債務を破産債権に計上しておけば、事足りました。
生活保護費の返還請求権も、一般的な金融機関からの借り入れと同様、一般債権の扱いでしたので、破産免責の対象となり、免責決定を受ければ支払い義務を免れることができていたのです。
しかし、法律の改正があったのですね。
生活保護法63条に基づく返還請求権が、平成30年10月1日施行の改正生活保護法により、国税徴収法の例により徴収することができる債権、すなわち破産法上の財団債権、非免責債権になりました。
国税徴収法の例により徴収できるということは、税金と同じ扱いです。
改正の際には各弁護士会も反対意見を出していたような気がします。
破産をしても税金と同じ優先される債権になり、免責を得ても支払義務から免れられない債権になったのですね。
非免責債権ですので、管財事件で財団債権として破産管財人が支払ってくれるケースを除いて(財産がある程度あるケースに限ります)、役所と相談して支払い方法を協議しなければいけません。
なお、個人再生事件では、役所との協議結果を裁判所に報告しなければいけません。
生活保護法63条に基づく保護費の返還請求のことをお話しました。
これに対し、不正が悪質な場合の78条の徴収金は、先立つ平成26年に既に財団債権化、非免責債権化が行われています。
債務整理(任意整理、個人再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
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(なかた法律事務所) 2019年10月24日 07:41
会社も同時に破産申立てをする必要があるか [借金問題]
会社代表者あるいは会社代表者をしていた方が自己破産を申し立てるとき、会社も同時に自己破産を申し立てないといけないのかどうか、今回の借金問題コラムはそんなお話です。
個人と法人は法律上別人格です。
理論上、個人だけ、法人だけ破産を申し立てることは許されるはずです。
ところが、会社代表者が自己破産を申し立てる際には、法人の自己破産も申し立てるように裁判所から勧奨されます。
なぜなのか裁判所に聞いたことがあります。
法人と個人は財産が混同する危険が高く、破産管財人が個人の財産調査だけするのでは不十分だから、法人も同時に申し立ててもらい会社財産も調査することができるようにするのだと説明されました。
他に、代表者個人とほぼ債権者が一致することが多い会社を放置するのは望ましくないとの説明もあるようです。
法律上強制的に会社あるいは法人の破産申立てをしないといけないわけではありません(破産法にそんなことは書いていませんから)。
しかし、強く会社の申立てを要請する裁判所が多いようです。
広島本庁でも、会社あるいは法人の経営者ないし数年前まで経営していた方が自己破産を申し立てると、個人と法人の同時申立てを要請されます。
時期によってその強弱は異なるかなあという実感です。
代表者個人しか破産申立てをしない理由は、
1 法人破産は多額の予納金が必要だが用意できない
2 あるいは既に事業廃止しており資料が散逸しており申立て書類が作られない
の2つでしょうか。
裁判所に要請された際には、そのことを話すのですが裁判所はなかなか引き下がらない印象です。
1の予納金ですが、法人が動いていない、財産も残っておらず、破産管財人業務の負担がないというケースでは減免してくれます。
極端なケースですが、「追加の予納金は要らない。」とまで言われました。
個人で用意した予納金を法人と個人で割り振るのですね。
2の書類がないという点も、「調査・書類は不十分であってもかわまないから申立てだけはしてくれ。」、とまで頼まれた経験もあります。
本当に簡単な書類で申し立てたことがあります。
基本的には代表者が破産をするときには法人も同時に申し立てしなければならない、ただし予納金の額や申立て準備については相当融通も利く、と考えた方がいいでしょう。
勿論、会社の事業廃止から5年超経ているような場合は同時申立てを要請されません。
そもそも同時廃止で処理されることも可能です。
ただし、その場合でも最後の2期分の決算書の提出は求められますね。
債務整理(任意整理、個人再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
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(なかた法律事務所) 2019年10月20日 10:12
昔の抵当権が残っている不動産 [不動産]
今回の不動産問題コラムでは、不動産に昔の抵当権が残っているケースについてお話します。
相続で受け継いだ不動産に昔の抵当権設定登記が残っていて売却に支障が出ているという相談を受けたこともあります。
通常は、被担保債務を弁済したら、抵当権設定登記を抹消しますね。
昔の抵当権が残っているケースでは、被相続人あるいはその先代が抹消手続をするのを漏らしたのだろうと思います。
もしかしたらまだ弁済していないかもしれないケースもあるかもしれません。
ただ、昔の事情はもはやわかりません。
ところで、抵当権抹消登記は、抵当権者と所有者の共同申請になります。
住宅ローンを完済したら銀行から抹消書類をもらえますね。
実際には債務者が自分であるいは債務者が司法書士に依頼して抹消登記をするのですが、形上は、共同申請なのですね。
そうであれば、昔の抵当権も、抵当権者の協力を得られれば抹消登記をすることができます。
ただし、昔の抵当権であれば、抵当権者の相続人(勿論、相続が何回か続き、相続人が枝分かれして多数になっているかもしれません。)が相手ですね。、
あまり現実的ではないかもしれませんし、手間がかなりかかります。
関係者が多い場合にはすべての方の同意が得られるかわからないし、書類取得などの協力を得ることも煩雑なため、訴訟により解決することの方が多いのではないでしょうか。
相続人は調べないといけませんが、相続人を相手に抹消登記手続請求訴訟を提起し、判決に基づいて抹消登記を行うのです。
判決に基づいて債権者の相続人の登記申請意思が擬制されますから、所有者一人で登記申請できます。
弁済した証拠がある場合は弁済による抵当権消滅を理由にして、ない場合には(ほとんどそうでしょうが)、消滅時効の援用による被担保債権の消滅を理由として、抹消登記を求めます。
勿論、訴訟提起をする場合には、事前に、被告となる相続人に対して連絡をし、事情を説明し納得してもらう努力をします。
訴状がいきなり届いたら驚かれますし、要らぬ紛争を生じさせてしまうかもしれません。
事情を理解してもらい、訴状が届いても放っておいてもらえつならば、スムーズに判決を得ることができます。
相続人による先祖名義の不動産の時効取得のケースですが、被告である現在の相続人が枝分かれをして30名を超えることになった例がありました。
事前にご理解を得て、お一人だけ裁判所に出てこられましたが、争わないというお話をその場でいただいたので、すぐに判決を得ることができました。
売却を予定しているケースなどでは、できるだけ早く抹消登記を実現しなければなりません。事前の根回しも必要です。
複雑なケースでは相続人調査だけで1~2カ月要することもあります。
できるだけ早く着手しましょう。
なお、昔の抵当権者が法人であった場合には、相続はありません。
その法人に対して抹消登記手続を依頼、あるいは抹消登記手続請求訴訟を提起します。
名前が変わっても、合併があっても、法人が存続している限り問題ありません。
法人がなくなっていたらどうでしょう。
なくなった、の意味によりケースバイケースで考える必要があるでしょう。
今回は、不動産に昔の抵当権が残っているケースでどうやって抹消をするのかをお話ししました。
不動産に関するご相談はなかた法律事務所にご用命を。
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(なかた法律事務所) 2019年10月14日 12:18
婚姻費用・養育費算定の際の「収入」とは [離婚問題]
今回は、婚姻費用・養育費算定における「収入」についての説明をさせていただきます。
実務上、婚姻費用や養育費を定める場合には、婚姻費用・養育費標準算定表あるいはその基になっている標準算定式が利用されます。
まだ新方式が採用されたものは見たことがありません。
算定表あるいは算定式では、お互いの「収入」と未成熟子の年齢および数によって数字が出てきます。
その「収入」が何かというお話です。
給与所得者については、前年度源泉徴収票の総支給額です。
市県民税課税台帳記載事項証明書では、給与収入の金額ですね。
自営業者ですと、確定申告の所得金額から社会保険料を控除し、現実に支払われていない専従者給与や青色申告特別控除額を加えるということなります。
減価償却額も加えるということもあります。
給与所得と事業収入が両方ある場合には、どちらかを他方に換算して合算した金額を年収と見て計算することになります。
この点は、以前の離婚問題コラムにおいて細かく説明したように思います。
これらが婚姻費用・養育費算定の「収入」に関する基本ですが、絶対ではありません。
前年度収入が現在の収入状況と合っていない場合も多いですね。
その場合には、絶対に前年度源泉徴収等の収入を基に算定されるわけではありません。
例えば、前年度は無収入であったが今年度に就職した、あるいは転職したという場合がありますね。
そのような場合であれば、今年度の見込み収入で養育費や婚姻費用が算出されることになるでしょう。
前年度収入で判断するのは不合理ですからね。
養育費や婚姻費用を下げるために敢えて退職した、あるいは敢えて給料を下げたという事情があるケースには、それまでの収入状況を加味して収入が認定されることもあります。
理由がない無収入の場合、あるいは理由がない低収入の場合もあります。
そのようなケースでは、稼働能力が認められる限りにおいて、賃金センサスを用いて収入認定がなされることもあります。
賃金センサスとは、賃金構造基本統計調査の結果を性別・学歴・年齢等によってまとめたものです。
収入を擬制するのですね。
稼働能力が制限され得る事情によって賃金センサス上の年収の何割かを収入とするなど、ケース応じた判断がされているようです。
実務上は、交通事故でよく見る、所謂「赤い本」に記載されている賃金センサスによる年収を参考にすることが多いです。
ただ、賃金センサスは、毎年出ており、インターネットでも取得できます。
将来の減収が予定されているケースもあります。
増収・減収がほぼ確実で、見込額についても明確に予測できると客観的な証拠に基づいて説明できる場合には、それらの事情が加味されて収入とみなされることになるでしょう。
婚姻費用・養育費の算定に当たって、標準算定表あるいはその基になっている算定式が一般に使用されているのは事実ですが、算定表ないし算定式に当てはめる収入をどう見るか自体に議論の余地があるということですね。
これに加えて、算定式あるいは算定表で考慮されていない事情(多くは特別費用ですね。)などの話が出てくることは珍しくありません。
今回は、婚姻費用、養育費を考えるときには、単純に算定表を見れば済むわけではないのですよということをお話ししました。
養育費、婚姻費用は算定表に当てはめればすぐ決まるという単純な話ではないことをご理解いただけたでしょうか。
離婚、婚姻費用、養育費、財産分与等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
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(なかた法律事務所) 2019年10月10日 07:45
別居、離婚にともなう自宅不動産の退去・明渡し請求 [離婚問題]
別居あるいは離婚しても自宅不動産の所有者が自宅を出て他方配偶者が自宅に居住し続けるということは珍しくありません。
今回は、そのような場合、不動産を所有する夫または妻は、他方配偶者に対して「家から出て行け。」と法的に請求することができるのか、
逆に、他方配偶者は不動産を所有する夫または妻からのそのような退去請求に応じなければならないか、のお話しです。
離婚の前と後で分けます。
その後、第三者名義の不動産の場合を補足します。
【別居中のケース】
別居中ということは婚姻中ということになります。
民法は、夫婦の同居、協力、扶助の義務を定めています。
同居義務などから、所有者ではない配偶者にも住居の使用権原、居住権が認められています。
婚姻関係が破綻していても基本的には同様です。
不動産を所有する配偶者からの所有権に基づく退去・明渡し請求は、請求を正当とすべき特段の事情がない限り、認められません。
また、使用貸借関係(無償での貸借関係)があるという理由で退去・明渡しが認められなかった例もあります。
別居開始時点において居住目的の使用貸借契約の黙示の成立を認め、別居時点では使用貸借の目的が消滅していない、あるいは解約は権利濫用だとするわけです。
実質的な夫婦共有財産だという主張もあり得ますね。
ということで、離婚が成立するまでは退去・明渡し請求は認められないと思った方がよろしいでしょう。
ただし、他方配偶者が居住権を主張することがDV等により許されるべきではないケースでは、居住権の主張が権利濫用に当たる、あるいは婚姻関係が破綻した同居義務による使用権原は認めないなどとして、例外的に請求が認められているようです。
なお、他方配偶者の使用権原が認められた場合、不動産を所有する夫または妻は、賃料相当損害金の請求も認められません。
婚姻費用の算定に考慮されるだけとなります。
【離婚後のケース】
離婚が成立すると夫婦の同居・協力・扶助義務はなくなります。
離婚後までも居住を許す使用貸借の成立も認められないのではないでしょうか。
原則として、退去・明渡し請求が認められるでしょう。
ただし、離婚に至った事情等から、場合によっては退去請求、明渡し請求が権利濫用として排斥されることはあるでしょう。
勿論、財産分与で、他方配偶者が少しでも不動産持ち分を取得したのであれば退去・明渡し請求は認められません。
共有者には、使用権原が認められますから当然です。
その場合は、共有物分割請求による共有関係の解消あるいは賃料相当損害金の請求のみできることとなります。
【第三者名義の場合】
自宅不動査が夫あるいは妻の会社、親などの第三者の所有であった場合には、夫婦の同居・協力・扶助義務は表に出てきません。
使用貸借関係の趣旨・目的から貸借関係の終了あるいは解約が認められるかの問題となります。
事情により権利濫用として第三者からの請求が排斥された例もあります。
なお、配偶者名義であった不動産が別居中に売却されてしまうこともありますね。
勿論、通常は、人が住んでいたら売却できませんね。
仮に、売却されると第三者所有の物件となってしまいます。
売買の事情によっては、第三者からの明渡請求が権利濫用として排斥されるでしょう。
また、そうなる危険がある場合には、処分禁止の審判前の保全処分を申し立てることも検討してもいいでしょう。
離婚、婚姻費用、養育費、財産分与等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
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(なかた法律事務所) 2019年10月 7日 15:19
中小企業のM&A価格の考え方 [企業法務]
今回の企業法務コラムでは、中小企業のM&Aの代金額の決定方法のお話しです。
当職は、M&Aに関わることが割合多く、最近は常に案件に携わっている状態が続いています。
すべて中小企業のM&Aです。
M&Aといっても、その形態はほぼ株式譲渡か事業譲渡です。
合併や会社分割を絡めたM&Aのニーズやメリットは中小企業にはあまりありませんので。
関わり方はケースバイケースです。
交渉から関わるケース、買い手売り手双方のコーディネーターとしてかかわるケース、契約関係や法定手続だけサポートするケースなど、依頼者のニーズに合わせた関わり合いをします。
いただく費用も関わり合いに応じて千差万別です。
しっかり財務デューデリジェンスをする案件では、税理士と弁護士がセットでお手伝いします。
今回は買収価格の決定方法の話です。
勿論、買収価格の決め方には決まりはありません。
当事者が自由に決められます。
不当に安いあるいは不当に高い価格での売買には税務上のリスクがあるだけです。
もっとも、決めるのには目安がないといけませんね。
株式譲渡であれば、株式の価格です。
事業譲渡では対象事業(物も含めて)の価格です。
税務上の株式評価(相続税評価)は使いません。税金のための評価ですからね。
評価方法はいくらかありますが、経験上、中小企業の株式譲渡は、
時価純資産価格+営業権価格
あるいは
そのどちらか一方、
を目安に決めることが多いです。
時価純資産は、決算書あるいは試算表の純資産をベースに、含み益をプラスし、含み損をマイナスして算出された、所謂、清算価値・純資産価格ですね。
要するに、株式が表章する会社のモノ・カネの価格です。
この純資産価格ベースでの価格決定も多いです。
利益があまり出ていない会社はこれだけで十分だからです。
営業権価格は、会社が将来生む利益あるいはキャッシュフローを価格に反映させるものです。
営業権価格の計算は、
利益(キャッシュフロー)×1~5年
で行いますが、それぞれどの数字を持ってくるかが重要になります。
それにより数字はかなり変わりますから。
利益には、基本的に営業利益を持ってくるでしょうか。
減価償却費をプラス、時にはオーナー役員報酬の全部または一部をプラスするなどして、キャッシュフロー的な数字を持ってくることも多いです。
経常利益を使うこともあるでしょう。こちらの方が収益力が正しく反映されていることがあります。
ケースバイケースですね。
期間は、3年がスタンダードでしょうか。
業種や業態により、短ければ1年、長ければ5年でしょうか。
価格の目安が決まったとして、実際の契約価格を決めるには別の考慮をします。
売主が個人の株式譲渡のほとんどでは、前オーナーは会社を退きます。
株式譲渡による譲渡所得税よりも退職所得の方が一般的に有利です。
そこで、売り手には株式譲渡代金と退職金とを分けて受け取ってもらうことが多いです。
買い手にも損はありませんし。
総額を決めて、役員退職金をいくら受け取れるか検討し、残額を代金額にするというイメージです。
退職金支給により株式の価値は下がりますから当然といえば当然です。
次は事業譲渡の価格ですが、基本点には株式譲渡の価格の考え方に準じます。
全ての資産を含めた全事業を譲渡する場合には、株式譲渡と変わりませんね。
ただ、看板名を変えることのリスク、従業員を引き継げるかのリスク、取引口座を引き継げるかのリスクなど、価格マイナス要因はあるでしょう。
全ての事情譲渡であれば株式譲渡でもいいのですが、売り手の債務・リスクを遮断したいときには、債務を引き継がない形の事業譲渡にすることがありますね。
逆に、免許や取引先の関係で株式譲渡の方法しかとれないケースもあります。
一部の事業譲渡、あるいは資産を引き継がない事業譲渡では、引き継ぐ資産の時価に引き継ぐ事業の営業権価格を加えた金額が一応の価額の目安になります。
最初にお話ししたように、M&Aの価格は自由に決められます。
実際に、売り手・買い手のパワーバランスによって価格は大きく左右されます。
また、業種によっても様相が変わります。
いろんな業種のM&Aに携わると、様々なことに気付きます。
事業承継の一環として、後継者のいない会社のM&Aが増えているようです。
事業承継は後継者に引き継ぐか売却するかの2者択一ですからね。
逆に言えば、現在では、会社を買うチャンス、顧客・市場を獲得するチャンスも増えているということです。
事業承継の一環として、あるいは経営戦略の1つとしてM&Aをお考えになることもいいと思います。
顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
広島の弁護士 仲田 誠一
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(なかた法律事務所) 2019年10月 4日 17:36
知られずに自己破産、個人再生ができるか [借金問題]
今回は、自己破産、個人再生といった法的債務整理手続が、家族や職場に内緒でもできるケースがあるといったお話です。
基本的には内緒でできるが、協力を仰ぐ必要があるケースでは難しい場合もある、というお話です。
勿論、家計の建て直しには、ご家族の協力があった方がいいのですが。
まず、債務整理であっても、任意整理であれば、原則として、誰にも知られることなく債務整理をすることができます。
弁護士と業者間で交渉するだけですからね。
ただし、任意整理でも個人信用情報機関に所謂ブラック情報が登録されて、一定期間金融機関の審査に通らなくなります。
近々に家族が車を買う、家を買うなどで家族の連帯保証人を頼まれるようなことがあれば、説明に困ります。
また、月々返済に必要なお金を確保するためには、家族にそれ相応の説明が必要なケースもあるでしょう。
次に、債務整理のうち、法的手続である自己破産、個人再生となると、手続との関係で家族や職場の協力が必要かどうか検討しなければなりません。
家族の協力はどうでしょうか。
自己破産や個人再生では、配偶者や同居人が働いている場合には、源泉徴収票や給与明細が提出書類となっています。
その限りで家族の協力が必要なケースがあるのですね。
なお、市県民税課税台帳記載事項証明書の提出も求められますが、これは同一世帯であれば、お一人で全員分のものがとれるはずです。
また、家計収支表の提出もしなければなりません。
家計が同一であればその家計全体の収支を記載しなければならず(いろいろな説明の仕方がありますので、弁護士と作成方法をよく相談してください。)、ご自身が家計を把握していない場合には家族の協力が必要ですね。
さらに、公共料金等の支払いをしている家計の主口座が家族名義である場合には、その写しの提出も求められます。
こうしてみると、家族に内緒で進められる典型的なケースは、奥様の自己破産で、夫の収入資料を保管し、あるいは保管場所を把握していて、家計も管理しているというケースですね。
なお、自己破産の場合、管財事件になると、郵便物が破産管財人に転送されてしまいます。郵便物が来ないので、家族におかしいなと思われるでしょう。
勿論、家族(特に配偶者)には、事情をお話しできるならした方がいいです。
自己破産や個人再生は経済的な立ち直りのために行うものですね。
多かれ少なかれ、家族の協力が必要なものです。
親族の協力はどうでしょうか。
親族との関係では、同居していない限り協力を乞う必要はありません(同居している場合には収入資料が必要です)。
勿論、債権者である親族に対しては裁判所から通知がいきます。
なお、稀なケースですが、親族名義あるいは親族が借りている居宅に間借りしている場合には、居住証明書の提出を求められます。
勤務先の協力はどうでしょうか。
勤務先との関係では、仮に借金がある場合には通知が行きますのでわかってしまいます。
そのような場合には、自己破産、個人再生を申し立てるのも躊躇してしまいますね。
別のコラムで書かせていただきましたが、勤務先からの借金をなくすことを検討します。自己負担金等給与から控除されているものも債務ですのでご注意を。
また、一定期間以上(広島本庁では5年以上)働いている正社員の場合には、退職金見込額証明書あるいは就業規則や退職金規程等、退職金見込額を説明することができる資料を提出しなければなりません。
見込額証明書を貰うケースは稀で、通常は説明できる資料を提出します。
勤務先に伝えるのは躊躇されますからね。
現在自己都合で退職したとしたら退職金がいくら支給されるかの説明です。
退職が決まっている等の事情がない限り、退職金支給見込額の8分の1が財産として評価されます。
退職金制度が最近は複雑になっており、毎回、何を提出するか悩みます。
金額が明確に説明できるよう、就職時期、退職金の計算方法、計算の基礎となるポイントや倍率がわかるものなどを提出します。
手元にない方も多く、その場合は、勤務先からそのような資料も貰わなければいけません。
さらに、給与明細の控除欄の中に、資産性があるかもしれない積立や保険・共済等がある場合、残高や契約内容を説明する資料の提出を求められます。
手元にない場合がほとんどなのですが、場合によっては勤務先にお願いせざるを得ないケースもあります。
最後に、官報公告というものがあります。自己破産あるいは個人再生をすると、官報に名前と住所が公告されます。
普通の方は見たこともないでしょうが、公告により、金融業者などからダイレクトメールが来ることもあります。
家族、親類あるいは勤務先が官報を逐一チェックしていることはなく、直接官報から申立ての事実がわかってしまうことはないでしょうが、完全に秘密にはならないということはご承知おきください。
債務整理(任意整理、個人再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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(なかた法律事務所) 2019年10月 1日 11:06
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