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旧コラム 仲田 誠一: 2018年1月

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中小企業のリスク管理とは1 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

当職は、当事務所で、あるいは合同会社RYDEENという士業の集まりに属して、中小企業に特化した法務・リスク管理・M&A・事業承継・内部統制等のサービス提供、あるいは経営塾・企業再生・セミナー等を行っています。
銀行等とも連携し、中小企業を元気にしようと頑張っております。
 
巷にある経営指南本やマニュアルあるいはコンサル会社のサービスは、大企業向けのものか、それをもじったものが大半です。

大企業と中小企業は同じ株式会社であったとしても、似て非なるものです。経営戦略が同じではいけません。

そこで、中小企業に特化した専門家によるサポートが必要だということなのです。
 
ところで、中小企業の経営者は、あまりリスク管理にご興味がありません。
「今まで問題がないから」、「あるいは業界の慣行だから」とよく耳にします。

中小企業には管理部門に人を割くことができませんし、リスクを計数的に把握して管理するなんで不可能です。

経営者の仕事は営業・開発等前向きな仕事です。

そういったこともあって、リスクに興味がないのは当然だろうと思います。
 
しかし、興味がないのと放っておいていいのとは別問題です(法的にリスク管理体制の構築が取締役の善管注意義務の中身になっていることは当然です)。
 
中小企業こそリスク管理は必須です。

今回はこのようなお話をしようと思います。

中小企業と大企業の違いの1つに体力があることは異論がないと思います。

大企業は資本が大きく、リスクが顕在化しても、ある程度吸収することができます。
リスクを数値化してどれだけのリスクを負っているかを把握し、それに応じた引き当てをしております。

これに対し、中小企業は、大きな契約1つでも揉めれば、解決するまでに資金繰りに窮し、すぐに経営危機に発展します。

業界の慣行は裁判では通用しませんし、法的な紛争が当たり前の時代です。

当職は何度もそのような場面に出会いました。
少しの工夫でそのようなトラブルはある程度防ぐことができます。
「事前に相談をしてくれれば。」と残念な限りです。

そのようなリスクは取引行為に限って生じることでもありません。
従業員の通勤事故1件でもそれが無保険事故だっただけで、1億を超える損害賠償請求が会社に来て経営危機にもなり得ます。

中小企業こそ、リスクが顕在化したら、即、経営危機に陥る危険があるのです。

大企業よりもむしろ、リスクの顕在化が即経営危機に直結する中小企業こそ、リスクの回避が必須なのです。
 
経営者にとって、儲ける方向の前向きな仕事が一番大事なのは当然です。

しかし、企業防衛戦略、儲けた、儲けるはずのお金を失わないということも経営には大事です。

リスクにどう対応していくかは中小企業経営者にとって必要な経営判断なのです。

しかし、中小企業にはリスク管理などできないと言われるでしょう。

確かに、前述のとおり、ヒト・モノ・カネの経営資源をそこに割くのは難しいですし、リスクを計数化して管理すること自体が非現実的です。

では、中小企業はリスクに対してどのような対応をすればいいのでしょうか。

保険の活用と専門家(弁護士)によるシンプルな仕組みづくりです。
意識的にそれができているかが大事です。

それは次回、次々回にお話しします。
 
顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602

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氏の変更のお話 【離婚問題】

広島市の弁護士仲田誠一です。

今回は、あまり弁護士が目にしない離婚の周辺問題のお話を1つ。
 
離婚に際して、氏(苗字)を変更していた配偶者は、婚氏(結婚時の氏)を続称するか婚姻前の氏に復氏するのかを選択できます(期間制限はありますが)。
1度目の離婚ではあまり問題になりませんが、2度目以降の離婚では、やっかいな話が出てくるのです。

仮に、前婚で婚資氏続称を選択していた場合、再婚後離婚した際に、選択できるのは2回目の結婚時の婚資を続称するか、離婚の前の氏(前婚の配偶者の氏)に戻るかなのです。
届け出だけで生来の氏(生まれながらの氏)に戻ることはできないという問題が生じます。
 
それではどうしたらいいのでしょうか。
氏を変更するには、家庭裁判所に氏の変更許可の申立てをし、許可審判を得る必要があります。
変更を求める氏の通称としての使用実績や変更の必要性がきちんと吟味され、簡単には認められません。
戸籍上の氏を変更するのは大変です。
そのため、誰かが氏を変更したと言っても、戸籍はそのままで通称を変えているだけの方も多いです。
 
でも、上述のケースでは、たまたま前婚離婚時に婚氏続称を選んだために生来の氏に手続上戻れないだけですね。生来の氏に戻ることを許しても何も問題がなさそうです。

そこで、そのような場合には、簡単にできる婚姻前の氏への変更に準じて、通常の氏の変更よりも許可が得られやすい傾向となっています。
変更許可申立てが権利濫用にあたる、あるいは変更により社会的な支障が生じる等の事情がない限り、生来の氏への変更を許可すべきとする裁判例があるのです。
 
ところが、先日、上述の例で氏の変更が許可されなかった事案の即時抗告を経験しました。
家庭裁判所では、氏の変更の必要性を通常の氏の変更許可申立てと同様に厳しく吟味され、氏を変更する止むを得ない事情がないと許可されなかった事例でした。
上述の裁判例等とは思考方法が逆ですね。原則ダメで例外的にやむを得ない事情があるか判断するという考えです。
家庭裁判所が上述の裁判例を知らないわけではなかったのでしょうが、家庭裁判所の判断は納得ができないものでした。
勿論、本人が代理人をつけずに手続をしていたので、上手く裁判所を納得させられなかったのかもしれません。
 
そのため、即時抗告から代理人としてかかわりました。
抗告審たる高等裁判所には上述の裁判例の存在等を説明して、無事に原審判を取り消してもらい、氏の変更の許可を出してもらいました。
抗告審で原審判の結論が覆るのはなかなかないのですが、今回はきちんとこちらの主張を理解していただき一安心しました。
 
離婚、財産分与、慰謝料、氏の変更のご相談はなかた法律事務所へ。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
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相続預金の取り扱い3 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

本年もよろしくお願いします。

遺産たる預貯金(法的には預貯金債権になります)の遺産分割における取り扱いに大きな変更がありました。
遺産分割の対象となるかならないかの大きな話です。最高裁の判例変更です。
 
従前は、預貯金債権は一部の例外を除いて、可分債権(数量的に分けられる債権)として、相続発生と同時に各相続人に各相続分に応じて帰属するという理屈で、遺産分割の対象となっていませんでした。

そのため、以前のコラムにて、
遺産分割調停において相続人の誰かが預貯金を遺産分割の対象に含めないと主張した場合、当該預金が遺産分割の対象とならないこと(郵便局の定額貯金だけは別扱いとの判例がありました)、
そしてそれは不公平であること(特に特別受益があるかつ遺産のうち預貯金がほとんどの場合)
を投稿させていただきました。
例えば息子が生前贈与をたくさんもらって遺産はわずかな預貯金のみという場合、預金は遺産分割の対象から外れるので、特別受益たる生前贈与を遺産分割に反映できなかったのです。
 
最高裁判所もその不公平な点を無視できなかったのでしょう、頑張った方あるいは弁護士がいたからこそですが。
大法廷で従前の扱いを覆す判断が出ました。

預貯金債権は相続によって共同相続に間で当然に分割はされず、遺産分割の対象となることになりました。
なかなかコラムを書く時間がなくて判例紹介が遅くなりましたが、紹介させていただきます(本年は反省して書いていこうと思っております)。
 
これで遺産分割が公平になったのだろうと思います(実際の案件でも困ったことがありました)。

実務上、影響が大きい判例変更です。

一方で問題もあります。
これまで金融機関は遺産分割前でも相続分に応じた払い戻し請求に応じてきました。
金融機関が仮に応じなくとも、訴訟をすれば請求が認められてきました。
しかし、預貯金が遺産分割の対象となるのであれば、金融機関も相続分が決まらない遺産分割未了の段階での払い戻しには応じなくなりますね。
その点での不便さは出てくることになろうかと思います。 
※ 後に、民法改正により一部払い戻し制度が創設されました。

ただ、早期に遺産分割をしないと預貯金も下ろせないので、相続問題を早期に片付ける契機になる点は間違いないと思います。

なお、判例変更は、預貯金債権のみについてです。
他の可分債権(例えば貸付金など)は、これまでどおり遺産分割の対象外とされるのでしょう。
 
たびたびお話しておりますが、家事事件と言われる相続・離婚は本やインターネットを見て簡単に結論を出すことはできない論点が意外に多い分野です。
弁護士とよくご相談されて進めてください。
 
遺言、相続、遺留分減殺等相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
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