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旧コラム 仲田 誠一: 2019年4月 2ページ目

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所得の種類その1 [税法の話5]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今週から本年度の広島大学ロースクールでの租税法の講義が始まります。

お話は所得税に入っていました。

 

所得税は、担税力に応じた課税を実現するため所得を10種類に区別し異なる課税をしている点はお話したところです。
具体的にお話していきましょう。

 

【利子所得】

所得税法第23条に定められている利子所得とは、公社債・預貯金の利子にかかる所得です。
利子所得の金額の計算は、収入金額そのままです。

 

利子所得にはあまりなじみがないと思います。他の所得と分離して一律に比例税率で課税されるからです(租税特別措置法)。源泉徴収され、一律源泉分離課税(所15%、地5%)ですね。通帳に源泉徴収された後の利子が入金されていますよね、定期預金を解約した際にもらう計算書を見ても税金が差し引かれています。
申告が要らないからあまり気にしません。

 

利子、というと、人にお金を貸した際の利子を思い浮かべるでしょう。
貸し借りの合意を金銭消費貸借契約といいます。
金銭消費貸借契約に基づく利子収入は、利子所得ではなく、雑所得として課税対象となります(なお、事業として貸借しているのであれば事業所得になります)。

 

【配当所得】

所得税法第24条に定められている配当所得とは、法人から受ける剰余金の配当等(利益が出資額に応じて分配される点が共通)に係る所得です。

みなし配当という制度もあります(所得税法第25条)。事業承継対策の際に出てくる制度ですね。

配当所得の金額の計算は、収入金額-負債利子(配当を生む元本取得の借入れの利子です。)です。

こちらも、源泉分離課税の対象となっています

 

【不動産所得】

所得税法第26条に定められている不動産所得は、不動産(航空機、船舶も)の上に存する権利等の「貸付」「による」所得です。

不動産所得の計算は、収入-必要経費です。

 

不動産等の貸付による所得であり、売買による所得は譲渡所得です。
不動産だけではなく、航空機、船舶の貸し付けによる所得も不動産所得です。
節税スキームとして流行った航空機リース、船舶リースなどで出てくるものです。私も銀行員時代には航空機リースなどをセールスしたことがあります。

 

「収入」には、賃料だけでなく、権利金、礼金、更新料、転貸承諾料、賃料相当損害金なども入ります。
ただ、権利金については、施行令にて、価格の
2分の1に相当する金額が譲渡所得判定基準とされます。譲渡所得課税される場合があります。

 

合意解除に伴い土地貸主に建物が譲渡された事例で、不動産所得か一時所得かが争われた裁判がありました。」
一時所得の方が納税者には有利なのです。

裁判所の判断は次のようなものでした。
「貸し付けによる所得」とは、借り主から貸主に移転される経済的利益のうち、目的物を使用収益する対価としての性質を有する経済的利益に限定される。
不動産所得の概念につき、(資産性所得であり担税力は大でありそのために租税負担の緩和措置が取られていないという立法目的があるから)合理的な根拠なくして拡大解釈を行うことは租税法律主義の観点から認められない。
ということを前提に、上記建物は、専ら契約の終了に伴う原状回復義務の履行を賃借人が免れることを目的とし目的物を使用収益する対価たる性質を有するものではないとして、不動産賃貸業務における継続的行為によって生じた所得に当たらず、一時所得にあたる。


租税法律主義に則って安易な拡大解釈は許さないことを前提に事実認定にて納税者を勝たせたものですね。

 

節税に絡む航空機リース事件もありました。

任意組合による航空機リース事業が不動産所得に該当するか(減価償却、損益通算ができますね)が問題となりました。
課税庁は雑所得(民法上の組合契約とは別個の契約類型である利益配当契約の性質)と主張しました。

裁判所は、民法上の契約類型を選択したことを前提として表示行為の解釈を行うのは当然。達成しようとする法的ないしは経済的目的に照らして上記契約類型の選択が著しく不合理である場合には、真実は民法上の組合契約を締結する意思ではなく同契約は不成立であると判断される余地があるにすぎない。としました。


課税法律関係は、一義的には私法関係が規律するというお話です。
契約自由の原則が妥当する世界であり、訴訟でも事実認定には契約書等を重視する処分証書の法理が適用されます。
私人間で契約をきちんとしたら根拠もなくひっくり返せないということですね。

 

なお、組合には、導管理論、バススルー課税というお話もあります。
組合は権利義務の主体となりえず権利義務が直截的に組合員に及ぶため課税客体とされないという考えです。

 

不動産の貸付等が、事業として行われていても人的役務が伴わないあるいは付随的なものに過ぎない場合は、不動産所得です。

事業規模か業務規模かという形で判断されます。
俗に、5棟10室基準と言われています。5棟あるいは10室以上の物件を貸し付けていたら事業規模ということですね。
今回は3種類の所得を説明しました。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

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倒産手続とM&A  [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

自己破産などの倒産処理をする前に、事業譲渡等MAの出口を探ることがあります。

 

ただ、債務を引き継いでしまうMAは(株式譲渡、合併が典型ですね)、破産を考えるほどの負債を抱えている場合には難しいでしょう。
そこで、考える
MAは、事業譲渡が基本になるのでしょうか。


売り手が借金を整理できるだけの譲渡代金が確保できるMAを目指すことになりますが、債務が残るケースでは、自己破産などの出口が必要になります。
勿論、役員からの借入れだけが残るといいうケースでは問題はそれほど大きくありません。役員さんが会社清算手続の中でタイミングよく債権を放棄すると無駄な法人税がかからないで消すことができます。あるいは、清算手続をしない場合でも、会社の休眠状態が続くと役員さんの相続時に会社に対する債権の価値がないものとみなされ無駄な相続税もかかりません。
会社の破産を考えなくて済みますね。

 

自己破産を申し立てることを前提として(債務は残すことを前提に)、その前に、事業譲渡、会社分割などのMAを図る場合は、勿論、買収者は債務を引き継がない形を取ります。

契約をきちんと整えることは勿論、商号の続用と見られないように気を付けないといけません(例えば事業譲渡において債務を引き継がない旨定めていても、商号続用と見られる場合には名板貸責任を追及されて債務を引き継ぎかねません)。

 

倒産手続前のMAは、事業の引継ぎや従業員の引継ぎを図ることが目的ですね。
何もしないで自己破産をすると基本的に事業はなくなり(破産管財人が譲渡することをあり得ますが)、また従業員も困りますからね。

勿論、代金により申立費用を捻出する効果もある場合もあります。

  

ただ、経済的危機状態でのMAは、倒産手続等との関係で問題になることがあります。慎重に進めないといけません。売り手だけではなく、買い手も気を付けないといけません。

 

資産隠し、債務飛ばしと見られる行為はやはり対抗策が存在するのです。一時期、新設分割により優良な事業を新設会社に承継し、新設会社の株式を採算者に譲渡するという濫用的な会社分割が流行ったことがあります。会社分割により債務を飛ばすわけですね。これは、民法上の債権者取消権(詐害行為取消権)に該当しうる行為ですし、破産法上の否認の対象にもなり得ます。

 

経済的危機状態においてMAをする場合には、債権者取消権や破産法上の否認等のリスクがあるのです。MA自体は事業の廃止に伴う社会的損失を回避し、従業員等関係者の利益を守れる行為なのですが、対債権者との関係で詐害的な行為と見られる場合には効力を否定される可能性があるのです。

 

経済的危機状況に限られませんが、MAは弁護士の関与の下で行うべきでしょう。対価の相当性と対価の使いみちがよくよく吟味されます。単に会計上の財産額の変動の有無を基に判断するものではなく、会社の状況、換価の困難性等も考慮されます。
弁護士が関与する場合には、そこら辺をチェックして後で説明がきちんとできるようにします。自己破産を前提とする場合には、対価は弁護士が管理し、後で問題にならない使途にのみ使用します。

 

任意整理の場合は(リスケですね)、銀行の了承を取り付け、対価については事業継続に必要な事業資金を除き債務額に応じて債権者にプロラタ返済をすることになるでしょう(担保を外してもらう債権者は別途考慮しないといけませんね)。事業計画とセットで銀行の理解を得られるかという話です。

 

スポンサー企業を見つけて民事再生で事実上MAを行うという方法もあります。
そもそも民事再生手続をして事業を継続できるケース、スポンサー企業を見つけるのが難しく、なかなかお目にかかれません。

 

なお、事業そのものではなく事業用資産の売却の話もあります。規模の大小は別としてよくやりますね。
申立費用捻出のための売却や廃業に伴う事業の整理のための売却ですね。

こちらも当然、リスクがある行為ですので、後できちんと説明できるように計画し、資料を残して、進めなければいけません。

 

顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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自己破産等の申立て直前の財産処分 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。

 

今回は、債務整理のうち、自己破産、個人再生で問題となり得る申立て直前の財産処分についてお話します。

 

破産や個人再生等をする場合には、様々な理由で処分行為を行うことがあります。身辺整理も必要ですからね(特に、法人破産の場合には、いつもどこまで処分をして整理するか悩みます)。

整理をして申立てをしなければならない。一方では、処分行為の中には自己破産等手続の中で問題視されることもある。今回はそのようなお話です。

 

直前の財産処分が問題となるのは、破産における否認対象行為かどうか、あるいは個人破産における免責不許可事由に該当するか、という点になります。
個人再生においても、破産における否認相当行為があった場合には、清算価値に処分した財産が計上されます。

具体的には、直前の処分行為について、不当に廉価な財産処分をしていないか、贈与行為ではないか、財産逸失行為に該当しないか、費消しやすい財産に形を変えて費消したのではないか、特定の債権者に対する不公平な弁済行為になっていないか、などが問題となります。

 

贈与行為等無償行為、偏波弁済(特定の債権者だけに対する弁済)行為は、基本的に、否認対象行為あるいは免責不許可事由になります。
できるだけ避けなければなりません。

 

贈与行為でよく問題になるのは交際相手への贈与、偏頗弁済でよく問題になるのが親族への弁済ですね(よくあるので気を付けてください)。
 

なお、偏波弁済では、給与天引きの弁済も問題となります。弁護士が受任通知を送っても破産開始決定等がないと天引きを止めないケースが結構あります。
理屈上は偏波弁済行為に当たり得るのです。
破産管財人から弁済額の返還請求をされることがあります(実際に破産管財人として請求をしたこともあります)。

 

勿論、贈与行為でも、扶養義務者の被扶養者に対する扶養義務履行行為とみられる行為は大丈夫です。程度問題です。

 

不動産の処分はよくお手伝いしますが慎重に行います。
 

自己破産申立費用を捻出するための売却、抵当権者に促されて行う任意売却のケースが多いでしょうか。


中には、なんとか不動産を残したいということで、親族間で売買をすることもあります。


積極的に問題がない行為ですとは申し上げられないですが、処分行為があったこと自体で、即、管財事件になったり、あるいは免責不許可事由、否認対象行為となったりするわけではありません。
 

妥当な内容の売買で、かつ代金の管理・費消も妥当であると認められれば問題はありません。

裁判所に必ず妥当性を確認されますので、できれば弁護士が関与した方がいいです。

弁護士が、
適正な売買価格かどうか、

売買代金をどのように管理したか(弁護士が管理した方がベターです)、

何に費消していくら残っているのか、

などをきちんと説明します。
 

換価した結果の金銭の費消は、弁護士費用、申立て費用、必要最小限度の生活費などに対するものが許されます。
自由に使っていいわけではありません。

 

車の処分もありますね。


駐車場や税金の問題で維持できないケースが典型でしょうか。

こちらも適正価格か、売買代金額の管理が肝要です。売却する前に車検証の写しを取っておくこと、走行距離等車の状態を写真に残しておくこと、できれば査定書を取っておくことも大事です。

 

中には、なんとか車を残したので親族間で売買をするということもあります。


単純な売買や、所有権留保債権者から名義変更を受ける形での売買もあります。

管財事件にならないために車を現金化するという目的(現金化すると同時廃止・管財事件の振り分け基準によると同時廃止の可能性が高まり得る。)もある場合もあるかもしれません。


車の処分も裁判所に妥当性を確認されます。説明が必要なので、弁護士に相談しながら進めた方がいいでしょう。

 

なお、直前の現金化は、財産の性質をもともとの財産として見て自由財産拡張対象の判断がなされるリスクもあります。
そもそも自由財産拡張対象財産して認められない財産-不動産、株式など-を現金化しても、もともとの財産の形で残っていると仮定して自由財産拡張対象から外されるリスクです。
ケースバイケースの判断です。

 

保険の解約、保険契約者貸付も最近よく見ます。
 

こちらは少なくとも広島ではある程度許されています。

保険の財産評価は解約返戻金額で行うのですが、契約者貸付を受けているとその額を控除した金額になります。解約したら現金預金としての評価ですね。
広島本庁であれば、管財事件になる基準が保険解約返戻金だと20万円、現預金だと50万円です。
そのままでは管財事件になるけれども、保険を解約する、あるいは契約者貸付を受けるだけで、管財事件にならなくて済むケースがあるのです。

 

財産処分のお話をしてきましたが、具体的に当該財産の処分をする方がいいのかどうか、する場合の妥当性を保つにはどうしたらいいかの判断は、ケースバイケースで行う必要があります。

一概にこのような行為はよいと判断することができず、処分の必要性と考えられるリスクを考量して判断しなければいけません。

 

お早めに弁護士に相談し、計画的に物事を進めることをお薦めします。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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所得税法のお話に入ります [税法の話4]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

所得税法のお話に入りましょう。


所得税とは、文字どおり、所得にかかる税金ですね。
 

所得税のメリットは、担税力に応じた課税の実現という租税公平主義の要請に適合することと言われます。所得が多い人が少ない人よりも支払う税金が高いですからね。


さらに、日本の所得税が典型的ですが、担税力の差異に着目した所得分類が可能(所得の種類によって税金を変えられる)、担税力に影響ある人的要素人的控除に反映できる(〇〇控除などですね)、担税力を表す所得金額の大きさに応じて累進課税が可能(日本は超過累進課税です)ということも挙げられています。


所得税のデメリットは、正確に所得を捕捉するという税執行上の困難性が挙げられています。そこで、納税者番号制度導入云々の話になるのですね。

 

【課税単位】

所得税は、個人単位で課税されます。昔のように戸単位ではないのですね。


個人単位で課税されるとして、所得税は累進課税ですから所得が大きくなればなるほどその分税率も高くなります。
結果、1000万円の所得があるとして、それを
1人の所得として申告するよりも、2人の所得に分散して申告した方が(例えば500万円ずつ)、各人の所得税率は下がりますから全体の所得税は小さくなります。

同族経営の会社は、社長さんだけ役員報酬をたくさんもらうよりも、家族の役員報酬にも回した方が、所得税は安くなります(配偶者を役員にして相応の報酬を出しているケースでは離婚の際には困ったことになりますが)。
勿論、役員報酬の金額には合理的根拠も必要でしょう。

 

所得の分散が節税になるのですね。そこで、不当な所得分散を防ぐべく手当もされています。


事業の経営主体に事業からの所得が帰属するという事業主基準で判断されます。

原則として家族の1人が得た収入についてはその者にのみ課税をして、課税後の家族内の金銭等の移転について税法は関知しない建前になっています。

家族間での生活費の支払いや利益提供が行われても支払者側では控除できず(所得税法45条の家事費・家事関連費)、受領者側でも課税されません(所得税法9条、相続税法21条の3)。

 

親子歯科医師事件と呼ばれる高裁判決があります。
親子で歯科医師を開業しており、子は自分の事業として申告したケースですね。
事業主基準(が前提とされて、父親の単独事業に子供が参加した場合、特段の事情がない限り、父親が経営主体で子供はその従業員であるとされました。世帯の区別、資金の流れ、事業の歴史的経緯等を総合考慮して父親を事業主と認定しています。       

 

【所得税計算の仕組み】

所得税計算は所得税法第2条第1項の定めているとおりです。

① 所得分類と金額計算

  後述するように、所得を種類に分けて計算するということです。

② 損益通算・繰越控除

  許された損益通算、繰越控除をします。

③ 所得控除により課税所得(総所得・退職所得・山林所得)金額を計算

④ 税率適用による税額計算 
  累進超過課税になります。所得金額毎に税率が高くなります。単純な累進課税ではなく、低い所得部分は低い税率、高い所得部分は高い税率というような計算になります。
  法人税は違いますね。

⑤ 税額控除による年税額算出


納付すべき税額は、年税額-源泉徴収額-予定納税額ですね。

確定申告書のとおり金額を記載していけば上記の計算ができるようになっています。

 

損益通算は、マイナスを他の所得から控除できる制度だと思ってください。

不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得(但し特例法の制限あり、土地建物の譲渡損は他の所得との損益通算禁止等)で認められています。

 

所得控除と税額控除は紛らわしいですね。

所得控除は、納税者の個別の事情に応じて、総所得金額、退職所得金額、山林所得金額から控除することが認められているものです。あくまでも所得の控除です。生命保険料控除などです。

税額控除は、所得控除後の各種課税標準に対して税率が適用された後の金額からさらに政策的目的などから税額を控除するものです。税額そのものが控除されます。

当然、税額控除の方がありがたいですね。

 

課税標準という言葉が出てきました。課税標準とは、課税物件を具体的に数量や価格で示したものです。

所得税は所得(総所得金額、退職所得金額、山林所得金額)です。

 

所得分類という話も出てきました。


所得税法は、所得を10種類に分類しています(所得税法23条~35条)。


各所得の担税力に応じた課税をして租税公平主義の実現を図る趣旨です。所得金額が同じでも種類によって税金が違うのですね。

したがって、ある所得がどの種類の所得に該当するかは最大の関心事になります。所得税紛争の多くは、納税者が有利な所得で申告し、課税庁により不利な所得で更正処分を受けるものです。

一般に、勤労性所得(給与、退職)⇒資産勤労結合所得(事業、不動産)⇒資産性所得(利子、配当)の順に担税力が高い、すなわち税金が高いと言われています。

これに対し、法人税については所得分類はなく一律課税です。

会社の経営をなさっている方は、所得税と法人税の違いを踏まえて事業承継対策や節税を考えないといけません。
 
 

次回から個々の所得の話をしていきます。お話が少しは面白くなると思います。

 

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事業承継、同族会社株式の注意点 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による企業法務コラムです。

 
今回は事業承継に関連する同族中小会社の株式の相続のお話です。
遺産分割の方法、遺産分割までの相続共有株式の権利行使、遺留分制度の改正などをお話します。


株式公開をしている大企業と異なり、同族中小企業のオーナー株主の相続が発生すると事業承継問題が顕在化します。

相続にあたり同族会社の株式も遺産分割の対象となる相続財産になります。会社の所有者は株主です。オーナーチェンジが起きるのですね。

 

同族会社の株式の帰趨は経営権と直結する問題です。

株式を少なくとも過半数保有しなければ、他の株主の協力なしに取締役選任もできません。
自分の意思で経営をしていくことはできません。

後継者にきちんと株式を移行させないといけませんね。

また、前オーナーに株式の他に目立った相続財産がないケースでは、遺産分割協議において後継者が株式を得る代わりに他の相続人に対して高額の代償金を支払わなければならないこともあります。

 

仮に株式を分割相続した場合、経営をしない相続人は、お金に変えられない株式に対して相続税だけを支払わないといけません(驚くほ高額な評価がされる会社もあります)。

同族中小企業の株式は、ほぼ例外なく譲渡制限が付いており、かつ購入ニーズもMAの場合を除きないでしょう。
 

遺言がある場合には遺留分の話ですね。


時限立法の事業承継特例税制は、税金面の話です。
事業承継対策は、原則を押さえないといけません。


株式は現代表者あるいは後継者だけに集中しておく、

かつ集中した株式を後継者に生前あるいは遺言により移転しておく
といった準備をすることが肝要です。

その上で、事業用資産・株式は後継者に、それ以外を他の相続人に、を基本にスムーズに承継させる必要があります。

 

実際に、相続の場面において、同族会社株式がどう扱われるかなどをお話しましょう。

 

まず、遺産分割の方法のお話です。

 

流れは、遺産分割協議 ⇒ 調停 ⇒ 審判と続いていきます。

 

遺産分割協議において、後継者が株式を単独取得する合意ができれば問題はありませんね。
会社の所有者は株主です。後継者が単独取得するべきでしょう。

 

ただし、財産的評価の問題があります。
協議段階では、株式の相続税評価を参考に協議されることが多いのではないでしょうか。
後継者が株を取得しても、他の財産を全く承継できない、あるいはそれに加えて代償金を支払わないといけないケースもあります。

 

代表者は会社の債務の連帯保証も負います。
連帯保証債務は相続時に存在した債務(現実の債務)は各共同相続人にその相続分に応じて承継されます。

後継者としては、銀行と折衝して、相続債務である連帯保証債務を免責的債務引受(他の相続人は債務を免れる形の債務引受)することを条件に他の相続人の譲歩を取り付けるべきだと思います。
誰しも保証債務は負いたくありません。実際に経営をしていない相続人はなおさらです。

 

調停も合意手続ですので、遺産分割協議と同様、話し合いです。
ただ、裁判所が妥当な線で調停成立を働きかけてくれる期待があります。

 

審判に至った場合は、裁判所が遺産分割内容を決めます。


後継者であること、後継者に株式を集中しないと困る事情等をきちんと説明すれば、株式は後継者である相続人の単独取得という内容で審判を出してくれる可能性が十分あります。
機械的に法定相続分に応じて分けるということではありません。

 

当事者の意見も重視されると思いますが、経営をしていない相続人が株式の現物を欲しいとは言わないでしょう。

その代わり、後継者は資金負担への準備が必要になる場合があります(株に価値があり他の遺産で賄えない場合など)。

評価額は、裁判所が決めます。鑑定評価に付されるケースもあります。

 

次に、遺産分割が完了するまで(あるいは調停が成立するまで、審判が確定するまで)、相続株式の権利行使をすることができるのは誰かの問題です。

 

株式は、帰属が確定するまで共同相続人による準共有になります(株式は、物ではないので物に使う共有という言葉を使わず準共有と呼ばれます)。

 

権利行使に関しては、会社法106条にて、相続人らが権利行使者を指定し、会社に通知するというルールが定められています。

 

判例によって、権利行使者の指定は、原則として持分の過半数で決するとされています。
特段の事情がない限り株主権の行使は共有物の管理行為とみられているわけです(共有分の管理行為は持分の過半数で決します)。


過半数で決められずに権利行使ができなければ困りますね、少数株主による株主総会の開催がなされてクーデターが起きることもあり得ます(勿論、株主総会の定足数も関係してくる問題です)。

 

会社法106条但し書では、権利行使者の指定・通知がなくても会社が同意すれば相続人による権利行使ができるとされています。

会社が同意する場合の権利行使のルールについても平成
27年に最高裁判例が出ました。

会社が権利行使を許す場合であっても、民法の共有の規定に従い持分の過半数で決めなければならないとされました。

結局は、相続共有株式については、後継者側の相続人で過半数持分を持っていない限り、権利行使ができません。
後継者グループで既に過半数の株式を持っているケースではいいですが、そうでない場合には困りますね。
例えば過半数が相続共有株式だと定時総会も開けなくなります。


定款に相続株式の相続分による単独行使を認める旨の定めをしておく対策も考えられました(そうであれば少なくとも相続株式全体が反対に回ることはなくなります)。
実際に、従前はそのようなアドバイスもしておりました。

上記判例の出現でその定款規定の効力が維持できるのかどうか危惧するところです。

 

勿論、経営権はく奪目的の、法の間隙を突く株主総会決議は、権利濫用としてその効力を否定される可能性はあります。
ただ、例外的に適用される理論ですので、事前にこのような問題が起きないように措置をしておくことが肝要ですね。

 

なお、遺留分制度の改正がありました。まもなく施行されることになります。


これまでは、遺留分減殺請求の制度でした。

遺言で全株式を後継者に相続させる旨を定めていても、その遺言が他の相続人の遺留分を侵害する場合、遺留分減殺請求により当然に物権的効果が生じ(遺留分侵害にあたる株式が当然に遺留分請求者に移転し)、受遺者である後継者と遺留分減殺請求をした他の相続人の準共有状態が生じました。


しかし、改正民法1046条1項が遺留分減殺制度を遺留分侵害の金銭請求に変更しました。

遺留分制度によってはもはや株式の準共有状態が生じないことになります。経営の混乱は生じないことになりました。

ただし、支払請求に対応できる資産を後継者に準備しておかなければなりません。

 

顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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