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旧コラム 仲田 誠一 5ページ目

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再転相続事例 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
以前に、再転相続のお話をしました。
相続放棄のお話ですね。
再転相続は、被相続人がまず亡くなり、その相続人が熟慮期間中に相続放棄、限定承認、単純承認の選択をしないまま次に亡くなって相続が発生した場合のことでした。
 
めったにないのかもしれませんが、最近そのような案件を扱いました。
 
被相続人がなくなり、第1順位の相続人である子が相続放棄しました。
次に、第2順位の直系尊属であるお父様お母様が相続放棄をしました。
被相続人が亡くなってから、お父様の相続放棄をする間に、直系尊属の中でお父様よりも後順位となる父方の祖母さんが亡くなったのですね。
第2順位のお父様お母様の相続放棄が終わり、第三順位の兄弟姉妹が相続放棄をする段階で当職が相談を受けて受任をしたところ、上のような事情がわかったということです。
 
まず、上のケースが再転相続なのかという問題が生じます。
 
祖母は、被相続人が亡くなった際にはご存命でしたが、実際に相続人となった時点はお父様の相続放棄の時点であり、既に亡くなっています。
先順位の相続人が相続放棄する前に亡くなっているのです。
このような場合でも再転相続となるのでしょうか。
 
祖母が亡くなった時点で被相続人の相続人ではなかったのですから、再転相続ではない、祖母(の相続人)は相続人放棄する必要はないとも言えそうです。
 
一方、相続放棄をした相続人は、法律上、相続のはじめから相続人ではなかったことになります。そうすれば、理屈上は、被相続人の相続時点で祖母は相続人であったとみることになります。相続放棄が必要ですね。
 
さすがに書籍類には明確に記載がないため、家庭裁判所と相談しました。
その結果、後者の考え方に沿って再転相続と扱うことになりました。
相続人が被相続人の相続の発生を知らなかったときでも再転相続になるという考え方もあるためのようです。
 
そうなれば、第3順位の兄弟姉妹が相続放棄するには、祖母の相続人に相続放棄をしてもらわないといけませんね。第2順位の相続放棄が終わらないと相続放棄ができません。
 
次に、再転相続だとして何をするかです。
 
お父様は祖母について祖母の相続人として相続放棄をしてもいいということになります。そうすれば結局債務は引き継ぎません。
ただし、祖母の相続人が兄弟姉妹(代襲相続は1回のみなので甥姪まで)まで放棄して他に相続人がいないというところまで手続をしないといけません。
祖母の第3順位の相続人まで拡がると、会ったこともない方あるいは連絡が取れない方が増えてくるかもしれません(弁護士が連絡を取って協力を仰ぐことをよくします)。
なお、この場合、理屈上、被相続人の第3順位の相続人は登場しないのだろうと思います。祖母が被相続人の相続について相続放棄するわけではないですからね。
 
一方で、再転相続人として祖母の被相続人についての相続放棄選択権を行使して相続放棄をすることもできます。
勿論、祖母の相続放棄ができない事情があるケースではこの方法しかありませんね。
また、この場合には、祖母の相続人が全員相続放棄をすればいいのでしょう。
祖母の相続を相続人が承認して、選択権を行使することになります。
相続人がいなくいなるまで相続放棄をすることは必要ありません。
 
各再転相続人の熟慮期間の起算点の問題もありますね。
ケースバイケースで、各再転相続人が再転相続を知った時あるいは再転相続となる原因となった先順位相続人が相続放棄をしたことを知った時から起算されるのではないかと思います。
 
相続放棄の中でもややこしいお話である再転相続の細かい話をしてみました。
ややこしい話なので難しい点はご容赦ください。
 
相続放棄も簡単なようでいろいろな問題が生じます。少なくとも弁護士に相談をされてから進めてくださいね。
 
遺言、相続、遺留分相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
 
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契約書類の解釈 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
現在控訴審で契約解釈の争いとなる裁判を1年以上続いています。
B TO Bの訴訟はほぼ契約内容の解釈で決着が付きます。
 
一審では当方の主張した点があまり細かく吟味されずに全面敗訴してしまいました。
 
控訴したところ、控訴審では、さすがに簡単すぎる判決だと感じてくれたのでしょう。
何も整理されていないじゃないかと指摘され(それは一審の裁判官の判断なのですが)、なかなかないことですが細かい審理を続けてくれています。
先日、控訴人である当方に有利な和解案が出されました。
和解は整わなかったのですが、逆転勝訴の可能性が十分に出てきたところです。
勿論、結果は最後までわからないところですが。
 
事案は、
注文書発行・預り金預託 ⇒ キャンセル ⇒ 預り金没収の念書作成 の流れで、預り金の違約金充当合意が無効であり預託金を返還しろと請求した訴訟です。
高級外車だったので没収された預託金が大きかったのですね。
 
注文書上、申込の撤回(キャンセル)ができるのか、契約が成立していて一方的解約ができないのか、が第1の争点でした。
原審ではきちんと当方の主張を汲み取ってもらえずに、あっさりと契約は成立しているから申込の撤回はできないと判断され、敗訴判決を貰いました。
 
一方、控訴審では、注文書の記載を細かく吟味して、契約は成立しておらず、キャンセルは可能であった、という方向で話を進めてもらっています。
 
確かに、注文書裏面の約款条項には注文書を発行したらキャンセルができないという条項はあったのです。
しかし、注文書の他の約款条項とは矛盾する内容でした。
条項全体を吟味していくと、やはり契約は成立しておらずキャンセルを許容する趣旨の合意だと見られるべき書類だったのです。
控訴審では、そこが理解されたということです。
書面の解釈で前提問題ががらりと変わるのが訴訟です。
訴訟では、いくら経緯や実態を説明しても、契約書類に「こう書いてありますよ。」とあっさり切られることも珍しくはありません。
勿論、契約書類の記載は、大きな武器にもなります。 

契約あるいは合意書面は大事であるということをことある毎にお話ししています。
FAXでもなんでもいいので書面を残しておくのです。
裁判になると想像以上に、条項や取り決めを吟味されて契約内容が解釈されます。契約条項が独り歩きする感もあるぐらいです。
処分証書の法理という考え方があります。
法律行為(契約など)を直接表す書面(契約書など)が真正に成立していれば、特段の事情がない限り、その記載どおりの法律行為の存在を認定するという考え方です。
実務では、契約書等があれば必ず勝てるというほどは厳格に適用されていない感がありますが、それでも処分証書となる契約書類は非常に重要なのですね。
理屈上は、反証が成功しなければ、処分証書の記載内容どおりの事実が認定されるのです。
その観点からいけば、個々の契約条項がよく吟味されるのは当然だと言えます。
 
企業の事前のリスク対策としては、契約書、少なくとも合意内容がわかる書類を残すことは勿論、個々の条項や取り決めが相互に矛盾しないようにそれらを作成することが必要です。
誰が見ても一義的に理解できる内容、このケースではこう解決されるとイメージができる内容にしなければなりません。
そのような契約書類があれば、相手方も争ってくることはあまりありません、トラブルが防止できますね。
トラブルが発生したら、当然、強力な武器として契約条項が使えます。

B TO Bのトラブルの相談に限りませんが、契約書、あるいは契約関係書類、合意書面がしっかりしているご相談は、ほっとします。
逆に、取り決め内容がきちんと残っていない案件は、どうやってそのことを立証すればいいのか、立証が可能なのかと悩むところです。
直接の証拠がないので、間接事実で立証することになりますが、実際そのような訴訟は多いです。
 
御社が使っている注文書や契約書のひな型を1度チェックしてみてはどうでしょうか。
取引の流れ(注文あるいは受注から代金支払いあるいは納品・代金受領)を、注文書や契約書等の取引関係書類に沿っていろいろなケースを想定しながらトレースしていけるかを見るのです。
こういう場合はこうなると明確に理解できるのであればいいのですが、そうでなかった場合には契約書類に不備があることになります。
契約条項1つの内容で、トラブルの発生の可能性、トラブルが発生したときの解決にかかるコストが変わってきます。
 
必要なコストだと考えて、一度専門家に契約関係書類を吟味してもらうことをお勧めします。
ひな型や、大口取引先関係を1回見てもらえば何度もチェックを受ける必要もないと思います。
 
本当は、書類関係だけではく、取引プロセス自体の監査をして、トラブル防止の仕組みを整備することもお勧めしたいです。
裁判をしてみると、依頼企業の主張を裏付ける記録が何もないという例も珍しくありません。
ルーティン化できる簡単な仕組みでそういうことは防げます。
 
なお、上記案件ですが、キャンセルはどうやらできそうという第1関門は突破しましたが、しかしキャンセル条項の中にキャンセルの場合には通常生ずる損害は賠償請求できる旨もありました。
そこで、現在は、通常生ずる損害とは何かを議論しているところです。

一審でやってくれていればよかったのですが・・・

なお、消費者契約法9条の話では通常生ずべき損害の立証は消費者側に負わされる傾向ですが、こちらはB TO Bの争いで条項自体に通常生ずべき損害と記載されているので、立証責任は損害を主張する側です。
 
顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
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配偶者居住権の評価 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
「相続法改正ポイント5」というコラムにて、配偶者居住権のお話をさせていただきました。

配偶者居住権の税務上の評価方法が出てきたのでまた取り上げます。

少しだけおさらいを。
 
配偶者居住権は、被相続人の配偶者の保護の制度でしたね。
自宅が他の相続人と配偶者の共有の状態になると、場合によっては不動産を処分しないといけなくなる、賃料相当金の支払義務の問題が出てくる、共有物分割請求がなされる等々、配偶者が法的に不安定な立場におかれます。
そのため、改正民法は、配偶者居住権を新たに定め、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間、無償でその配偶者に居住等を認めることにしましたということでした。
 
 配偶者居住権設定の方法は、
① 遺産分割協議による設定
② 遺言による配偶者居住権の遺贈(死因贈与でもかまわないと解釈されています。)
③ 家庭裁判所の審判
の3つでした。
 
もっとも、遺言を作成するのであれば、わざわざ配偶者居住権という形で保護を図る必要はないとは思っております。
遺言の内容を工夫すればいいだけですね。
 
配偶者居住権の期間は、原則配偶者の終身の間でしたね。
ただし、遺産分割協議、遺言あるいは家庭裁判所の審判で期間を定めたならばその期間です(改正民法1030条)。
 
配偶者居住権は、財産権(相続財産の一部)とみなされます(改正民法1028条)。
すなわち、配偶者はその配偶者居住権の財産的価値に相当する金額を相続したものとされます。
 
ただ、評価方法は難しいですということを書かせていただきました。
勿論まだ動いていない制度なので裁判上どのように評価されるのかわかりません。
 
そして、相続税法上の計算の方法が出てきたようです。
配偶者居住権も相続財産ですので、当然に相続税の課税対象となりますね。
一方、配偶者居住権が付いた不動産の評価は、その分下がるはずですね。
そこら辺の計算方法が出てきたということです。
 
あくまでも税制上の評価方法です。
しかし、民法上(すなわち、相続法)の計算も、税制上の計算方法に引っ張られていくことになると思います。
財産の評価方法について税制上の評価と、裁判所が算定する所謂時価とは異なります。
ただ、時価評価も難しい物や権利があり、税制上の評価方法が使用される、あるいは参考にされるということもあります。
 
建物についての配偶者居住権の評価は、

建物の相続税評価額 - 
建物の相続税評価額×(残存耐用年数-居住権の存続年数)/残存耐用年数×複利現価率

です。

建物の評価額から居住権が及ばない耐用年数分の現在価値を引いたら居住権の価値が出るというイメージでしょうか。

残存耐用年数は、法定耐用年数(住宅用)×1.5‐築後経過年数、
存続年数は、配偶者居住権の存続期間が終身であれば配偶者の平均余命、それ以外の場合には定められた期間(平均余命を上限とする)、
ということです。
平均余命というのは、年齢別に統計上出されている数字になります。
 
配偶者居住権の建物の相続税評価は、建物の相続税評価額-配偶者居住権の価額です。
当然ですね。
 
土地についても定められています。
 
居住建物の敷地の評価は、
土地等の相続税評価額-敷地の利用に関する権利の価額
です。
 
配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利の価額は、

土地等の相続税評価額-土地等の相続税評価額×存続年数に応じた複利原価率

になります。
 
なお、同じく説明させていただいた配偶者短期居住権については、課税上の問題は生じないです。
 
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相殺の担保的機能と破産 [企業法務、借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
相殺の担保的機能と破産の相殺禁止との関係のお話をします。
企業法務の観点からは、相殺は債権保全の方策として重視されます。
ただ、破産手続との関係で無限定に相殺の効力が認められるわけではない。
というお話です。
 
【相殺の担保的機能】
相殺は、担保権と同じような機能を有します。
売掛先から別途仕入債務がある場合には、売掛先が債務不履行をした場合に少なくも仕入債務については売掛金債権を自働債権として相殺すれば実質的に回収ができることになります。
他の担保権よりも手続が簡単であり、強力な担保ですね。
業績が芳しくない売り先に対しては、仕入を立てることで一部債権保全をしておくということもお勧めをすることがあります。
 
銀行も貸付先に預金を積んでもらうことがありますが、相殺の担保的機能を意識しているのですね。弁護士から受任通知が銀行に届くと期限の利益喪失事由になりますので、即相殺をしてきます。
主債務者の預金だけではなく、保証人の預金も相殺してきますので、ご注意ください。
 
取引先が破産をした場合でも相殺権は有効です。
当職が法人の自己破産の代理をした際にも、売掛先から相殺の主張をされることが珍しくありません。
 
ただ、破産法を貫く債権者平等原則から、一定の場合には相殺が禁止されます。相殺禁止に該当すると、相殺は無効です。
破産管財人は相殺の無効を前提に債務の履行を請求することができます。
 
相殺禁止が定められている場面を説明していきますね。
 
【破産手続開始後に債務を負担したとき】
当然ですね。相殺を許すと、破産手続開始後に債務を負担することによって特別の担保権を付与することになってしまいます。
破産手続開始というのは、自己破産であれば、申立て後、予納金を納めて破産管財人が就任した時点です。
破産管財人との契約によって債務を負担した場合や破産管財人が否認権を行使して返還債務を負担する場合等ですね。
通常の取引関係では出てきません。
 
【危機時期に債務を負担したとき】
破産債権者が破産者に対する債務を負担したときは、相殺の担保的機能から、担保が供与されたと等しいことになりますね。
危機時期の担保供与は否認の対象になります。それと平仄を合わせて相殺を禁止しているものです。
 
1 支払不能を知った後の債務負担
債務者の支払不能状態を知って債権者が債権者に対して債務を負った場合には相殺が禁止されます。
支払不能とは期限の利益が到来した債務を一般的・継続的に支払うことができない状態です。
専らその契約によって負担する債務を破産債権と相殺に供する目的で破産者の財産を処分する契約を締結したときか、破産者に対する他人の既存の債務を引き受けた場合です。
前者のケースでは、少し要件が厳しくなっています。
 
2 支払停止があったことを知った後の債務負担
支払停止があったことを知った後の債務負担をした場合にも相殺が禁止されます。
ただし、破産者が当時支払不能ではなかった場合には相殺は禁止されません。ただし支払停止があった場合には支払不能が推定されます。
弁護士から自己破産を前提とする受任通知が届いたとします、受任通知は支払停止の通知です。その後は債務を負担しても相殺ができないということになりますね。
 
銀行が弁護士から受任通知後に口座に入金になった預金を相殺できない、相殺すると後に破産管財人から否認されると返還しないといけないというのはこの理屈からです。
 
3 破産手続開始申立てがあったことを知った後の債務負担
破産手続開始申立てがあったことを知った後の債務負担にも相殺禁止が及びます。
まあ、そうですよね。
 
例外が3点あります。
1 債務の負担が法定の原因に基づく場合
相続、合併、事務管理、不当利得にように当然に債務が発生しまたは帰属する場合です。
破産債権者が殊更に債権債務の対立状態を作出した場面ではないからです。
まあ、めったにないことでしょうが。
 
2 債務の負担が危機状態またはその兆表を知る前に生じた原因に基づく場合
危機状態またはその兆表を知る前に生じた原因に基づいて債務を負担する場合には、破産債権者の相殺への合理的期待を保護する趣旨です。
具体的な判断は難しい条文です。個々の事例における相殺の期待度の程度を検討するとされています。
 
3 債務の負担が破産手続開始申立ての時より1年前に生じた原因に基づく場合
破産債権者の予測可能性を害することのないようにしたという規定ですが、あまり想定できる場面がありませんね。
 
このように見ていくと、相殺の担保的機能は強いのですが、弁護士から破産申立てを前提とする受任通知が届いた後は債務を負担しても駄目なのが基本ですね。
相殺に限らず、債務者の状況をよく把握し、弁護士が受任するまでに債権保全を図らないといけないということですね。
 
企業法務サポート、顧問弁護士、債務整理(民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
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相続人が相続放棄や承認をする前に亡くなったとき [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
 
相続問題のうち相続放棄のお話です。
相続放棄に絡んで、再転相続、代襲相続、数次相続について説明します。
 
【再転相続】
Aが亡くなって1回目の相続が発生します。
被相続人Aの相続人Bが熟慮期間中に相続放棄も承認も行わないまま亡くなって2回目の相続が発生しました。
Bの相続人Cが相続人となることを再転相続と言います。
ここではCを便宜上、再転相続人と呼びますね。
 
あまりない例かもしれませんが、第2順位相続人の相続放棄の例で見ることがありますね。
祖父母、曽祖父母が御生存であれば高齢のことが多いです。
第一順位の子が相続放棄をしなければ第2順位の直系尊属の相続放棄ができませんから、第2順位の方が相続放棄するのは一定期間経過した後になります。
たまたま、亡くなってしまうこともあるのですね。
 
再転相続人は、AとB両方の相続人になります。
 
再転相続人は、勿論Aについて相続放棄ができます。
3か月の熟慮期間の起算点は、再転相続人がAの相続人になったことを知ったとき、つまりBの相続を知ったときになります。あくまでもCがAの相続人になるのはBが亡くなったからですから。
第2順位、第3順位の相続人が相続放棄できるのは自身が相続人になったときからなので、先順位の相続人の相続放棄を知ったときから熟慮期間が起算されるという理屈と同じです。

もう少しややこしい議論があります。
 
(先にAの相続を承認・放棄した場合)
再転相続人は、Bの相続について承認・放棄の選択ができます。
再転相続人はBの相続について固有の選択権を有しているからです。
Aの相続放棄をした後に、Bの相続放棄をしても、Aの相続について放棄の効力が遡って無効にはならないとされています。
 
(先にBの相続を承認した場合)
再転相続人は、Aの相続について、相続放棄・承認のいずれもすることができます。
Aの相続を承認・放棄し得る地位を承継し、選択権を有しますからね。
 
(先にBの相続を放棄した場合)
再転相続人は、Aの相続について、承認・放棄のいずれもなしえません(する必要がありません)。
再転相続人はBの相続を承認して初めてAの相続を承認・放棄し得る地位を承継し、選択権を有しますから。
 
ややこしいですね。
書籍により微妙に説明が異なっているような気がします。
実際に行うときは(現在そのような案件を受けているのですが)、よくよく吟味して手続を進めないといけません。
 
代襲相続
BがAより先に亡くなっていた場合には、単純に代襲相続の話となります。

Aの相続発生時に既にBが亡くなっている点が再転相続のケースと異なります。

Aの遺産分割はAの相続人間(Bが亡くなっているのでBの代襲相続人が当事者)で行います。
Bの代襲相続人は、勿論Aの相続について相続放棄ができますね。代襲相続人の熟慮期間の起算点はAの相続を知ったときです。
 
【数次相続】
BがAの相続を承認(熟慮期間を徒過など)していたが遺産分割前に亡くなった場合は数次相続の問題となります。
実務上よくある事態です。

こちらは、既にBがAの相続を受けていますね。その点で再転相続のケースと異なります。

Aの相続についてはAの相続人間で(Bの代わりにBの相続人が当事者となります)、Bの相続については勿論Bの相続人間で遺産分割協議をすることになりますね。

遺産分割協議は同時に行うことも多いです。遺産分割調停も2件同時に申し立てることになるでしょう。

勿論、Bの相続人は、Bの相続について相続放棄をすることが当然できます(その場合はBの相続人ではなくなるのでAの遺産分割協議には参加できません)。
 
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破産、個人再生と保険の契約者貸付 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

債務整理と保険の契約者貸付のお話です。
 
債務整理のうち、自己破産、個人再生のお話になると、保険契約があるかどうかを必ず確認します。
保険の解約返戻金が財産と評価されますからね。

自己破産の場合であると、管財事件か同時廃止事件かの振り分けに直接かかわります。

個人再生の場合であると、最低弁済額を決める清算価値の問題にかかわりますね。

保険がある場合には、保険証券と解約返戻金証明書(証券上、解約返戻金の額あるいは解約返戻金がないことが明確な場合には保険証券のみで大丈夫です。)が必要書類になっております。
なお、県民共済あるいは月払いの自動車保険等は解約返戻金証明書が要求されません。
 
ところで、保険を長年かけているけど、契約者貸付を受けているというケースもあります。
今回は、保険の契約者貸付と自己破産、個人再生手続との関係をお話いたします。
 
まず、契約者貸付をうけている保険会社は債権者なのでしょうか?
 
実は、契約者貸付を行っている保険会社は破産債権者、再生債権者とは見られません。
借入れではなく返戻金の一部払い戻しを受けているとみられるからです。
 
定期預金担保の貸越と同じ扱いですね。その場合も銀行を債権者としてみません。
まあ、通常は定期預金を解約して清算してもらうことが多いですが。
 
そのため、弁護士が保険会社に対して受任通知を送る必要はありません。
裁判所に提出する債権者一覧表にも保険会社の記載は必要ありません。
債権者として扱わないので、必ず保険を解約しないといけないということにはなりません。
 
次は、財産評価の方法です。
 
本来の解約返戻金から契約者貸付分を控除した金額が財産評価額となります。
保険会社から解約返戻金証明書を取得すれば、そのような金額が出てくると思います。
解約返戻金が50万円あっても契約者貸付が40万円あったら、財産評価額は10万円ですね。
 
自己破産の場合、広島本庁では、保険解約返戻金が20万円を超えると管財事件の扱いとなります。
上の例であると、何もしていなければ解約返戻金が50万円なので同時廃止基準を満たさず管財事件になります。手間暇費用が余分にかかりますね。
契約者貸付を受けていると、保険の評価額は10万円です。
同時廃止基準だけで管財事件になるということは防ぐことができます。
勿論、契約者貸付金をどう使うかは慎重に扱わないといけません。
 
ただし、中には契約者貸付ができない保険もあります。
また、契約者貸付は解約返戻金の全額について受けることはできませんね。
 
そういうことで、解約をしないと管財事件になってしまうケースはどうしても残ります。
どうしても残したい保険であれば、管財事件で破産手続を進めて、自由財産拡張手続の中で当該保険を拡張対象として認められるように働きかけることになります。
 
個人再生の場合には、清算価値(財産評価額)に契約者貸付額を控除した金額を記載するだけです。
自己破産の場合と異なり神経質に考える必要はありません。
 
理屈上は、契約者貸付を受けて現金化すれば、自己破産における自由財産拡張対象として清算価値から控除しやすくなるということはあるでしょうか(個人再生では自己破産との均衡上、自由財産拡張対象相当財産分は清算価値から控除することができます)。もっとも、保険の形のままであっても、通常は自由財産拡張対象相当財産と認めてくれると思います。
 
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生命保険金と相続 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

生命保険金は、相続の対象外だと聞かれることがあると思います。

保険の外交員さんなどもこのフレーズでセールスをすることがありますね。

 

相続税法上、生命保険金はみなし相続財産です。

基礎控除はありますが、相続税がかかります。

 

しかし、民法上は、受取人指定の保険金請求権は相続財産ではありません。

民法と税法が違うところですね。

受取人指定の保険金請求権は、受取人である相続人が取得する固有の権利と見られるからです。

 

保険の種類により扱いが異なります。
 

受取人が、「本人」の場合には相続財産に含まれますね。
また、受取人が「相続人」と指定されている場合には、相続人の固有の請求権になります。
この場合、相続分とは無関係に各相続人平等で取得します。

保険証券を確認してみないといけません。

 

なお、受取人指定の保険金であれば、相続放棄をしても受け取ることができます。

相続財産ではありませんから、単純承認行為とはなりません。
相続財産と見られる保険金は受け取って費消しては駄目です。単純承認行為となります。

 

ということで、冒頭の生命保険金は相続の対象外という言葉は間違いではありません。

ある相続人にある程度特別にお金を残したい際に保険を活用することも有益ですね。

 

ただし、法律の世界では何事も例外があります。

 

遺産に比べて法外な金額の生命保険金請求権を特定の相続人が取得する場合は不公平ですね。他の共同相続人が納得できません。
そこで、相続の対象外となる生命保険金も、場合によっては、特別受益に準じると見られて相続に影響を及ぼすこともあります。

 

判例は、受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が到底是認ですることができないほどに著しいものと評価すべき特段の事情が存する場合には、死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となる、としています。

 

持ち戻すということなので、仮に1億の遺産で1億の保険金請求権であった場合、保険金請求権1億を特別受益と同じく持ち戻し、遺産を2億と見ます。
相続人が子4人である場合、2億を法定相続分に応じて分けると1人5000万円です。
受取人は既に1億貰っているから残る相続分はないとして、1億を3人で分けることになりますね。

 

特段の事情は、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、「被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断するとされています。

 

実務的には、判例の言い回しである特段の事情はなかなか認めてくれません。
あくまでも例外だからです。

 

単純に遺産の額と保険金請求権の額を比べるだけではないので一概には言えないのですが、遺産の額を超える保険金額のケースや60%を超える保険金額のケースで、特別受益に準じた持ち戻しが認められた例があるようです。

 

遺産と比べて相当の額と言える死亡保険金請求権を共同相続人の1人が取得した場合には、このような紛争が生じるリスクがあることにご注意ください。

特に、事業承継対策などで極端な保険契約の提案を受けたときには気を付けないといけませんね。

 

遺言に、仮に特別受益に準じると見られた場合であっても持ち戻し免除をする意思表示を記載しておく、あるいは生命保険金の受取人を指定した事情を記載しておくことも考えられますね。
持ち戻し免除の意思表示の効力はどう判断されるのか判例がないのでわかりませんが、少なくとも上記判例の総合考慮の要素としては組み込まれるのではないかと思います。

 

遺言、相続、遺留分相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

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破産直前の財産の現金化 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理のうち自己破産と直前の現金化のお話をさせていただきます。

 

自己破産で現金化というと、クレジット枠の現金化も頭に浮かんできます。
クレジット枠の現金化は免責不許可事由と扱われています。違法な行為ですが、宣伝されていることもあって、よく目にする行為です。

程度が軽いと同時廃止で済んでいる傾向にありますが、金額・回数によっては管財事件になります。

追い詰められてクレジット枠の現金化に走るぐらいなら、弁護士に債務整理を相談してくださいね。

 

今回お話しする現金化は、自己破産申立直前に、保険の解約、定期預金の解約、車の売却、不動産の売却等、資産を売却・解約して現金化したケースのお話です。

 

なぜ現金化が問題となるのでしょう。

財産を隠匿・費消しやすくなるからですね。

場合によっては、不当な財団価値減少行為として免責不許可事由となり得ます。

 

広島本庁では、自己破産申立ての際、2年以内の財産処分について報告を求められています。
処分の内容と処分代金の使途の報告ですね。
直前の現金化はあまりお勧めできない行為であることは確かです。

 

当該処分の妥当性はよくよく吟味されます。申立時にはきちんと説明をします。

説明が不十分あるいは合理的な説明ができない場合には、管財事件になり、破産管財人がその当否を判断することになります。

特に不動産の任意売却が絡むケースでは管財事件になるケースが多いですね。
勿論、何年か前に住宅ローン債権者に促されて自宅を売却して残債が残っているというようなケースでは同時廃止で済んでおります。

 

一方、有用の資として利用するための現金化は相当の範囲内で許容されます。

有用の資とは、破産申立費用(弁護士費用含む)、必要な生活費、医療費、転居費用、葬儀費用、学費、公租公課の支払いなどですね。

どうしても必要な費用、あるいは債権者共同の利益になる費用です。

 

特に、申立費用、転居費用、明渡し費用を捻出するために資産を処分するということはよくします。
勿論、弁護士に関与してもらい、お金も管理してもらった方がベターです。

当職の場合は、後に裁判所にきちんと説明するために、売買なら値段設定や契約書作成から関与し、換金額が大きければお金を当職が管理し、有用な資と確認できる限りで依頼者にお金をお渡しして領収書等をもらう、ということまでやっております。
処分の結果として、後述の同時廃止基準の適用により同時廃止事件での処理が可能になるケースもあります。

 

不動産、車など日常生活に必要な物は、親族間での売買をすることも多いですね。

その場合には裁判所への説明により神経を使うことになります。資産隠し、低廉譲渡ではないかと疑いの目で見られますからね。

適正価格であることを説明できる資料を用意して、お金の管理も必ず弁護士が行うようにしています。
弁護士が関与する以上、きちんと説明できるようにしていただきます。
弁護士と裁判所との信頼関係にも繋がります。弁護士があまり無茶なことをすると破産裁判所の信頼を失ってしまうのですね。
弁護士の信頼は依頼者のために維持しないといけません。

 

なお、同時廃止基準(同時廃止事件と管財事件の振り分け基準)には、財産評価額の基準があります。

広島本庁では現金・預貯金は50万円、個別の財産は20万円の評価額を各超えると、管財事件になります。
ちょっと前までは財産全体で60万円を超えるかの基準だったのですが、全国的に基準を合わせてきているようです。

例えば、保険ぐらいしか財産がない場合、保険の解約返戻金が30万円だと、解約して預金化すれば基準上は同時廃止、保険のままだと管財事件となってしまいます。
資産を換価して預金の形にして(かつ有用の資に充てて)、同時廃止事件として申し立てることを考えないわけにはいきません。

 

保険の解約や契約者貸付を受けて同時廃止事件として自己破産を申し立てることは許容される傾向にあります(あくまでも広島本庁です)。
他の財産はどこまで許容されるかどうかはケースバイケースでしょう。

なお、あくまでも現金化前の財産として評価する裁判所もあるようです(その場合でも前述のとおり弁護士費用等有用の資に充てれば評価額は下がります)。

破産法上財産の基準時は開始決定ですから、開始決定時の財産の形で取り扱うべきだとは思っておりますが。

 

自己破産も法的手続ですから、法的な申立て方によって、選択される手続や問題視される行為が変わってくることは致し方ないことです。
当職のスタンスとしては、あくまでも破産法で許容される範囲内ですが、依頼者に有利な行為が可能である限りはその実現をサポートしたいと考えています。

 

イレギュラーなことをする場合、余計な説明や手間がかかることは仕方がありません。
破産裁判所が
OKを出しやすいようにきちんと資料を添付して説明をすることが大事ですね。
「〇〇弁護士は変なことはしない。」と評価されつつチャレンジすることを心掛けています。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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別居時に一方配偶者が持ち出した財産 [離婚問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

離婚に伴う財産分与のお話です。
別居時に一方配偶者が持ち出した財産のお話をします。
よくあることです。

 

財産分与の基準時は別居時が基本です。
別居時に存在した財産をベースに財産分与額が算定されます(別居時の財産を半分にするというイメージです)。

夫婦共同生活により形成された財産を清算するという清算的財産分与の要素が財産分与の基本だからです。

 

例えば車を持ち出したという場合は簡単です。
当然財産分与の対象となります(勿論、どうやって整理をするのか、車検の問題、保険の問題も絡んで面倒ですが)。

 

よく相談を受けるのは、別居前に預金から多額のお金が引き出されているという例です。

 

勿論、引き出されたお金が別居時に残っていたということであれば財産分与の対象となることは当然です。

 

よくわからないときが困りますね。

別居時に本当に近い時期の引き出しであれば、引き出した配偶者が何に費消したのか合理的な説明ができない限り、そのまま残っていたとみられる可能性が相応にあるでしょう。
また、多額の金銭が生活費に必要とは思われませんから金額が大きければお金が残っていると判断される方向になるでしょう。

ケースバイケースの判断になりますね。

 

別居直前の預金の引き出しは相続直前の預金の引き出しと考え方が近いですね。

 

相続直前の預金の引き出しの場合には、合理的な説明が引き出した相続人から出て来ない限り、遺産として残っていた、あるいは被相続人に無断でなされた不法行為として損害賠償請求権が遺産である、といった扱いになります。

 

ただ、離婚の際には、他方配偶者の預金の無断引き出し行為は直ちには不法行為になりません。実質的な共有財産と見られるからです。
実質的な共有財産なので名義人に無断で引き出しても直ちに違法ではないということですね。勿論限度はあります。

 

また、離婚の際には、他方配偶者の預金の無断引き出しは、婚姻費用との関係で処理される余地もあります。
そういう経験もありました。婚姻費用を支払ってもらえなかったので引き出して使ったのであるから婚姻費用の支払いと同視して財産に戻さないという扱いです。
調停段階のことですが。

 

さらに、相続の場合には被相続人の認知症がある場合などある程度期間を遡って預金の引き出し行為を問題とできますが、離婚の場合にはなかなか期間を遡るのは難しいです。
かなり前の引き出しであると突っ込み難い、あるいは突っ込まれ難いでしょう。財産調査の問題になるのだろうと思います。

 

他方配偶者名義口座からの多額の預金の引き出し行為は、褒められた行為ではないのは勿論ですし、トラブルの元になる行為ですのでお勧めはしません。勿論、やむを得ない場合もあることは承知しております。そういう場合には、あとで文句を言われることを承知で説明の準備をしてください。

 

また、婚姻費用をもらう立場からすれば、いつでも通帳、カードの紛失届をして持ち出した通帳、カードを利用できなくされてしまうことを念頭に置かなければなりません。

やはり、婚姻費用はできるだけ早くかつ正式に請求するべきでしょう。

 

子供名義の通帳、カードを持っていくという例もありますね。

少なくとも、子供名義の預金の原資が夫婦の収入であり、口座の管理も親がしているという典型的な例では、夫婦共有財産として清算的財産分与の対象となりますね。

逆の典型的なケースは、子供のお年玉、小遣いを貯めている通帳ですね。

微妙なケースもあり、その場合にはケースバイケースの判断になります。

学資のために積み立てていた等の預金の目的な財産分与とは直接の関係はありません。

財産分与は財産の整理の問題、学資は離婚後の養育費の問題と、別の問題となります。勿論、協議離婚、調停離婚であれば、養育費の問題と絡めて、自由に合意により解決ができます。

 

離婚問題は、判決による解決になると柔軟な解決ができない、かつケースバイケースの判断がなされて読みがたいという点が否めません。
できれば相応が譲り合って円満な解決を図れればいいとは思います。
そういうこともあり、離婚につきましては、調停段階では勿論、訴訟になっても一般の訴訟よりも和解的解決が図れるかどうか促されます。

 

個人的には、離婚の問題は、(最後までは)すべからく争うのではなく、主張に優先順位をつけて話し合いに臨む方がベターだと思います。
勿論、判決で片を付けないといけない相手というのも珍しくはないのですが・・・

 

離婚婚姻費用養育費財産分与慰謝料請求等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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民法改正講座4 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。

大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが説明させていただいております。

 

今回は時効の話ですね。時効は馴染みがある言葉だと思います。

 

刑事で言われる場合は公訴提起時効のことですが、民事で言われる時効は、取得時効と消滅時効です。

 

時効の援用(145条)】

時効の援用とは消滅時効、取得時効を主張することですね。援用により権利が消滅あるいは権利を取得します。

改正前では、「当事者」が時効を援用できると規定されていましたが、改正法は、「当事者」のほかに「消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有するものも含む。」と判例法理に従って明確にされました。

 

【裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新(147条)】

時効の完成猶予について旧条文を整備したものです。

時効の完成猶予は時効の停止と言われていた概念です。時効期間の進行が止まることですね。

裁判上の請求(訴訟等です)、支払督促、和解・調停手続、破産手続・再生手続・会社更生手続参加があれば、それが終了するまで時効期間は経過しません。

 

確定判決等によって時効期間が延びることなく手続が終わった場合には手続が終わってから6カ月は時効が完成しません。

時効が完成しそうなときは、時効完成を阻むにはとりあえず訴訟を提起する等をしないといけません。

 

確定判決等によって権利が確定したときは、上記手続が終了した時から新たに時効の進行が始まります。

消滅時効を援用して債務整理する際には、確定判決等の債務名義があるかどうか確認をしないといけませんね。

 

【強制執行等による時効の完成猶予及び更新(148条)】

こちらも強制執行等と時効の完成猶予の関係を整理した条文ですね。

強制執行、担保権の実行、競売、財産開示手続中は時効の完成が猶予されます。手続が取り消されて終了した場合には終了から6か月は時効が完成しません。

同手続が終わった時は、その時から新たに時効が進行します。ただし、取消しによって終了した場合にはその効果はありません。

 

なお、強制執行が空振り、あるいは費用を支弁するほどの物がなく、取下げられたため手続が取り消された場合の時効の進行については争いがあります。

ケースバイケースの判断にならざるを得ないですね。

 

【強制執行等による時効の完成猶予及び更新(149条)】

仮差押え、仮処分は改正前では時効中断事由(時効がリセットされる事由)とされていたましたが、終了から6か月間時効が完成しない時効の完成猶予事由に変更となりました。

 

【催告による時効の完成猶予(150条)】

催告は、裁判外での請求行為、請求書の送付等だとイメージしてください。

規定が整理されました。

催告があった場合には、その時から6ケ月を経過するまで時効は完成しません。

催告によって時効の完成が有訴されている間に再度の催告をしても時効の完成猶予の効力がないという判例法理も明文化されました。

 

催告を繰り返して時効の完成を延ばすことはできません。完成猶予中に訴訟等をしなければなりませんね。

 

【協議を行う旨の合意による時効完成猶予(151条)】

新しい制度ですね。

権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、時効完成が猶予されます。

合意があった時から1年を経過した時

当事者間で定めた協議期間

協議続行拒絶通知の時から6か月

のいずれか早い時までです。

 

再度の合意もできます。時効完成が生ずるべき時から通算5年までです。

催告による時効完成猶予との併用はできないとされています。

上記合意は電磁的記録によってすることもできます。

 

このような合意ができる場合には時効が完成しそうだからといって急いで訴訟を提起する必要はないということですね。

 

【承認による時効の更新(152条)】

規定の整備だけですね。

承認は時効の中断事由でしたが、更新事由と改められました。

承認があったかどうか争われる例も珍しくありません。一部弁済をすれば原則承認になりますが、例外的には承認と見られないケースもあります。

 

時効の完成猶予または更新の効力が及ぶ者の範囲(153条)】

改正前148条は時効中断事由は当事者及び承継人の間にのみ効力を有するとしていましたが、時効の更新(中断が更新と変わりました)及び完成猶予にについて同様の規定が整備されました。

 

【債権等の消滅時効(166条)】

割合大きな改正ですね。

改正前は、消滅時効は権利行使ができるときから10年間、所有権以外の財産権は20年間が時効期間でした。

改正により、債権は、

債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき

または

権利を行使することができるときから10年間行使しないとき

に消滅します。

 

後者は客観的な権利行使可能時点です。

前者は主観的な権利行使可能時点です。

通常は両者が一致しますね。結局、債権は5年が原則と考えておいた方がいいでしょう。

 

あわせて、商事消滅時効5年(旧商法522条)が削除され、商事、民事とも統一的な判断がなされることになります。

 

さらに、改正前170条から174条の短期消滅時効が削除されました。債権の種類によっては、1年から3年という短期消滅時効が定められていたのです。

統一的な規定にしたため、短期消滅時効に該当する債権に該当するか、商事債権に該当するかどうかを考えなくても済みます。

 

【人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効(167条)】

実質的に債権の消滅時効は短くなりました。

そこで、人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の特則が設けられています。

債権者が権利を行使できることを知った時から10年間行使しないとき

または

権利を行使することができるときから20年間行使しないとき

に消滅します。

 

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