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旧コラム 身近な法律知識: 2010年12月

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「車は走る凶器?」  【身近な法律知識】

弁護士の仲田誠一です。catface

 

 

年末もいよいよ押し迫ってきましたね。
例年,年末にかけて交通事故が増えるそうですね。日没が早くなったり,お酒を飲む機会が増えるからのようです。beer

飲酒運転は絶対に止めてくださいsign01

 

 

 

◆ 車は「走る凶器」
ところで,法曹界では,車は「走る凶器」とよく言われます。
近代法が整備された頃にはまだ馬車の時代でした,車がなければ,悲惨な交通事故も当然ありません。つまり,自動車は人などにぶつかったら凶器になります(実際に自動車を凶器に使った事件もありますね),だから「走る凶器」なのです。

なぜ車が公道を走ることが許されているかというと,それは便利だからです。危険なだけのものであったら,法律で使用を禁止されるところですが,社会的に有用であるため,利用が許されているのです。車がない社会なんて想像できませんからね。



◆ 「危険責任」
危険な物を利用する者は,その利用に伴って生じた損害の責任を負うべきだ!という考えを「危険責任」論と言います。社会的に有用(必要)だから使ってもいいが,人に迷惑をかけたら危ないものを使っていたあなたが悪いから責任も取ってね,ということです。

危険責任の考えが背景にもあって,「車」対「人や自転車など」の事故については,そもそも車の責任の方が大きいと見られてしまいます。
具体的には,「過失割合」の話になります。事故の形態によって,ある程度の「過失割合」が決まっていますが,車側が高い設定になっています。



◆ 自賠責保険の存在意義
「自動車による交通事故の責任は,危険な物を利用している車の運転手側に多く負わせるべきだ」,といっても,運転手にお金がないと被害回復は結局実現しません。
そのためにあるのが,強制加入の自賠責保険制度です。
つまり,被害者に最低限の被害回復をする用意(それが自賠責保険)ができていなければ,自動車を運転させないということです。



◆ 任意保険にも入ってください!
それでは,自賠責保険に入っていれば安心なのでしょうか?
先ほど,自賠責保険は「最低限」の被害回復を保障するものであるということを書きましたが,「最低限」では足りません。

自賠責ではそもそもカバーできない被害弁償もあります。また,大きな事故だと金額も十分ではありません。

お金を惜しんで任意保険に入らなかったばっかりに,交通事故を起こして大変な目に遭う方も少なからずいらっしゃいます。
また,それではそもそも被害者に対して申し訳が立ちません。
さらに,事故についての刑事事件でも,被害弁償をできたかどうかは重要な意味を持ちます。任意保険に入っていない場合には,大きな被害弁償をすることができないのが普通であり,そのため刑は重くなる傾向があります。

任意保険,しかも全損害をカバーする保険に入っておかないと,あなたの人生が台無しになるだけでなく,被害者や遺族にも二重の苦しみを与えてしまうことになります。

私は,保険会社の代理人でも,親族に保険屋さんがいるわけでもないのですが,任意保険加入は,「走る凶器」を利用するドライバーの最低限のマナーだと思っています。
相談者の中に任意保険に入っていない方が少なからずいらっしゃるのに驚いているところです。



◆ 破産をすれば損害賠償義務は免れる?
任意保険に入っていなかった,損害賠償請求をされたけど,そんなに大きな金額を払えるわけがない,となった場合,自己破産で逃げられるでしょうか?

そう簡単ではありません。

破産には,「免責不許可事由」というものがあり,それに該当すると破産をしても債務から逃れることはできません。

人身事故による損害賠償債務は,その「免責不許可事由」に該当するおそれがあります。
また,その調査のため「破産管財人」(弁護士から裁判所が選任します)が選任される可能性が高く,その際には裁判所に納める多額の「予納金」が必要となります。



◆ 最後に
皆が自動車は危険なものであるという認識を共有できれば,と願って止みません。
最近は,自転車の事故も問題視されて来ており,多額の損害賠償義務を負うケースもあるようです。自転車も,もちろん,人にとっては「走る凶器」と言えるでしょう。自転車の保険が整備されていない現状はもどかしく思います。rvcar

 


「契約」とは?なぜ守らないといけない? 【身近な法律知識】

弁護士の仲田誠一です。

本当に寒いですね。
弊法律事務所と裁判所との10分程度の往復も辛いです。口に出すとよけい寒くなるのでいけないとは思いつつ、人に会うとついつい口に出てしまいます。

これから、身近な、しかもよく考えてみると難しいという法律の問題を【身近な法律知識】として随時紹介していきたいと思っています。
今回は、「契約」についてです。契約とは何か?という問題は、初歩的な話のようにも感じられるでしょう。でも、実は契約の成否や内容が裁判で争われるケースが結構多いんですよ。

契約とは何でしょう?簡単なようでしかし言葉で説明しようとすると難しいんです。
「合意」=「契約」でしょうか。
しかし、世の中の「合意や「約束」のすべてが法的に「契約」と評価されるわけではありません。
デートする「約束」などは法的には「契約」とは言えないようです。

では、「約束」あるいは「合意」と「契約」はどう違うのでしょうか?
難しい言い回しで恐縮ですが、合意内容が実行されなければ法的な手段によって強制される義務(権利)がある「合意」だけが法的に「契約」と評価されるのです。

次に、契約はいつ成立するのでしょうか?
「契約書」が作成されないと契約は成立しないと考える方がいらっしゃいますが、そうではありません。
契約というものは、原則として「申込」と「承諾」が合致すれば成立するのです。 一部の契約を除いて、口約束でも「契約」が成立します。
ただし、あとで言った言わないのトラブルになりかねません。そのため、契約書を作成して、証拠として残すのです。

もっとも、いつ申込と承諾が合致したのか、と評価できるかはなかなか難しい問題です。

例を1つを挙げてみましょう。
住宅を借りる場合には、下見、申込証拠金、重要事項説明、契約書作成、引渡し、といった流れになると思います。
どの段階で契約が成立するのでしょう?

不動産仲介業者へのアンケートの集計結果を見たことがあるのですが、業者の意見もまちまちでした。
契約書作成あるいは引渡しの段階で契約が成立していること、下見の段階では契約が成立していないことは問題ないでしょう。
それでは、申込証拠金を出して物件を仮押えしてもらったときや重要事項説明を受けたときはどうでしょう?

なかなか難しい問題ですが、法的に言うと、契約には、その契約類型ごとに要素(絶対に決まっていないといけない事項)があります。
それらの要素について合意した段階で契約が成立したと評価されることになると思います。

上の例で言うと、建物賃貸借の要素とは、
 ①主体(借主・貸主)
 ②物件(の特定)
 ③賃料
 ④賃貸借期間(返還合意)
といったところです。

契約の成立は、具体的な事情によって、それらがどの段階で合意されたか判断されることになります。

このように考えると、建物賃貸借契約では、少なくとも重要事項説明を受け了承すれば、契約成立と言っていいでしょう。重要事項説明にはそれら要素がすべて含まれているからです。
もちろん、ケースによってはその前に契約の成立が認められるケースもあります。

このように、具体的事情によって、また契約の種類によって、契約の成立時期は異なります。そのため、契約の成否が裁判で争われることが稀ではないのです。

今回は少し小難しい話で退屈でしたでしょうか。契約にまつわる問題はたくさんありますので、機会を見つけてご紹介していきたいと思います。


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