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旧コラム 身近な法律知識: 2019年7月

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民法改正講座7 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
詐害行為取消請求の条文が続きます。
かなりの条文が新設されるなど、旧法では簡単だった詐害行為取消請求の条文が判例法理の明文化を中心に整理されています。
 
【詐害行為取消請求(民法424条)】
従来の詐害行為取消権が整理されました。
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができます。ただし、その行為によって利益を受けた受益者が行為の時に債権者を害することを知っていた時に限ります。
財産隠しや執行逃れ的な行為に対する債権者の対抗措置です。
最近は会社分割や事業譲渡などが対象とされることを見ますね。
破産手続における否認と同じ考え方です。
まず、詐害行為取消請求という名称になっていますね。
また、取消請求の対象が、法律行為から行為に変わっています。法律行為以外の債務承認や法定追認行為などの事実行為も取消しの対象となると考えられるからと説明されています。
さらに、3項で、判例法理に従い、債権者の有する債権(被保全債権)は詐害行為の前の原因に基づいて生じたものでなければならないことを明文化しています。
 
【相当の対価を得てした財産の処分行為の特則(民法424条の2)】
新設規定です。
詐害行為取消請求における要件の「債権者を害する」(詐害性)の判断は難しいです。
相当の対価を得てした財産尾処分行為であれば財産がプラスマイナスゼロだから問題がないかというとそうではありません。
不動産をお金に換えると費消・隠匿しやすくなりますよね。
改正法では、判例などに沿って、相当の対価を得てした処分行為が詐害行為取消請求の対象となる要件を定めています。
①財産の種類の変更により隠匿、無償供与その他の詐害行為となる処分をするおそれを現に生じさせること。
②債務者が行為当時隠匿など詐害行為となる処分をする意思を有していたこと。
③受益者が、行為の当時、債務者がそのような意思を有していることを知っていたこと。
の3要件です。
破産法の否認権と同様に詐害行為取消請求の要件を明確化したと説明されています。
倒産危機にある会社のM&Aなど実務に影響がありますかね。
 
【特定の債権者に対する担保の供与等の特則(民法424条の3)】
新設規定です。
こちらも詐害行為取消請求の要件の明確化ですね。
不公平な弁済行為等を偏頗行為といいます。破産法における否認権の対象にもなりますが、同じように詐害行為になるのですね。
担保供与または債務の消滅行為(弁済など)は、
①債務者の支払不能状態の時に行われたこと
②債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたこと
が要件となり、詐害行為取消請求の対象となります。

それらの行為が、債務者の義務に属さず、または時期が債務者の義務に属しない場合には(繰り上げ返済などですね)、
①支払不能前30日以内に行われたこと
②債務者と受益者の通謀
という緩和された要件で認められます。

経済的危機状態においては、債権者平等という観点も考慮しないといけません。特定の債権者(仲間内や親族など)に優先的に有利な行為をすると、詐害行為取消請求や否認権の対象となりうるのです。
 
【過大な代物弁済等の特則(民法424条の4)】
新設規定です。
こちらも詐害行為取消請求の要件の明確化ですね。
代物弁済という言葉をご存知でしょうか。
典型的なものは、金銭債務の弁済として金銭を弁済する代わりに不動産や物を譲渡する行為です。
弁護士も和解の際などで使うことがあります。
債務の額と物の価値がぴったり一致することはなかなかないですね。代物弁済はそれでも有効です。
ただ、過大な代物弁済をすると他の債権者が害しますね。
そこで、詐害行為取消請求の要件に該当する場合は、消滅した債務額を超える部分については詐害行為取消権を請求できると規定しています。
破産法と同様の考え方です。
 
【転得者に対する詐害行為取消請求(民法424条の5)】
新設規定です。
詐害行為により処分された不動産が転々流通することはありますね。
不動産などはあまり動かないように思いますが、詐害行為のようなケースでは、様々な登場人物が出てきて所有権が転々することも珍しくありません。
転得者に対する詐害行為取消請求の要件を整理しています。

①受益者に対して詐害行為取消請求をすることができること。
②各転得時に転得者(その前に転得したすべての転得者)が債権者を害すべき事実を知っていたこと。
を要件としています。

判例の考え方が一部変更されていますのでご注意を。
要件が厳しくなりました。
 
ほかにも詐害行為取消請求の条文が続きますが、ごく簡単に済まします。
 
【財産の返還又は価額の償還の請求(民法424条の6)】
新設規定です。
判例法理に従って詐害行為取消請求の効果が整理されています。
取消しだけではなく財産の返還も請求することができ、返還が困難である場合には価額償還を請求することができます。
 
【被告及び訴訟告知(民法427条の7)】
新設規定です。
詐害行為取消請求の被告は、受益者または詐害行為取消請求の相手方たる転得者です。
債権者は、訴訟提起したときは、遅滞なく、債務者に対し訴訟告知をしないといけないと規定されました。債権者代位訴訟と同じ趣旨で、債務者の手続き関与の機会を与えるためです。
 
【詐害行為の取消の範囲(民法424条の8)】
新設規定です。
判例法理を明文化しています。
詐害行為取消請求の対象詐害行為の目的物は可分であるときは自己の債権(被保全債権)の額の限度においてのみ取消しが可能ということですね。
 
【債権者への支払又は引渡し(民法424条の9)】
新設規定です。
判例法理上、債権者は、受益者または転得者に対し、目的物の返還ないし価格償還請求に際し、自己に対する支払あるいは引渡しを請求することができました。それが明文化された形です。
債務者に対する返還を求められるだけではないのですね。
取消権なのに自己に対する支払い等請求ができる点が債権者取消請求権が債権回収の強力な武器である所以です。
 
【認容判決の効力が及び者の範囲(民法425条)】
詐害行為取消請求を認容する判決の確定判決の効力は債務者にも及ぶことが明記されました。
 
【債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利(民法425条の2)】
新設規定です。
詐害行為たる処分行為が取り消された場合、受益者は、債務者に対して反対給付返還請求権があることを明記しています。
民法425条の4にて転得者の場合も同様に規定されています。
 
【受益者の債権の回復(民法425条の3)】
新設規定です。
詐害行為たる債務消滅行為が取り消された場合、受益者の債権者に対する債権は原状回復する旨が明記されました。
民法425条の4にて転得者の場合も同様に規定されています。
 
【詐害行為取消権の期間の制限(民法426条)】
詐害行為取消請求は、詐害行為を知った時から2年以内に、かつ詐害行為の時から10年以内に、訴訟提起しなければいけません。
除斥期間・出訴期間とされており、時効と異なり中断事由がありません。
 
以上が、詐害行為取消請求のお話でした。
 
お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
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民法改正講座6 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
まずは、損害賠償の範囲の話です。

【損害賠償の範囲(民法416条)】
債務不履行に基づく損害賠償の範囲の規定です。
損害賠償は通常損害と特別損害に分かれます。
債務不履行によって一般的に生ずる損害を通常損害、特別の事情によって生じた損害は特別損害ですね。
例えば、債務の履行がされないことによって、債権者の転売利益も失った場合、転売利益は特別の事情によって生じた特別損害と言えるでしょう。
旧法では、特別損害は、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときに損害賠償の対象となる旨規定されていました.
新法では、「当事者がその事情を予見すべきであったとき」という表現に改められました。
具体的な当事者の現実の予見あるいは予見可能性という事実問題ではなく、べき論として予見すべきであったかという規範的評価の問題である旨が明記されたと説明されています。
訴訟で争うときは、微妙な問題なのですが、形式上は、新しい条文に沿った主張をすることになります。
 
【中間利息の控除(民法417条の2)】
新設規定です。
損害賠償額の算定に当たり、将来において取得すべき利益についての損害賠償(逸失利益)、将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定めるにあたっては、中間利息の控除がなされます。
将来の利益を現在に賠償してもらうのですから、あるいは将来の費用を現在に賠償してもらうのですから、将来の利息分は控除するという考え方です。
お金は置いているだけで利息相当額の利益が生まれるという考え方ですね。先に貰うなら利息相当部は控除しないということです。
それが条文上明記されました。
損害賠償請求権が生じた時点の法定利率により中間利息を控除するとされています。
実務上、ライプニッツ係数などを使って計算していた分野です。
なお、法定利率が5%から3%に引き下げになります。
単純に考えて、控除される利息額が減り、その分現在の損害賠償額が高額化します。
 
 
【賠償額の予定(民法420条)】
契約により当事者は債務の不履行について損害賠償の額を予定することができます。
所謂、違約金条項ですね。
旧法では第1項に、裁判所はその額を増減することはできない旨、誤解を招く文言がありましたが、改正により削除されました。
違約金条項は公序良俗違反等で無効になり得ますし、一部無効も考えられ実質減額ということもあり得ますからね。
 
【代償請求権(民法422条の2)】
新設規定です。
債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務者がその債務の目的物の代償である権利または利益を取得した場合には、債権者が当該権利の移転または利益の償還を求めることができるという代償請求権を判例が認めていました。
明文規定がなかったため新設されました。
目的物が滅失した場合の損害保険金が典型例でしょうか。
 
ここからは債権者代位権の条文の紹介が続きます。
 
【債権者代位権の要件(民法423条)】
債権者代位権をご存知でしょうか。
債権者が債務者の資力がない等により債務者の財産保全が必要と認められる場合に、債権(被保全債権)を保全するため、債務者に代わって(代位して)、債務者の権利(被代位債権)を行使する制度です。
実務上そんなに使うことはないですが、よく使う代位登記は似たような考え方に基づきます。
改正により次のとおり要件が整理されました。
 
差押えを禁じられた権利は代位行使できないことが明記されました。債権者があてにする責任財産ではないから当然ですね。
例えば年金受給権です。
 
強制執行により実現できない債権を被保全債権として債務者の権利を代位行使できないと明記されました。
債権者代位権は強制執行の準備として責任財産を保全する制度という建前なので。
 
なお、被保全債権が期限未到来の場合の裁判上の代位の制度は廃止されました。
 
【代位行使の範囲(民法423条の2)】
新設規定です。
判例法理に従い、債権者は被保全債権の範囲でのみ被代位債権を行使できること、すなわち金銭のように被代位権利の目的が可分であるときは、代位債権者は自己の債権の額の限度においてのみ権利を行使できることが明文化されています。
当然ですね。
 
【債権者への支払又は引渡し(民法423条の3)】
新設規定です。
債権者代位権は、債権回収の観点からは、非常に強い効力のある権利です。
金銭請求権、動産引渡請求権を代位行使した場合、相手方(第三債務者)に対し、自分に対する支払い、引き渡しを請求することができるのです。
確実に債権回収が図れますね。しかも、差押えと異なり他の債権者の介入もありません。
このことは判例で認められていましたが、それを明文化しています。
 
【相手方の抗弁権(民法423条の4)】
新設規定です。
債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる、と規定されました。
これも判例法理の明文化です。
抗弁とは、権利の実現を阻む相殺や同時履行などの主張ですね。
非代位権利の債務者は、債権者代位権の行使によって不利な立場に置かれる謂れはありませんから、当然ですね。
 
【債務者の取立てその他処分の権限等】
新設規定です。
判例法理と異なる規定という点で珍しいですね。
判例法理では、債権者が債権者代位権を行使し債務者がそれを知った時には債務者は被代位権利の処分権限を失うとしていました。
これに対しては、債権者代位権は債務者が権利を行使しないときに限って認められるべき、債権者は仮差押えや差押等の保全・執行手続により債務者の処分権限を奪うべき等の反対がありました。
新法は、債権者代位権が行使されても債務者は被代位権利について自ら取立てその他の処分をすることができる。相手方も債務者に対して履行することができると規定しています。
これにより債権者代位権の効力が弱まったと思います。
訴訟をしてもその間に債務者が権利を処分すれば無駄になりますね・・・
 
【被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知(民法423条の6)】
新設規定です。
債権者が被代位権利の行使に係る訴えを提起した時は、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない、とされました。
債権者代位訴訟の判決の効力は債務者にも及びます。
難しい言葉で、法定訴訟担当という概念があります。
そうであれば、債務者に債権者代位訴訟手続きに関与する機会を与える必要があります。
そのため、このような規定が新設されました。
 
【登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権(民法423条の7)】
新設規定です。
弁護士がよく接する場面ですね。
解釈上認められていた登記または登録請求権を保全するための債権者代位権が明文化されました。
 
今回はここまでです。

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広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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民法改正講座5 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。

まず、法定利率が変わります。 
【民法404条(法定利率)】
利息を生ずべき債権について利率に関する合意がない場合には、その利息が生じた最初の時点における法定利率が適用されます。
勿論、無利息貸付等、無償での債権も存在します。
個人間の貸付について「これまでの利息は請求できないのか。」と、質問を受けることがあります。
しかし、利息が生ずべき債権ではない限り、法定利率で利息を請求することができません。
遅延損害金は約束がなくとも請求できますが、利息は約束がないと請求できないのです。
貸付であれば、利息が発生することが契約書に明記される等が必要です。
 
法定利率が、5%⇒3%となりました。
近時の低金利に合わせた形です。それでも高いような気もするかもしれません。
 
かつ、法定利率が、3年毎の見直しにより変更されることになりました。
過去5年間の短期貸し付けの平均利率として法務大臣が告示する基準割合を基準にして調整する形です。条文を見てもイメージが湧き難いところです。慣れないといけませんね。
ただ、1%未満の端数は切り捨てる調整ですので、簡単に変動するわけではありません。
 
あわせて商事法定利率6%の商法規定が削除されました。商人が貸すのと個人が貸すのとでは異なった利率だったのですが、統一されます。
施行後は、弁護士が訴状を書く際に、商事利率が適用されるか民事法定利率が適用されるか悩まなくてもよくなります。
 
金銭消費貸借契約(お金の貸し借り)では、利息の支払合意があるのであれば利率に関する合意も当然ありますよね。
利息の支払い合意がなければそもそも利息は発生しないことは上述したとおりです。
法定利率はあまり関係がないじゃないかと思われるかもしれません。
 
実は、法定利率は実はいろいろなところで出てきます。
遅延損害金の利率や、不当利得の悪意の受益者に対する利息、損害賠償請求権の行使の際の中間利息の控除にも影響を及ぼします。
弁護士も訴状にて法定利率を請求することが多いのです。
特に中間利息の控除の考え方は損害賠償以外でも利用されます。要するに現在価値の計算ですからね。影響が大きいのではないでしょうか。

次に履行不能のお話です。履行ができない債務を内容とする契約をした場合ですね。
 
【履行不能(民法412条の2)】
1項 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
2項 契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。
 
履行不能に関する新設規定です。
1項では、履行不能の効果として、債権者が履行請求権を失うことが明文化されました。
考え方は変わっていません。履行が不可能で会ったら履行を請求しても意味がないですからね。勿論、履行を不能にした責任のある当事者は損害賠償義務を負います。
 
2項では、契約のはじめから不能であった場合(「原始的不能」といいます。)でも、契約は有効に成立したとの前提で、債務不履行による損害賠償請求が可能であることが明文化されました。
従来は原始的不能の場合には契約が無効である、そのため給付すべき者に過失がある場合には契約締結上の過失責任として損害賠償責任が生じうるとされていました。
しかし、契約締結上の過失責任は、債務不履行責任と異なって、履行利益の賠償が含まれていない信頼利益のみとされています(儲けがなくなった損とイメージすればわかりやすいでしょうか)。
履行利益、信頼利益は、弁護士泣かせの概念で、具体的事案に当て嵌めると非常に判断が難しい場合もあります。
原始的不能か後発的不能かの違いは偶然の事情によるのに損害賠償の範囲が違うとおかしいということで、効果を同じにしたようです。
 
続いて受領遅滞のお話です。債務の目的物の受取を拒んだ場合等ですね。

【受領遅滞(民法413条)】
受領遅滞という言葉をご存知でしょうか。
履行の提供をする側が怠った場合は履行遅滞ですね。わかりやすいです。
その反対に履行の提供を受ける側が受けなかった場合が受領遅滞です。
受領遅滞の効果が整理されています。
そんなことあるのか、と思われる方がいらっしゃると思います。
契約内容に争いがあるなどの思惑があって履行の提供を受けないことは珍しくありません、弁護士はけっこう出逢う事態です。
 
まず1項で、受領遅滞の効果として、債務の目的物が特定物の引渡しであるときは、履行の提供後は「自己の財産に対するのと同一の注意」をもってその物を保存すればいいとされています。
特定物ではなく種類物が目的の場合(例えば缶ジュース)には、保存ということ自体考えられないですね。
ただ、実務上は、いつの時点で特定物になるかは難しいところです。汎用性がある物も(これは種類物といいます。)、どこかの過程で特定されることになりますね。
「自己の財産に対するのと同一の注意」は善良な管理者の注意(善管注意義務)を軽減する際に使われる言葉です。保存義務の程度を軽減する意味です。少し乱暴かもしれませんが、軽過失があっても責任が生じるのが善管注意義務、そうではないので自己の財産に対するのと同一の注意というイメージでしょうか。
 
次に2項では、履行に要する費用が増えた場合には、増加額は債権者の負担とすることが明文化されました。
 
【履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由(民法413条の2)】
新設規定です。
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務の履行が不能となった場合、履行遅滞の間であれば債務者の責めに帰すべき事由によるもの、受領遅滞の間であれば債権者の責めに帰すべき事由によるもの、と各みなすとされています。
従来の考え方を明文化したものです。

今回のお話した内容は実務にも影響がある改正点かと思います。
 
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広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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