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旧コラム 離婚問題: 2019年6月
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別居時に一方配偶者が持ち出した財産 [離婚問題]
広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
離婚に伴う財産分与のお話です。
別居時に一方配偶者が持ち出した財産のお話をします。
よくあることです。
財産分与の基準時は別居時が基本です。
別居時に存在した財産をベースに財産分与額が算定されます(別居時の財産を半分にするというイメージです)。
夫婦共同生活により形成された財産を清算するという清算的財産分与の要素が財産分与の基本だからです。
例えば車を持ち出したという場合は簡単です。
当然財産分与の対象となります(勿論、どうやって整理をするのか、車検の問題、保険の問題も絡んで面倒ですが)。
よく相談を受けるのは、別居前に預金から多額のお金が引き出されているという例です。
勿論、引き出されたお金が別居時に残っていたということであれば財産分与の対象となることは当然です。
よくわからないときが困りますね。
別居時に本当に近い時期の引き出しであれば、引き出した配偶者が何に費消したのか合理的な説明ができない限り、そのまま残っていたとみられる可能性が相応にあるでしょう。
また、多額の金銭が生活費に必要とは思われませんから金額が大きければお金が残っていると判断される方向になるでしょう。
ケースバイケースの判断になりますね。
別居直前の預金の引き出しは相続直前の預金の引き出しと考え方が近いですね。
相続直前の預金の引き出しの場合には、合理的な説明が引き出した相続人から出て来ない限り、遺産として残っていた、あるいは被相続人に無断でなされた不法行為として損害賠償請求権が遺産である、といった扱いになります。
ただ、離婚の際には、他方配偶者の預金の無断引き出し行為は直ちには不法行為になりません。実質的な共有財産と見られるからです。
実質的な共有財産なので名義人に無断で引き出しても直ちに違法ではないということですね。勿論限度はあります。
また、離婚の際には、他方配偶者の預金の無断引き出しは、婚姻費用との関係で処理される余地もあります。
そういう経験もありました。婚姻費用を支払ってもらえなかったので引き出して使ったのであるから婚姻費用の支払いと同視して財産に戻さないという扱いです。
調停段階のことですが。
さらに、相続の場合には被相続人の認知症がある場合などある程度期間を遡って預金の引き出し行為を問題とできますが、離婚の場合にはなかなか期間を遡るのは難しいです。
かなり前の引き出しであると突っ込み難い、あるいは突っ込まれ難いでしょう。財産調査の問題になるのだろうと思います。
他方配偶者名義口座からの多額の預金の引き出し行為は、褒められた行為ではないのは勿論ですし、トラブルの元になる行為ですのでお勧めはしません。勿論、やむを得ない場合もあることは承知しております。そういう場合には、あとで文句を言われることを承知で説明の準備をしてください。
また、婚姻費用をもらう立場からすれば、いつでも通帳、カードの紛失届をして持ち出した通帳、カードを利用できなくされてしまうことを念頭に置かなければなりません。
やはり、婚姻費用はできるだけ早くかつ正式に請求するべきでしょう。
子供名義の通帳、カードを持っていくという例もありますね。
少なくとも、子供名義の預金の原資が夫婦の収入であり、口座の管理も親がしているという典型的な例では、夫婦共有財産として清算的財産分与の対象となりますね。
逆の典型的なケースは、子供のお年玉、小遣いを貯めている通帳ですね。
微妙なケースもあり、その場合にはケースバイケースの判断になります。
学資のために積み立てていた等の預金の目的な財産分与とは直接の関係はありません。
財産分与は財産の整理の問題、学資は離婚後の養育費の問題と、別の問題となります。勿論、協議離婚、調停離婚であれば、養育費の問題と絡めて、自由に合意により解決ができます。
離婚問題は、判決による解決になると柔軟な解決ができない、かつケースバイケースの判断がなされて読みがたいという点が否めません。
できれば相応が譲り合って円満な解決を図れればいいとは思います。
そういうこともあり、離婚につきましては、調停段階では勿論、訴訟になっても一般の訴訟よりも和解的解決が図れるかどうか促されます。
個人的には、離婚の問題は、(最後までは)すべからく争うのではなく、主張に優先順位をつけて話し合いに臨む方がベターだと思います。
勿論、判決で片を付けないといけない相手というのも珍しくはないのですが・・・
離婚、婚姻費用、養育費、財産分与、慰謝料請求等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/smart/
(なかた法律事務所) 2019年6月13日 09:43
財産分与における特有財産 [離婚問題]
広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
離婚のご相談の際、「これは特有財産ではないか。」と質問される方が増えてきた印象です。
今は難しい本を読まなくても検索すれば情報が出てくるので、皆さんの法律の知識が増えていますね。
特有財産とは、
夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産
婚姻中に相続・贈与等他方配偶者とは無関係に取得した財産
がメインですね(民法762条1項)。
衣服等明らかに一方配偶者の専用品として使用されている物も含むとも説明されますが、こちらは物によるのでしょうね。財産的価値がある物は特有財産と言い難いことも多いでしょう。車などは仮に専用品でも財産分与の対象となるのが一般的でしょう。
離婚の際の財産分与は、夫婦共同関係の基で形成された財産を精算することが主要目的です。これを清算的財産分与と言います。
清算的財産分与の対象は婚姻期間中に形成した財産ではなく、婚姻(内縁関係含む)から別居時までに形成した財産になります。
だから財産分与の基準時は別居時と言われます。それ以降は夫婦共同関係が基本的に存在しませんから。ただし、家庭内別居の際には基準が難しいのです(財産分与の基準時は離婚時とされるかもしれません)。
清算的財産分与の理屈から考えると、夫婦共同関係に基づかずに形成された特有財産は、原則、財産分与の対象とはなりません。
典型例は、婚姻前から貯めていた預貯金、自宅不動産購入の際に一方配偶者がその親から受けた贈与でしょうか。
特有財産は清算的財産分与の対象とならないとの理論自体は明確ですが、実務上の扱いは、そう簡単ではありません。
まず、特有財産かどうかということ自体が争われます。
例えば金銭の場合、独身前のお金、贈与を受けたお金がそのままの形で他のお金と混ざり合うことなく残っているのは稀でしょう。お金に色はついていませんから混同すると特有財産の特定が難しいことになります。
親からの贈与も一方への贈与なのか双方への贈与なのか判別が難しいことがあるでしょう。お金がいろんな物に変わっている場合も多いですね。
特有財産の主張をする場合には、どうしても証拠が必要です。
夫婦のいずれに属するか明らかではない財産はその共有に属するものと推定される(民法762条2項)とされているからです。推定を破る昔の通帳や贈与・相続時の通帳、それが現在の形になっている証拠ですね。
特有財産かどうかがゼロサムで判定されるのではなく、特有財産が原資になっていると思われる割合とそうでない割合を寄与度として調整して折り合いが付けられるケースもあります。
特有財産が他の財産と明確に区別できる場合も、他方配偶者がその価値の減少を防止し、その維持に寄与した場合には、例外的に財産分与の対象となり得ます。
分与割合は0.5とはいかないですが。具体的ケースにより寄与度は変わります。
親から贈与されたあるいは相続で引き継いだ不動産の維持管理の他方配偶者による寄与が分かりやすいですね。
預金も他のお金を遣ったために残っているという理屈で他方配偶者の一定の寄与があったとみられることもありました。
具体的なケースごとの判断になるので、特有財産の定義に当たるから財産分与の対象とはならないと機械的に考えることはできないのです。
勿論、特有財産は清算的財産分与の対象とならないという原則がスタートです。
次に、離婚に伴う財産分与には、清算的財産分与の要素だけではなく、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与という要素も考慮されます。
扶養的財産分与というのは他方配偶者が生活基盤に乏しい場合などに考慮される要素です。
慰謝料的財産分与というのは文字どおりです(慰謝料を別途支払う場合には考慮されませんね)。
そのため、特有財産も扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の観点から財産分与の対象となることはあり得ます。勿論、分与割合は0.5とはいかないでしょうが。
特有財産と言えば、住宅を購入する際に、親からの贈与や独身時代のお金を頭金にしたという主張がよくされます。
自宅の財産分与に当たっては当然考慮されるべきことです。
その場合、購入費に占める特有財産が原資の頭金の割合が当該配偶者の寄与度にプラスされて財産分与割合が算定されるのがスタンダードでしょうか。
今回は、離婚に伴う財産分与でよく問題となる特有財産についてお話をいたしました。
離婚問題は杓子定規には進めることができません。他の問題でも多くは、原則はありながら、個別具体的な判断がなされます。
離婚、婚姻費用、養育費、財産分与、慰謝料請求等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
(なかた法律事務所) 2019年6月 5日 09:35
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