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旧コラム 相続問題: 2019年2月

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相続から長期間経った相続放棄 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。


今回の相続問題コラムは、相続から長期間経てからの相続放棄のお話です。


最近被相続人が亡くなってから長期間(20年以上)経った相続放棄申述をお手伝いしました。

 

相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(「熟慮期間」といいます。)におこなわないといけません、事前に申請をすれば3か月の期間を伸長してくれます(民法915条)。

 

「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、判例上、相続人が相続開始の原因たる事実の発生、かつそのために自己が相続人となったことを覚知した時を指します(死亡かあるいは先順位相続人の相続放棄ですね)。

相続人が何人かいるときは、各人がそれぞれ相続人となったことを覚知した時になります。誰かが知っていたとしてもその人が知らなければ関係ありません。

 

かつ、判例で、さらに緩和されています。

3か月の熟慮期間は、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識しうべき時から起算されるとされているのです。
相続人となったことを知った時から3か月を経ていても相続放棄ができるケースが認められているのです。

 

亡くなったことは知っていたけど、遺産も債務もわからないし放っておいたところ、急に債権者から相続人に対する督促状が来た場合が典型例です。
実務上も、珍しくありません。その場合には、督促状が来てから3か月以内に相続放棄をすれば家庭裁判所が相続放棄申述を受理してくれます。
勿論、その辺の事情を説明しないといけませんし、督促状などの資料も提出します。イレギュラーな事例なので弁護士に代理してもらった方がいいかもしれません。

 

相続人が被相続人の事情をどの程度知っていれば相続放棄申述が制限されるかは、ケースバイケースかつ微妙な問題です。
典型的な、同居もしておらず、何も相続手続をしていない例では、これまで問題なく相続放棄申述が受理されています。

 

ただし、理屈上は、相続放棄申述受理証明を貰えれば解決するということではありません。実は、相続放棄の法的効果は相続放棄申述受理によっては決まらないのです。

放棄の法的効果は、債権者が放棄した相続人に対して、貸金返還請求訴訟などの訴訟を提起した際に、その中で判断されることになります。

 

だからリスクは残るのですね。
ただし、相続放棄申述が受理した旨を債権者に通知すると、通常はそれ以上突っ込んでくることはありません。
そのため、実務上、あまり細かい所が問題になることはありませんし、ひっくり返されるリスクが大きいとも言えません(なお、当職は今まで1度も債権者から突っ込まれたことはありません)。

 

勿論、相続財産の処分行為など、これは相続放棄ができないなという事例もあります。そうでない限りは、とりあえず相続放棄申述受理をしてもらえればいいという意味です。

 

冒頭の事例は、被相続人が死去されて20年以上とめったにお目にかかれない期間経ていた事例でした。

 

実家とは疎遠で、被相続人が亡くなったことも御存じなく、他の相続人が相続放棄をしていて、今になって突然役所から被相続人の固定資産税の滞納金の請求が来た例でした。

 

何が困ったかというと全く資料、記憶もない点でした。役所からの通知内容を基に、何とか最低限の提出資料を揃えることができました。

 

また、理屈上は、相続放棄申述が許される事例ですが、事実上あまりにも相続発生から長期間経ているため、手続がスムーズに進むのか危惧がありました(かつ、遠方の家庭裁判所でしたので来てくれと言われると大変だなと思っていました)。

 

この点は、事情をきちんと裁判所に説明する書面を作成し、スムーズに相続放棄申述受理証明書をもらうことができました。

 

少し変わった事例でしたのでお話をさせていただいた次第です。

 

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広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

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相続人がいないときの相続財産管理人とは [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の相続問題コラムは、相続人がいない場合あるいは相続放棄によりいなくなった場合に選任してもらうことがある相続財産管理人についてのお話です。

みなさん相続財産管理人をご存知でしょうか。

 

相続財産管理人の選任の例が増えているようです。身寄りのいない人が増えてきているのだろうと思います。

 

相続財産管理人とは、家庭裁判所に選任さえた相続財産の管理をする者です(民法957条)。相続財産につき、法定代理人として管理、清算することになります。

 

「相続人のあることが明らかではない」ときに、「利害関係人」または検察官の請求によって家庭裁判所が選任します。

 

当職も何件か家庭裁判所に選任されて相続財産管理人になったことがあります。

 

どのような場合に選任が請求されるのでしょうか。

 

典型的な例では、相続人がいない方が亡くなった場合、あるいはすべての相続人が相続放棄をして相続人がいなくなった場合です。

相続財産に利害関係がある特別縁故者や債権者などが利用するケースが多いでしょう。

成年後見人が被後見人の死去の引継ぎとして申し立てた例も経験しました。

 

「相続人のあることが明らかではない」とは、相続人の存否が不明なことをいいます。


典型例は、戸籍上相続人がいない、あるいはその皆が相続放棄した場合ですね。

ほかにもいろいろなケースで相続財産管理人選任ができるかどうかの議論があるところです。


なお、相続人がいるがその相続人が行方不明な場合は、不在者財産管理人の選任あるいは失踪宣告の手続になります。
 

「利害関係人」とは

利害関係人とは、相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者です。

特別縁故者、相続債務者、相続債権者、担保権者、事務管理者(遺産を管理している人などです)、受遺者、遺言執行者、相続財産の共有持分権者、被相続人が相続分を有する遺産の共同相続人、国・地方公共団体などが挙げられています。

 

相続財産管理人の仕事は、いろいろあります。
 

まず、財産目録を調整して家庭裁判所に提出しなければなりません(民法953条)。選任後1カ月以内ということで忙しいです。
相続放棄をされた方など関係者のご協力が必須です。関係者との面談や現地調査も必要です。銀行の調査もしないといけません。


そして、財産の管理をします。財産の把握が大変なケースもあります。
田舎の山林・田畑の位置確認等が大変だった経験がありますね。
何度か現地調査をしたり、近隣の親戚の方に教えてもらったりしました。


時には売買などの処分行為もすることになりますが、その際には家庭裁判所の許可が必要です。
経験した例では、売買だけではなく、古家の解体をしたり、道路にはみ出ていた物を撤去するような仕事もしました。
田畑は大変ですね、農業委員会に問い合わせるなどして誰か引き継いでくれないか探すことになります。


相続債権者に対しては、請求申出の催告を公告あるいは知っている債権者に対しては個別にしないといけません(民法927条)。

相続人捜索の公告の申立ても家庭裁判所にします(民法958条)。
相続人捜索の公告満了後特別縁故者からの分与申立てがあった場合には、その対応もありますね。


財産を処分して、相続債務を返済しても、かつ特別縁故者に分与しても、残余財産がある場合もあります。
その場合には、国庫に帰属させることになります。

基本的には、現金化して国庫帰属をするのですが、処分できない不動産はそのまま財務局に引き継ぎます。
昔は財務局がなかなか引き取ってくれず、不動産を残したまま手続を終了させる形が多かったようですが、最近は、お墓がある、所有関係が明確ではないといった不動産以外は引き取ってくれるようになりました。


けっこう大変な仕事ですよね。


そのため、申立ての際の予納金は数十~50万円程度かかる例が多いようです。
勿論、相続財産管理人の想定される仕事量、被相続人の財産額に照らし、ケースバイケースで判断されることになります。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

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相続人に未成年者がいる遺産分割など [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の相続問題コラムは、相続人に未成年者がいる場合の遺産分割などの注意点をお話します。

相続の際、相続人に未成年者がいらっしゃることがあります。

未成年の子を残して父あるいは母が亡くなった場合や、その後亡くなった父母の父母(祖父母)が亡くなって未成年の子が父または母の代襲相続人として相続人になる場合ですね。

 

遺産分割手続など(遺産分割協議・遺産分割調停・審判・相続放棄)を進めるにあたって、特別な注意をする必要が出てきます。

 

未成年者は単独で遺産分割協議等をすることができません。
親権者が未成年の子の法定代理人になります(民法824条)。


親権は父母の共同行使ですが、仮に父母の一方が死亡等により親権を行使できないときは、他の一方が単独で親権を行使します(民法818条)。

 

そうであれば残された配偶者(単独親権者)が未成年の子を代理して遺産分割協議等をすることができそうです。
しかし、そう単純ではありません。

 

例えば、被相続人の相続人が配偶者と未成年の子1人である場合を考えてみましょう。

 

その場合、法律上、配偶者と未成年の子の利害が対立するとみられます。
外形的・客観的に法律関係を見て利害相反があるという関係になるのです(具体的な内容に関係なく形式的にみられます)。
会社法での利益相反取引と同じ考え方です。

 

このような親権を行う者と未成年の子との利益相反行為(利害が対立する行為)については、親権者が親権を行使して未成年者の代理人になることはできません。
この場合は、特別代理人を家庭裁判所に選任してもらわなければなりません(民法826条)。

 

次に、被相続人(祖母あるいは祖父)が亡くなって、それ以前に亡くなっていた配偶者の代襲相続人として未成年の子が相続人になるケースを考えてみましょう。

 

その場合、未成年の子が人だけならば、残された配偶者が問題なく未成年の子を代理して遺産分割協議等をすることができます。
配偶者は相続人ではありませんからね。
共同相続人の関係にないので、利益相反関係にないのです。

 

一方、未成年の子が人の場合には様相が異なります。
配偶者が未成年者
人の代理人となることは、双方代理となるのですね。

双方代理は本人同士の利害相反関係があるため、基本的にできないことになっております。
そのため、親権者が数人の子に対して親権を行う場合には、その
1人と他のことの利益が相反するときも、また特別代理人を家庭裁判所に選任してもらわなければなりません(民法826条)。


親権者は一方の代理人にはなれますが、もう人は特別代理人が代理して遺産分割協議等をすることになります。

 

それでは、相続放棄の場面を考えみましょう。

 

親権者が未成年の子を代理して相続放棄をすることはできるでしょうか。

 

親権者が相続人ではないときは、相続人となる未成年者が人であれば、問題なく未成年の子を代理して相続放棄することができます。

さきほどの、代襲相続で未成年者1人だけが相続人となるケースですね。

ただし、代襲相続の場合でも、未成年者が人以上である場合、一部のみの未成年者を代理して相続放棄をすることはできないです(特別代理人の選任が必要)。

 

親権者が相続人であるときは(最初のケースですね)、未成年者のみの相続放棄を代理することはできません。

一部のみの未成年者を代理して相続放棄をすることもできません。
親権者と未成年者、あるいは未成年者同士の利害が相反しますからね。

 

親権者と未成年の子全員が同時に相続放棄をする場合、あるいは先に親権者が相続放棄をして相続人でないことを前提として未成年の子全員が相続放棄をする場合は、親権者が特別代理人を選任することなしに未成年者を代理して相続放棄をすることができます。

この場合は、利益相反関係がないと判断されます。

 

相続放棄が必要な場合は、通常、親権者と未成年の子が一緒に相続放棄をすることになるでしょう。
そのため、通常の相続放棄では特別代理人の選任は必要ないと言えます。

 

このように、相続人に未成年者がいる場合には、利害相反というやや面倒なことを考えて手続をする必要がありますのでご注意ください。

 

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