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旧コラム 相続問題: 2019年4月
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事業承継、同族会社株式の注意点 [企業法務]
広島県広島市の弁護士仲田誠一による企業法務コラムです。
今回は事業承継に関連する同族中小会社の株式の相続のお話です。
遺産分割の方法、遺産分割までの相続共有株式の権利行使、遺留分制度の改正などをお話します。
株式公開をしている大企業と異なり、同族中小企業のオーナー株主の相続が発生すると事業承継問題が顕在化します。
相続にあたり同族会社の株式も遺産分割の対象となる相続財産になります。会社の所有者は株主です。オーナーチェンジが起きるのですね。
同族会社の株式の帰趨は経営権と直結する問題です。
株式を少なくとも過半数保有しなければ、他の株主の協力なしに取締役選任もできません。
自分の意思で経営をしていくことはできません。
後継者にきちんと株式を移行させないといけませんね。
また、前オーナーに株式の他に目立った相続財産がないケースでは、遺産分割協議において後継者が株式を得る代わりに他の相続人に対して高額の代償金を支払わなければならないこともあります。
仮に株式を分割相続した場合、経営をしない相続人は、お金に変えられない株式に対して相続税だけを支払わないといけません(驚くほ高額な評価がされる会社もあります)。
同族中小企業の株式は、ほぼ例外なく譲渡制限が付いており、かつ購入ニーズもM&Aの場合を除きないでしょう。
遺言がある場合には遺留分の話ですね。
時限立法の事業承継特例税制は、税金面の話です。
事業承継対策は、原則を押さえないといけません。
株式は現代表者あるいは後継者だけに集中しておく、
かつ集中した株式を後継者に生前あるいは遺言により移転しておく
といった準備をすることが肝要です。
その上で、事業用資産・株式は後継者に、それ以外を他の相続人に、を基本にスムーズに承継させる必要があります。
実際に、相続の場面において、同族会社株式がどう扱われるかなどをお話しましょう。
まず、遺産分割の方法のお話です。
流れは、遺産分割協議 ⇒ 調停 ⇒ 審判と続いていきます。
遺産分割協議において、後継者が株式を単独取得する合意ができれば問題はありませんね。
会社の所有者は株主です。後継者が単独取得するべきでしょう。
ただし、財産的評価の問題があります。
協議段階では、株式の相続税評価を参考に協議されることが多いのではないでしょうか。
後継者が株を取得しても、他の財産を全く承継できない、あるいはそれに加えて代償金を支払わないといけないケースもあります。
代表者は会社の債務の連帯保証も負います。
連帯保証債務は相続時に存在した債務(現実の債務)は各共同相続人にその相続分に応じて承継されます。
後継者としては、銀行と折衝して、相続債務である連帯保証債務を免責的債務引受(他の相続人は債務を免れる形の債務引受)することを条件に他の相続人の譲歩を取り付けるべきだと思います。
誰しも保証債務は負いたくありません。実際に経営をしていない相続人はなおさらです。
調停も合意手続ですので、遺産分割協議と同様、話し合いです。
ただ、裁判所が妥当な線で調停成立を働きかけてくれる期待があります。
審判に至った場合は、裁判所が遺産分割内容を決めます。
後継者であること、後継者に株式を集中しないと困る事情等をきちんと説明すれば、株式は後継者である相続人の単独取得という内容で審判を出してくれる可能性が十分あります。
機械的に法定相続分に応じて分けるということではありません。
当事者の意見も重視されると思いますが、経営をしていない相続人が株式の現物を欲しいとは言わないでしょう。
その代わり、後継者は資金負担への準備が必要になる場合があります(株に価値があり他の遺産で賄えない場合など)。
評価額は、裁判所が決めます。鑑定評価に付されるケースもあります。
次に、遺産分割が完了するまで(あるいは調停が成立するまで、審判が確定するまで)、相続株式の権利行使をすることができるのは誰かの問題です。
株式は、帰属が確定するまで共同相続人による準共有になります(株式は、物ではないので物に使う共有という言葉を使わず準共有と呼ばれます)。
権利行使に関しては、会社法106条にて、相続人らが権利行使者を指定し、会社に通知するというルールが定められています。
判例によって、権利行使者の指定は、原則として持分の過半数で決するとされています。
特段の事情がない限り株主権の行使は共有物の管理行為とみられているわけです(共有分の管理行為は持分の過半数で決します)。
過半数で決められずに権利行使ができなければ困りますね、少数株主による株主総会の開催がなされてクーデターが起きることもあり得ます(勿論、株主総会の定足数も関係してくる問題です)。
会社法106条但し書では、権利行使者の指定・通知がなくても会社が同意すれば相続人による権利行使ができるとされています。
会社が同意する場合の権利行使のルールについても平成27年に最高裁判例が出ました。
会社が権利行使を許す場合であっても、民法の共有の規定に従い持分の過半数で決めなければならないとされました。
結局は、相続共有株式については、後継者側の相続人で過半数持分を持っていない限り、権利行使ができません。
後継者グループで既に過半数の株式を持っているケースではいいですが、そうでない場合には困りますね。
例えば過半数が相続共有株式だと定時総会も開けなくなります。
定款に相続株式の相続分による単独行使を認める旨の定めをしておく対策も考えられました(そうであれば少なくとも相続株式全体が反対に回ることはなくなります)。
実際に、従前はそのようなアドバイスもしておりました。
上記判例の出現でその定款規定の効力が維持できるのかどうか危惧するところです。
勿論、経営権はく奪目的の、法の間隙を突く株主総会決議は、権利濫用としてその効力を否定される可能性はあります。
ただ、例外的に適用される理論ですので、事前にこのような問題が起きないように措置をしておくことが肝要ですね。
なお、遺留分制度の改正がありました。まもなく施行されることになります。
これまでは、遺留分減殺請求の制度でした。
遺言で全株式を後継者に相続させる旨を定めていても、その遺言が他の相続人の遺留分を侵害する場合、遺留分減殺請求により当然に物権的効果が生じ(遺留分侵害にあたる株式が当然に遺留分請求者に移転し)、受遺者である後継者と遺留分減殺請求をした他の相続人の準共有状態が生じました。
しかし、改正民法1046条1項が遺留分減殺制度を遺留分侵害の金銭請求に変更しました。
遺留分制度によってはもはや株式の準共有状態が生じないことになります。経営の混乱は生じないことになりました。
ただし、支払請求に対応できる資産を後継者に準備しておかなければなりません。
顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
(なかた法律事務所) 2019年4月 2日 08:28
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