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旧コラム 相続問題: 2019年6月

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相続人が相続放棄や承認をする前に亡くなったとき [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
 
相続問題のうち相続放棄のお話です。
相続放棄に絡んで、再転相続、代襲相続、数次相続について説明します。
 
【再転相続】
Aが亡くなって1回目の相続が発生します。
被相続人Aの相続人Bが熟慮期間中に相続放棄も承認も行わないまま亡くなって2回目の相続が発生しました。
Bの相続人Cが相続人となることを再転相続と言います。
ここではCを便宜上、再転相続人と呼びますね。
 
あまりない例かもしれませんが、第2順位相続人の相続放棄の例で見ることがありますね。
祖父母、曽祖父母が御生存であれば高齢のことが多いです。
第一順位の子が相続放棄をしなければ第2順位の直系尊属の相続放棄ができませんから、第2順位の方が相続放棄するのは一定期間経過した後になります。
たまたま、亡くなってしまうこともあるのですね。
 
再転相続人は、AとB両方の相続人になります。
 
再転相続人は、勿論Aについて相続放棄ができます。
3か月の熟慮期間の起算点は、再転相続人がAの相続人になったことを知ったとき、つまりBの相続を知ったときになります。あくまでもCがAの相続人になるのはBが亡くなったからですから。
第2順位、第3順位の相続人が相続放棄できるのは自身が相続人になったときからなので、先順位の相続人の相続放棄を知ったときから熟慮期間が起算されるという理屈と同じです。

もう少しややこしい議論があります。
 
(先にAの相続を承認・放棄した場合)
再転相続人は、Bの相続について承認・放棄の選択ができます。
再転相続人はBの相続について固有の選択権を有しているからです。
Aの相続放棄をした後に、Bの相続放棄をしても、Aの相続について放棄の効力が遡って無効にはならないとされています。
 
(先にBの相続を承認した場合)
再転相続人は、Aの相続について、相続放棄・承認のいずれもすることができます。
Aの相続を承認・放棄し得る地位を承継し、選択権を有しますからね。
 
(先にBの相続を放棄した場合)
再転相続人は、Aの相続について、承認・放棄のいずれもなしえません(する必要がありません)。
再転相続人はBの相続を承認して初めてAの相続を承認・放棄し得る地位を承継し、選択権を有しますから。
 
ややこしいですね。
書籍により微妙に説明が異なっているような気がします。
実際に行うときは(現在そのような案件を受けているのですが)、よくよく吟味して手続を進めないといけません。
 
代襲相続
BがAより先に亡くなっていた場合には、単純に代襲相続の話となります。

Aの相続発生時に既にBが亡くなっている点が再転相続のケースと異なります。

Aの遺産分割はAの相続人間(Bが亡くなっているのでBの代襲相続人が当事者)で行います。
Bの代襲相続人は、勿論Aの相続について相続放棄ができますね。代襲相続人の熟慮期間の起算点はAの相続を知ったときです。
 
【数次相続】
BがAの相続を承認(熟慮期間を徒過など)していたが遺産分割前に亡くなった場合は数次相続の問題となります。
実務上よくある事態です。

こちらは、既にBがAの相続を受けていますね。その点で再転相続のケースと異なります。

Aの相続についてはAの相続人間で(Bの代わりにBの相続人が当事者となります)、Bの相続については勿論Bの相続人間で遺産分割協議をすることになりますね。

遺産分割協議は同時に行うことも多いです。遺産分割調停も2件同時に申し立てることになるでしょう。

勿論、Bの相続人は、Bの相続について相続放棄をすることが当然できます(その場合はBの相続人ではなくなるのでAの遺産分割協議には参加できません)。
 
遺言、相続、遺留分相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
 
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生命保険金と相続 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

生命保険金は、相続の対象外だと聞かれることがあると思います。

保険の外交員さんなどもこのフレーズでセールスをすることがありますね。

 

相続税法上、生命保険金はみなし相続財産です。

基礎控除はありますが、相続税がかかります。

 

しかし、民法上は、受取人指定の保険金請求権は相続財産ではありません。

民法と税法が違うところですね。

受取人指定の保険金請求権は、受取人である相続人が取得する固有の権利と見られるからです。

 

保険の種類により扱いが異なります。
 

受取人が、「本人」の場合には相続財産に含まれますね。
また、受取人が「相続人」と指定されている場合には、相続人の固有の請求権になります。
この場合、相続分とは無関係に各相続人平等で取得します。

保険証券を確認してみないといけません。

 

なお、受取人指定の保険金であれば、相続放棄をしても受け取ることができます。

相続財産ではありませんから、単純承認行為とはなりません。
相続財産と見られる保険金は受け取って費消しては駄目です。単純承認行為となります。

 

ということで、冒頭の生命保険金は相続の対象外という言葉は間違いではありません。

ある相続人にある程度特別にお金を残したい際に保険を活用することも有益ですね。

 

ただし、法律の世界では何事も例外があります。

 

遺産に比べて法外な金額の生命保険金請求権を特定の相続人が取得する場合は不公平ですね。他の共同相続人が納得できません。
そこで、相続の対象外となる生命保険金も、場合によっては、特別受益に準じると見られて相続に影響を及ぼすこともあります。

 

判例は、受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が到底是認ですることができないほどに著しいものと評価すべき特段の事情が存する場合には、死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となる、としています。

 

持ち戻すということなので、仮に1億の遺産で1億の保険金請求権であった場合、保険金請求権1億を特別受益と同じく持ち戻し、遺産を2億と見ます。
相続人が子4人である場合、2億を法定相続分に応じて分けると1人5000万円です。
受取人は既に1億貰っているから残る相続分はないとして、1億を3人で分けることになりますね。

 

特段の事情は、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、「被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断するとされています。

 

実務的には、判例の言い回しである特段の事情はなかなか認めてくれません。
あくまでも例外だからです。

 

単純に遺産の額と保険金請求権の額を比べるだけではないので一概には言えないのですが、遺産の額を超える保険金額のケースや60%を超える保険金額のケースで、特別受益に準じた持ち戻しが認められた例があるようです。

 

遺産と比べて相当の額と言える死亡保険金請求権を共同相続人の1人が取得した場合には、このような紛争が生じるリスクがあることにご注意ください。

特に、事業承継対策などで極端な保険契約の提案を受けたときには気を付けないといけませんね。

 

遺言に、仮に特別受益に準じると見られた場合であっても持ち戻し免除をする意思表示を記載しておく、あるいは生命保険金の受取人を指定した事情を記載しておくことも考えられますね。
持ち戻し免除の意思表示の効力はどう判断されるのか判例がないのでわかりませんが、少なくとも上記判例の総合考慮の要素としては組み込まれるのではないかと思います。

 

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広島の弁護士 仲田 誠一

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収益物件の相続 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題の投稿です。

 

今回は、収益物件の相続をまとめてお話しようと思います。

収益物件とは賃貸している物件ですね。

 

相続が起きたとして今後の賃貸料の扱いが気になりますね。

賃料は遺産の果実です。遺産の果実は遺産そのものではないので遺産分割の対象外です。

賃料債権は可分債権なので、相続発生後の賃料は相続分に応じて各相続人に帰属します。

 

固定資産税等の管理費用はどうでしょうか。

民法上、相続財産に関する費用は相続財産から支弁することになっています(885条)。

それでは相続財産ではない家賃と精算できないですね。

しかも、マンションやアパートだと保守管理費用や清掃費用も出てくるところ、相続財産の管理費用か相続発生後の賃貸行為の費用なのか微妙な感じもします。

 

勿論、合意で解決する場合には、賃貸にまつわる費用は家賃から精算する(相続開始後の賃料から管理費用を控除した残額を分配する。)のが通常でしょう

 

相続物件たる不動産は、遺産分割前では、遺産共有状態です。
保存行為は各共同相続人単独で、管理行為は過半数持分で決めることになります。

固定資産税、火災保険の支払、不法占有者に対する明渡し請求あるいは破損部分の修繕などは保存行為として各相続人単独でできます。

その場合の費用の精算は上述のとおりの問題が出てきます。

 

相続預金口座は、相続発生の連絡により(中には銀行が新聞を見て動く場合もあります)、凍結されますね。
凍結されても家賃の振込入金は継続できるケースもあります。ただ、手続を踏まないと引き出せません。

 

同意ができる範囲で同意書を取り交わし、家賃等管理口座を作成して、賃借人に振り込み先の変更をお願いするのが現実的でしょうか。

 

実際には、事実上1人の相続人が管理を引き継いで振込みを受けることもありますが、他の相続人に対して清算義務が勿論あります。
かつ、本来は共同相続人共同の事業として各人が申告をしないといけないことになります(実際には代表して誰かが申告すればそれ以上突っ込まれないところですが)。
一人で申告した場合には後の清算の場面で所得税の扱いが面倒ですね(また、共同事業として各相続人が申告した方が税金は通常安くなります)。

 

遺産分割前に、空室について新規の賃貸借契約ができるかの問題もありますね。

新規の賃貸借は、管理行為になるか変更行為になるか争いがあります。

管理行為なら持分の過半数で決められる(民法252条)、変更行為なら共有者全員の同意が必要です(民法251条)

事例判断に依らざるを得ないことになります。目的不動産の利用形態、期間の長短がメルクマールとなるようです。

まず、利用形態を大きく変更する賃貸借は変更行為と見られるでしょう。

次に期間ですが、民法602条の短期賃貸借(土地5年、建物3年)であれば理屈上大丈夫でそうですが、借地借家法の問題があります。

借地借家法の適用のある賃貸借契約(通常の賃貸借は適用があります。適用がないのは、建物所有を目的としない土地賃貸借や一時使用目的の建物賃貸借などです。)であれば、短期賃貸借であっても更新がなされて長期間の契約になる可能性が高いのですね。そのため、変更行為と判断された裁判例もあります。

無難に考えるのであれば、借地借家法の適用のない短期賃貸借かつ利用形態を大きく変えない賃貸借は過半数持分の同意でできるというべきでしょうか。

更新の場合も、自動更新の場合には問題がなさそうですが、都度更新の場合には変更行為となる場合があるでしょう。

事実上、一人の相続人が管理をして賃貸借契約を締結するということもあります。それは法律的には無断賃貸借になります。

 

なお、賃貸借契約の解除は管理行為です。過半数持分での決定ですね。

 

このように、遺産分割前の収益物件の管理は法律的に見るとかなりややこしいです。


最近も、お母さまの相続後何年も一人の相続人が遺産分割なしで事実上ビルの収益管理を継続した上でその方も亡くなったという事例がありました。
遺産分割は勿論、不当利得返還請求や相続後の家賃・管理費用等問題が多岐にわたっており、訴訟で紐解くのも可能ながら効率的ではなかったため、なんとか和解的解決を図りました。

 

できれば、遺産分割前の物件管理等について合意書面を作っておく方がいいですね。

 

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