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旧コラム 借金問題: 2019年4月

現在のコラムはこちらから

法人破産のための準備など2 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

法人破産の準備はどうするべきかの続きです。

 

◇ 財産処分・整理

(決算書記載資産)

決算書に記載されている資産項目については、すべて説明をして、現金化できるものはしておくということが基本です。
破産管財人の手間を少しでも削減する意味もあります。
すぐに現金化できないものは破産管財人に引き継ぐことになります。

 

(銀行関係)

借入のある金融機関が絡む保険、共済、定期預金等は解約できるうちに早めに現金化します。申立費用等を捻出する必要がありますしね。
現金化債権者平等原則に従って破産手続により平等に弁済する、あるいは債権者共通の利益に費消するということですので、後ろめたいことはありません。


借入のない金融機関の預金については、もう使わなくていいというタイミングで解約していただきます。


当座取引があり手形帳、小切手帳がある場合には弁護士に預けてください。


貸金庫契約がある場合もあります、中身を空にして解約をしていただきます。

 

(機械・工具、什器・備品)

まずは固定資産台帳の確認です。台帳記載資産のチェックをします。

台帳記載以外の一括償却資産、償却済み資産については、最終的にリストは作成していただきます。

処分をするかどうかはケースバイケースの判断ですね。実際に現場を拝見してからの判断になります。
賃貸物件の整理の必要性からは処分を急ぐ場合もあります。破産管財人の立場ですが、工場内の機械類一式を競争入札で売却したことがあります。

自動車については、使わないタイミングで鍵を預かります。自動車保険についても使わなくなったタイミングで解約をしてもらいます。

 

(既に処分した資産)

法人破産を決断する前には資金繰りのために様々な資産を現金化していることが多いです。
少なくとも半年前、かつ直近決算後の売却、解約等の現金化については説明をしないといけません。
解約関係書類を探していただくことになります。使途も説明しなければなりません。

 

(保証人の銀行資産)

受任通知を銀行に出すと、保証人の口座も凍結され、相殺されることになります。
受任通知を出す金融機関には、法人・個人とも資産がない状態が理想です。忘れることがあるので気を付けてください。

 

◇ 賃貸物件

明渡しをしないといけませんね。弁護士が受任通知を出した上で、弁護士が折衝をすることになるでしょう。

中のものを処分整理して明渡しが可能なら明渡しをします。

中にある物の処分が難しい、あるいは処分費用がかなりかかる等の理由で、明渡しを破産管財人に引き継がなければならないケースも多いです。

勿論、家主と和解的な解決により(原状回復費用が払えないという前提で)、早期の明渡しが可能な場合もあります。

 

◇ リース、所有権留保物件

リース物件、所有権留保物件は返却します。弁護士が受任通知を出せば返還の要請が来ます。確認のため契約書は弁護士に渡してください。

自動車では、予め弁護士に車検証を確認してもらってください。きちんと所有権留保の形の所有者登録ができていない場合には、そのまま返却することができません。

場合によっては、債権者から所有権を放棄される、無償譲渡される場合もあります。そうなるとこちらで処分するか破産管財人に引き継ぐかをしないといけません。

 

◇ 帳簿、税理士

事業廃止までの帳簿はきちんとつけていただきます。

事業廃止後ですが、少なくとも領収書や請求書など帳簿作成に必要な資料を整理・保管してもらいます。

資金がある場合には、税理士への依頼を継続してもらうこともあります。

 

◇ 不動産

不動産については、処分が可能(担保に入っていない)かつ売却をしないと破産申立資金が捻出できない場合には、弁護士関与の下で適正価格にて売却します。
売却資金の使途はきちんと説明しなければなりません。

それ以外はそのまま破産管財人に引き渡します(鍵を弁護士に預けることになります)。

勿論、お邪魔して、写真を撮り、状況を報告します。

 

◇ 許可、認可、登録

法人破産をすれば最終的に法人はなくなります。営業を廃止した後に、営業に必要な許可、認可、登録などは抹消等を届けてもらいます。

 

◇ 仕掛の仕事

基本的には営業廃止にかかる仕事は受けないようにしてもらいます。

それでも残ってします仕掛仕事は、契約書を基に一覧表を作成します。対応ができるものはしていただくこともあります。

賃貸管理会社の破産の場合にもそうでしたが、継続的な仕事についてもリストを作成し、顧客に営業廃止後の対応を説明しないといけないですね。

 

まだまだ法人破産の準備の話は尽きませんが、この辺までにしておこうと思います。法人破産はオーダーメイド色が強いです。できるだけ早く弁護士の助けを得て、ご準備ください。
本格的な準備は営業廃止後ですが、その前にやっておかないといけないこともあります。

ざっと法人破産の準備についてお話いたしました。
勿論、個別の問題毎にもう少し掘り下げて説明しないといけない点が多々あります。機会を見て説明していきますね。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

https://www.nakata-law.com/smart/


法人破産のための準備など1 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

現在複数の法人破産申立て準備を並行して行っていることもあり、法人破産についてご質問が多い点などを五月雨式に説明させていただこうと思います。

 

法人の自己破産時の準備は多岐にわかります。かつ、ケースバイケースの判断が必要になります。

やるべきこと、やっていいこと、やってはいけないことの判断をしながら進めることになります。弁護士もスキル・経験が必要な分野ですね。

 

法人破産を決断される経営者の方々は非常に苦労をされてきています。
簡単に自己破産をしたいとおっしゃる方はいらっしゃいません。万策尽きて弁護士に駆け込まれる方が多いです。

 とはいえ、法人破産の準備は多岐にわたり大変です。経営者の方々にはもう一踏ん張りしていただくことになり恐縮です。

弁護士に早期に相談され、弁護士のサポートを受けながら頑張ってください。

 

2回に分けてお話ししますね(それでも話は尽きませんが・・・)。

 

◇ 従業員関係

(解雇・退職)

事業廃止日が決まれば、従業員の方々を解雇する、あるいは従業員の方に退職していただかなければなりません。
規模が割合小さい会社であると自主的に退職していただけるケースも多くあります。

 

従業員さんの生活のことを考えるとできるだけ早くお話をした方がいいでしょう。解雇をする場合には30日間の解雇予告をするのが通常です。

一方で、あまり早く事業廃止のことを伝えると業務に支障を来すことも予想されます。
給与あるいは解雇予告手当を支払って最後まで働いていただくことが理想ではありますが、悩ましいです。
法人破産はある程度資金が必要であり、資金繰りとの関係でケースバイケースの判断になりますね。

 

なお、破産準備のため「この人がいないと困る。」という経理担当の方などがいらっしゃる場合もあります。
その場合には、引き続きお手伝いをいただき、ある程度の報酬を支払う、あるいは退職時期をずらしてもらうこともあります。

 

賃金等の未払いが残った場合にはどうなるのでしょうか。
破産財団からの支払いができるか、労働福祉事業団立替制度(約6か月分の未払い給与と退職金の80%かつ限度額以内を受けられる制度)の問題になります。
手続に時間はかかりますが、破産管財人に引き継ぐことになります。

なお、賃金台帳、対三カード、就業規則はきちんと弁護士に引き継いでください。

 

(その他)

社会保険の異動手続、住民税の異動手続、ハローワークの手続をしていただかないといけません。

 

◇ 税金関係

税金の支払いをどうすればいいかも悩みます。

差押えをされても困るところですが(破産をするといっても差し押さえてきます!)、資金繰りを睨んでの対応となりますね。

仮に資金手当てができるのであれば、税金の支払いは基本的にはOKです(一般の破産債権よりも優先される財団債権であればという意味です)。
弁護士と相談ですね。資金捻出状況との兼ね合いで決めています。

 

◇ お金の管理

法人破産の場合は、事業を廃止する以上、事業廃止のタイミングあるいはその直前かけて、弁護士が管理をすることが通常です。

もちろん、ある程度のお金は保管していただき、必要な支出に対応していただきます。

その場合、収支を明確にするため、現金出納帳を作成していただき、ごみ処理などの領収書なども保管していただきます。

資産を換価したお金も含めて、弁護士費用、申立費用、どうしても支払う必要がある費用に支出していきます。

 

◇ 売掛金の回収

売掛金台帳、納品書・請求書綴り、注文伝票綴りは整備・保管することを求められます。
ただ、そこまでできない場合も多いのです。

事業廃止時点での売掛金リストを作成してもらい、それで管理をしていくことが多いでしょう。
 

借り入れのある銀行の法人口座は受任通知により凍結されます。
法人破産の場合の凍結後の入金は金融機関が引き出しを拒むでしょう(破産法上相殺は許されませんし、破産管財人からの引き出しの要求は拒めないはずなのですが)。
振込先を借り入れのない銀行口座に変更してもらう、現金で集金する、あるいは弁護士口座に直接振り込んでもらうなどの対処をしなければなりません。
金融機関への受任通知のタイミングも弁護士とよくよく相談しないといけません。

 

◇ 買掛先への対応

買掛先リストを作成してもらい弁護士が受任通知を出します。

それでも仕入先からの返品要請などが来ることがあると思います。弁護士に回してもらい対応します。基本的には返品には応じられません。

取り付け騒ぎの可能性もあります(窃盗行為なのですが・・・)。営業所等のセキュリティーはきちんとしてもらいます。
弁護士名での張り紙をすることもありますね。

 

なお、買掛先に限らず、債権者はすべて弁護士に報告してください。
請求書などが来る都度報告してもらえれば受任通知を出します。

 

◇在庫の処理

事業廃止に向けて在庫は圧縮してもらいます。

棚卸台帳、納品書・請求書綴り、注文伝票綴りは整備保管することを求められます。
こちらもきちんとできない場合は珍しくなく、最終的には簡単な在庫リストを作成してもらうことが多いです。

 

破産申立て前に、弁護士関与の下、適正価格(もちろん通常の販売価格では処分できませんが)で在庫処分をすることもあります。
保管場所の明渡しのため、今すぐになら売却できる、といった事情がある場合などです。勿論、生鮮食品等、劣化するものは早期の処分が必要ですね。
破産管財人が最終的判断した方がよさそうなものはそのまま引き継ぎます。

処分をしたものについては、勿論記録を残さないといけません。

 ごみとして処分するべきものも記録を残した上で廃棄になります。

 

◇ その他各種契約

法人の営業をしていると様々な契約を伴います。
法人破産の場合は、申立て前にすべて契約関係を解消してもらうのが原則です(簡単に解約できるものはという意味です)。
契約書と解約関係書類は保管して弁護士に引継ぎます。

それにより違約金等が発生する場合には債権者に追加します。逆にお金が返ってくる場合にはそのお金はきちんと管理しないといけません。

 

◇ 公共料金

営業所の水道、ガス、電気、電話などですね。

ガスや電話は事業廃止に伴いすぐに止めていいことがほとんどでしょう。勿論、自宅兼事務所の場合は別です。
 

水道、電気はタイミングを図って止めます。
事業廃止後も整理などで立入りが必要です(倉庫のシャッターやクレーンが電動で整理するためには通電が必要というケースもありました)。

そのため、水道・電気は止めないままで破産管財人に引き継ぐことも多いです。

次回も続きをお話しします。

  

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債務整理と給与差押え [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の借金問題コラムでは、債務整理と給与差押えの関係について改めてまとめておきたいと思います。

 

◇ 金融債務延滞と給与差押え

金融債務を延滞すると、まず督促状が来て、その後約款に基づいて期限の利益が喪失されます。

期限の利益の喪失とは、支払期限の約束(債務者の利益ですから期限の利益です)がなくなり、一括請求されることです。


保証会社がある場合には代位弁済をされた上で、支払督促あるいは訴状が届き、判決等の債務名義(強制執行ができる文書のこと)が取られ、給与等に強制執行がなされます(なお、執行認諾文書のある公正証書を作成されている場合には法的手続なしに差押え可能です)。


強制執行が申し立てられると、裁判所から勤務先に通知が届き、給与が差し押さえられます。その後は、給与から税金・社会保険を控除した額の4分の1(ただし、33万円を超える部分は全額)の支払いを受けられなくなります。通常、給与明細上控除されます。


なお、理屈上は、支払督促あるいは訴状提出の前に仮差押えという手続きを採ることも考えられますが、あまり見受けられません。


勤務先が知られている債権者に対して延滞が発生した場合には、できるだけ早く債務整理を行った方が得策です。給与差押えの危険が伴います。

 

◇ 任意整理と給与差押え

任意整理で解決することは困難です。

既に債務名義を取られているので、債務全額に加え執行費用の支払いをするしかないのが基本です。

分割払いの交渉に応じてくれる例はほとんどないと考えていいです。

 

◇ 自己破産と給与差押え

(相談時に既に差押えがなされている場合)

できるだけ急いで自己破産を申し立てることになります。そして、裁判所からの宿題に答える等して破産開始決定を得ます。裁判所にできるだけ早い開始決定をお願いすることもあります。
 

破産開始決定が出て、それが管財事件の場合は、強制執行手続が失効することになります。
給与を全額貰えるようになるわけです(もちろん新得財産となり裁判所に取られることはありません)。


同時廃止事件の場合は、申立人側から強制執行の中止の申立てをすることになります。
ただし、強制執行が中止されても、差押え自体がなくなるわけではありません。免責許可が確定したときに強制執行が失効します。
勤務先はその間は、差押え額をプールして(債権者への支払いを留保して)、免責許可が確定したときにプール金を破産者に渡すことになります。複数の債権者から差押えがある場合には勤務先は供託をしないといけないので大変ですね。

 

もっとも、強制執行中止の申立てをすると(中には、受任通知時、あるいは破産申立て時のこともあります)、債権者は強制執行を取り下げることが多いです。弁護士からも取下げを促します。


(相談時にまだ差押えがなされていない場合)

弁護士が受任して自己破産の準備をしている間は、債権者は法的手続を取ることを待つのが通常です。

最近は、あまり待たずに法的措置をとるようになった債権者もいますので注意してください。そうでない債権者でも受任後半年経てくると問い合わせが弁護士のところに来ます。申立予定が決まっていないと、たいてい法的手続を進める旨伝えられます。
 

弁護士に依頼する場合には弁護士からスケジュールを示されるはずです。弁護士に自己破産申立てを依頼して受任通知を出してもらって安心してはいけません。きちんとスケジュールに従って準備をしてください!遅くなると給与差押えのリスクが高まります。


訴訟等がなされると弁護士が時間稼ぎをしてくれることもありますが、限界があります。
また、差押えは受任通知後の偏頗弁済となり(破産管財人が否認することもできる行為になり)、金額によっては管財事件になる可能性が高まります。


なお、訴訟等がなされる段階になってまだ準備が進んでいないとなると、弁護士から辞任をさせることも多いでしょう。弁護士も依頼者さんが準備をしてくれないと困りますから。

 

◇ 個人再生と給与差押え

(相談時に既に差押えがなされている場合)

個人再生の場合、再生手続開始決定により強制執行は中止されます。

そして、最終的に再生計画の認可決定が確定した場合に失効します。
 

なお、申立て後に強制執行の中止命令を裁判所が出せる制度、差押えの取消しにより留保分を受け取れる制度もあります。裁判所に認められる必要がありますが。


個人再生の場合には、差押え分を偏頗弁済として清算価値(清算価値保障原則により最低弁済額を画するものです)に計上されて、他の財産状況によってですが最低弁済額が大きくなるリスクがあります。。
 

給与差押えとは違いますが、給与天引きでの共済借入金弁済などは天引きが開始決定まで止まらないことがほとんどです。この場合も清算価値に計上するということがあります。

 

(相談時にまだ差押えがなされていない場合)

自己破産の場合と同じです。弁護士に示されたスケジュールに従ってきちんと準備をしてください。遅くなると給与差押えのリスクが高まります。
 

なお、差押えをされている場合、弁護士費用に困ってしまう場合があります。よく弁護士と相談してください。法テラスの基準を満たしていればいいのですが、収入基準を超えていて法テラスは利用できない、しかし給与差押えにより弁護士費用を捻出することが難しい、という事態もあり得ます。その場合は弁護士費用の支払い方法も柔軟に考えないといけません。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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自己破産等と自動車 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。


債務整理をしたら車がなくなってしまうのかどうかは相談者さんの関心が高いところです。

広島だと車がないと困る場合もありますからね。


そこで、今回は、債務整理(個人の任意整理、自己破産、個人再生)における自動車の扱いを改めてまとめておこうと思います。
バイクも同じような扱いです。

 

【任意整理】

任意整理の場合には自動車を残せるのが基本ですね。

車のローンを任意整理の対象としなければ関係がありません。

なお、車のローンを任意整理の対象とした場合でも、残せた例もあります。債権者の対応次第かと思います。

 

【自己破産】

自己破産の場合は複雑になります。

まずは自動車が所有権留保物件かどうかですね。

 

◆ 所有権留保物件ではない場合

自動車が所有権留保物件ではない場合には単なる財産としての扱いを考えればいいだけです。

同時廃止と管財事件によって分けて説明しないといけません。

(同時廃止の場合)

初年度登録から(購入時からではありません)6年を経ている自動車では、少なくとも広島では(全国的に基本的に同じような扱いですが)、価値がないとして扱うことが許されています。そのため申立時に自動車の価値を報告する必要もありません。
したがって、自動車は残ることになります。
例外は、外国車や高級車ですね。その場合には、価値の報告を求められます。

 

初年度登録から6年を経ていない自動車の場合には、査定書(最近はなかなか取れないですが)あるいはレッドブックなどで車の価値を報告します。
その価値によっては(20万円を超える場合など)、次の管財事件の扱いとなります。


(管財事件の場合)

初年度登録から(購入時からではありません)6年を経ている自動車の場合に価値がない物として扱うのが多いと思いますが、古い車の査定を取り財産額に計上する破産管財人もいます。

自動車を残す方法は、自由財産拡張手続(裁判所の許可を条件に最大99万円の財産を手元に残す手続)あるいは金銭での財団組み入れです。
 

自動車が自動的に自由財産拡張対象となるわけではありません。自動車が生活あるいは仕事に必要で残すことが相当であることは説明しないといけません。

自由財産拡張対象と認められないあるいは自由財産拡張限度を超える財産がある場合には、車両価値に相当する金銭あるいは自由財産拡張対象外財産分の金銭を財団に組み入れる(破産管財人に引き渡す)ことで自動車自体を残すことも可能です。


なお、イレギュラーですが、合理的な理由が説明できる限りで、親族などに相当額で売却するケースもあります。所有者を変えて利用を続けるということですね。
例外的な扱いなので、弁護士と相談しながら進めないといけません。

 

◆ 所有権留保物件の場合

自動車が所有権留保物件(典型は所有者登録がローン会社名義になっている普通自動車)の場合には、理屈上、返却が必要です。

自己破産の場合は(正確に言えばその前段階の弁護士が受任通知を出したとき)は、債権者から引き揚げ要請(返却要請)が来ます。
借り入れの担保なので返却しないといけないのですね。


なお、銀行・信金などのマイカーローンの場合には所有権留保物件ではないことが多いようです(銀行が所有権留保を主張してきたことは経験ありません)。

 

ここで気を付けないといけないのが、所有者登録名義です。
所有者登録しているのがローン会社であれば問題がないのですが、販売店名義の場合はそのまま返却することが理屈上はできません。
所有権留保の対抗要件(主張できる要件)が登録なので、きちんと登録されていない車を返すと後で問題視されます。

間違って返却してしまうとそれだけで管財事件になる可能性があります。
ややこしいのですが、そのような最高裁判例が出てから、信販会社の方でも契約書類を改定しています。
改定後の最近の契約書類によっては、販売店名義であっても返却はできます。
難しい話ですが、法定代位構成の保証方式の契約書について、最高裁判例が販売店名義でも所有権留保が別除権(第三者対抗要件のある担保権)であることを認めました。

いずれにせよ、車検証の写しとともの契約書類を弁護士に見てもらってください。
手元にない場合には、弁護士が債権者に写しをもらって確認します。

なお、返却できない車だと判明すると、財産としてカウントされて、その価値が20万円以上であれば管財事件になってしまいます。

 

一方、普通自動車と違って、軽自動車の場合は、対抗要件が登録とはなっていません。
登録如何に関わらず、これも難しい言葉ですが、占有改訂が対抗要件となり所有権留保が認められます。
そのため、軽自動車については引き揚げ要請が来ると返却をしても問題がありません。
当職は一応契約書を確認して引き揚げ要請に応じることにしておりますが。

 

自己破産をしても所有権留保物件の自動車をどうしても残したいケースはあります。

保証人あるいは親族等にローン残債額で売却してローンを返済するなどの方法が考えられます。
自己破産手続の前に債権者との関係を整理しないといけないわけです。
イレギュラーなことで後で問題視されることもありますので、弁護士の関与の下進めることをお勧めします。

 

なお、所有権留保車両であっても、稀に価値が明らかにない古い車の場合には、債権者が所有権放棄をしてくれて手元に車が残ることもあります。

 

【個人再生】

◆ 所有権留保物件ではない場合

個人再生の場合には、財産は処分されません。

所有権留保が付いていない車は、その価値が、清算価値に計上されるだけです。
 

個人再生には清算価値保障原則があり、清算価値が最低弁済額を決める基準の1つになります(自己破産した場合よりも多い返済をしなさいという理屈です)。
車の価値が大きい場合には、それだけ返済額も大きくなる可能性があるということになります。


なお、個人再生における清算価値の計上の際には、自己破産における自由財産拡張対象相当の金額を控除することが認められています。
最大99万円まで清算価値を落とせるということですね。


◆ 所有権留保物件の場合

所有権留保物件である場合には、自己破産の場合と同様です。
担保になっていますから引き揚げに応じなければなりません。
その際の問題点も自己破産と同様です。
やはり弁護士に確認してもらってください。


なお、自己破産と同様、所有権留保付き自動車を残すには、所有権留保債権者との関係を決着しないといけません。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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倒産手続とM&A  [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

自己破産などの倒産処理をする前に、事業譲渡等MAの出口を探ることがあります。

 

ただ、債務を引き継いでしまうMAは(株式譲渡、合併が典型ですね)、破産を考えるほどの負債を抱えている場合には難しいでしょう。
そこで、考える
MAは、事業譲渡が基本になるのでしょうか。


売り手が借金を整理できるだけの譲渡代金が確保できるMAを目指すことになりますが、債務が残るケースでは、自己破産などの出口が必要になります。
勿論、役員からの借入れだけが残るといいうケースでは問題はそれほど大きくありません。役員さんが会社清算手続の中でタイミングよく債権を放棄すると無駄な法人税がかからないで消すことができます。あるいは、清算手続をしない場合でも、会社の休眠状態が続くと役員さんの相続時に会社に対する債権の価値がないものとみなされ無駄な相続税もかかりません。
会社の破産を考えなくて済みますね。

 

自己破産を申し立てることを前提として(債務は残すことを前提に)、その前に、事業譲渡、会社分割などのMAを図る場合は、勿論、買収者は債務を引き継がない形を取ります。

契約をきちんと整えることは勿論、商号の続用と見られないように気を付けないといけません(例えば事業譲渡において債務を引き継がない旨定めていても、商号続用と見られる場合には名板貸責任を追及されて債務を引き継ぎかねません)。

 

倒産手続前のMAは、事業の引継ぎや従業員の引継ぎを図ることが目的ですね。
何もしないで自己破産をすると基本的に事業はなくなり(破産管財人が譲渡することをあり得ますが)、また従業員も困りますからね。

勿論、代金により申立費用を捻出する効果もある場合もあります。

  

ただ、経済的危機状態でのMAは、倒産手続等との関係で問題になることがあります。慎重に進めないといけません。売り手だけではなく、買い手も気を付けないといけません。

 

資産隠し、債務飛ばしと見られる行為はやはり対抗策が存在するのです。一時期、新設分割により優良な事業を新設会社に承継し、新設会社の株式を採算者に譲渡するという濫用的な会社分割が流行ったことがあります。会社分割により債務を飛ばすわけですね。これは、民法上の債権者取消権(詐害行為取消権)に該当しうる行為ですし、破産法上の否認の対象にもなり得ます。

 

経済的危機状態においてMAをする場合には、債権者取消権や破産法上の否認等のリスクがあるのです。MA自体は事業の廃止に伴う社会的損失を回避し、従業員等関係者の利益を守れる行為なのですが、対債権者との関係で詐害的な行為と見られる場合には効力を否定される可能性があるのです。

 

経済的危機状況に限られませんが、MAは弁護士の関与の下で行うべきでしょう。対価の相当性と対価の使いみちがよくよく吟味されます。単に会計上の財産額の変動の有無を基に判断するものではなく、会社の状況、換価の困難性等も考慮されます。
弁護士が関与する場合には、そこら辺をチェックして後で説明がきちんとできるようにします。自己破産を前提とする場合には、対価は弁護士が管理し、後で問題にならない使途にのみ使用します。

 

任意整理の場合は(リスケですね)、銀行の了承を取り付け、対価については事業継続に必要な事業資金を除き債務額に応じて債権者にプロラタ返済をすることになるでしょう(担保を外してもらう債権者は別途考慮しないといけませんね)。事業計画とセットで銀行の理解を得られるかという話です。

 

スポンサー企業を見つけて民事再生で事実上MAを行うという方法もあります。
そもそも民事再生手続をして事業を継続できるケース、スポンサー企業を見つけるのが難しく、なかなかお目にかかれません。

 

なお、事業そのものではなく事業用資産の売却の話もあります。規模の大小は別としてよくやりますね。
申立費用捻出のための売却や廃業に伴う事業の整理のための売却ですね。

こちらも当然、リスクがある行為ですので、後できちんと説明できるように計画し、資料を残して、進めなければいけません。

 

顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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自己破産等の申立て直前の財産処分 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。

 

今回は、債務整理のうち、自己破産、個人再生で問題となり得る申立て直前の財産処分についてお話します。

 

破産や個人再生等をする場合には、様々な理由で処分行為を行うことがあります。身辺整理も必要ですからね(特に、法人破産の場合には、いつもどこまで処分をして整理するか悩みます)。

整理をして申立てをしなければならない。一方では、処分行為の中には自己破産等手続の中で問題視されることもある。今回はそのようなお話です。

 

直前の財産処分が問題となるのは、破産における否認対象行為かどうか、あるいは個人破産における免責不許可事由に該当するか、という点になります。
個人再生においても、破産における否認相当行為があった場合には、清算価値に処分した財産が計上されます。

具体的には、直前の処分行為について、不当に廉価な財産処分をしていないか、贈与行為ではないか、財産逸失行為に該当しないか、費消しやすい財産に形を変えて費消したのではないか、特定の債権者に対する不公平な弁済行為になっていないか、などが問題となります。

 

贈与行為等無償行為、偏波弁済(特定の債権者だけに対する弁済)行為は、基本的に、否認対象行為あるいは免責不許可事由になります。
できるだけ避けなければなりません。

 

贈与行為でよく問題になるのは交際相手への贈与、偏頗弁済でよく問題になるのが親族への弁済ですね(よくあるので気を付けてください)。
 

なお、偏波弁済では、給与天引きの弁済も問題となります。弁護士が受任通知を送っても破産開始決定等がないと天引きを止めないケースが結構あります。
理屈上は偏波弁済行為に当たり得るのです。
破産管財人から弁済額の返還請求をされることがあります(実際に破産管財人として請求をしたこともあります)。

 

勿論、贈与行為でも、扶養義務者の被扶養者に対する扶養義務履行行為とみられる行為は大丈夫です。程度問題です。

 

不動産の処分はよくお手伝いしますが慎重に行います。
 

自己破産申立費用を捻出するための売却、抵当権者に促されて行う任意売却のケースが多いでしょうか。


中には、なんとか不動産を残したいということで、親族間で売買をすることもあります。


積極的に問題がない行為ですとは申し上げられないですが、処分行為があったこと自体で、即、管財事件になったり、あるいは免責不許可事由、否認対象行為となったりするわけではありません。
 

妥当な内容の売買で、かつ代金の管理・費消も妥当であると認められれば問題はありません。

裁判所に必ず妥当性を確認されますので、できれば弁護士が関与した方がいいです。

弁護士が、
適正な売買価格かどうか、

売買代金をどのように管理したか(弁護士が管理した方がベターです)、

何に費消していくら残っているのか、

などをきちんと説明します。
 

換価した結果の金銭の費消は、弁護士費用、申立て費用、必要最小限度の生活費などに対するものが許されます。
自由に使っていいわけではありません。

 

車の処分もありますね。


駐車場や税金の問題で維持できないケースが典型でしょうか。

こちらも適正価格か、売買代金額の管理が肝要です。売却する前に車検証の写しを取っておくこと、走行距離等車の状態を写真に残しておくこと、できれば査定書を取っておくことも大事です。

 

中には、なんとか車を残したので親族間で売買をするということもあります。


単純な売買や、所有権留保債権者から名義変更を受ける形での売買もあります。

管財事件にならないために車を現金化するという目的(現金化すると同時廃止・管財事件の振り分け基準によると同時廃止の可能性が高まり得る。)もある場合もあるかもしれません。


車の処分も裁判所に妥当性を確認されます。説明が必要なので、弁護士に相談しながら進めた方がいいでしょう。

 

なお、直前の現金化は、財産の性質をもともとの財産として見て自由財産拡張対象の判断がなされるリスクもあります。
そもそも自由財産拡張対象財産して認められない財産-不動産、株式など-を現金化しても、もともとの財産の形で残っていると仮定して自由財産拡張対象から外されるリスクです。
ケースバイケースの判断です。

 

保険の解約、保険契約者貸付も最近よく見ます。
 

こちらは少なくとも広島ではある程度許されています。

保険の財産評価は解約返戻金額で行うのですが、契約者貸付を受けているとその額を控除した金額になります。解約したら現金預金としての評価ですね。
広島本庁であれば、管財事件になる基準が保険解約返戻金だと20万円、現預金だと50万円です。
そのままでは管財事件になるけれども、保険を解約する、あるいは契約者貸付を受けるだけで、管財事件にならなくて済むケースがあるのです。

 

財産処分のお話をしてきましたが、具体的に当該財産の処分をする方がいいのかどうか、する場合の妥当性を保つにはどうしたらいいかの判断は、ケースバイケースで行う必要があります。

一概にこのような行為はよいと判断することができず、処分の必要性と考えられるリスクを考量して判断しなければいけません。

 

お早めに弁護士に相談し、計画的に物事を進めることをお薦めします。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

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