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旧コラム 8ページ目

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法人税法その2 [税法のお話12]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

法人税法の続きです。

 

法人税と所得税の大きな違いをまずお話します。
 

まず、所得税は所得の種類によって税金のかけ方が違います。

所得税法は、担税力に応じて所得を10種類に分け、異なる税金のかけ方をしています。

これに対し、法人の所得は1つです。
一律課税ですね。

個人の場合は、所得の分類によって税金が変わりますので、どの所得で申告するべきかが問題となりますが、法人はそのようなことは考える必要はありません。
 

また、所得税は超過累進課税ですね。
これに対して法人は基本的に一律税率です。

個人の場合は所得の分散ができればそれだけ節税になります。法人の場合はそうではないですね。
個人の節税のために法人と個人との所得分散を図ることはよく考えられることになります。

 

ちなみに、事業承継対策のスキームを考える際には、上述のような法人と個人とでの税金の違いを意識してスキームを組み立てる必要があります。
事業承継対策は、オーナー・会社・後継者の間のスムーズな資産移転を考えることになるからです。

  

さて、前回は、法人税法の所得計算の柱の1つである「益金」について簡単にお話ししました。
今回は、もう1つの柱である「損金」について簡単にお話しします。
簡単と言っても2回に分けざるを得ません。

 

まず、「損金」を定める法人税法22条3項では、

1 売上原価、完成工事原価その他の原価

2 販売費、一般管理費その他の費用

3 損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

を損金に計上すると定められています。

 

【売上原価について】 

□ 費用収益対応の原則       

法人税法は「当該事業年度の収益に係る・・・原価の額」と定めています。

個別に収益と対応する費用ですね。

収益をある事業年度に計上する場合には、当該収益に係る売上原価も当該事業年度に計上し、適正な期間損益計算を確保する原則です。

 

□ 棚卸資産の評価方法(法人税法29条、同施行令28)

売上原価計算の基本は、期首棚卸資産+当期仕入額‐期末棚卸資産ですね。

期首棚卸資産と登記仕入額の2つは確定しているはずですから、決算内容そして所得内容は、期末棚卸資産の評価により左右されるわけです。

棚卸資産の評価方法として、法人税法は例外規定(63条、64条)のみおき、明文規定がありません。
そこで、基本的には企業会計原則(法人税法22条4項)に従います。

自由に評価していいわけではありません。
棚卸資産の評価は粉飾・脱税の方法によく使われるため、施行令により、棚卸資産の評価方法の税務署長への届出、変更する場合の税務署長の承認が必要となっています。
注意してください。

認められている評価方法はいくつもあります。

個別法、先入先出法、平均原価法、売価還元原価法、総平均法、最終仕入原価法(これが一応の法定評価方法です)、売価還元法ですね。

業種・業態によって向き不向きがあります。

 

【販管費、営業外費用について】

□ 債務確定主義
債務が確定したもののみ損金に計上できます。条文で「債務の確定しないもの」を費用から除外しています(法人税法22条3項2号)。
期間対応費用ですので、計上の恣意性を排除し会計報告の客観性確保する趣旨です。債務確定基準といいます。
したがって、資産の評価損(法人税法33条)は、例外を除いて、原則として損金計上できません。
また、費用見越・引当金の損金算入も原則として禁止されます。


なお、最高裁H16.10.29判決では、売上原価の例ですが、費用の見積り計上が、支出の相当程度の確実性、金額の適正な見積りの可能性が認められる事実関係の下では、当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が確定していないときであっても売上原価として損金の額に算入することができると、認められています。

 

【損失の額で資本等取引以外の取引に係るものについて】

□ 貸倒損失
例として貸倒損失をお話しします。
金銭債権の評価減は原則認められません(法人税法33条)。
したがって、金銭債権の貸倒損失を損金の額に算入するには、その全額が回収不能であることが必要です(一部貸倒処理は認められていないのです)。

かつ、回収不能であることが客観的かつ確実であることが必要とされています

この点で、有名な興銀事件最高裁H16.12.24判決では、住専処理計画に沿った母体行による債権放棄の例で、「当該事業年度の損失の額」として損金に計上できる基準について「債権者側の事情」「経済的環境」等も考慮するべきとしています。

 

長くなりましたので、今回はここで終わりとさせていただきます。

次回に損金の続きをお話します。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

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法人税法その1 [税法のお話11]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

法人税法のお話をしていこうと思います。
法人税法は所得税法より捉えどころのない法律です。技術的な規定が多いのです。基本的には企業会計原則に則っているからでしょう(法人税法22条4項)。

 

所得計算の基礎を中心にお話をしていこうと思います。

 

【法人税法の所得計算】

 

法人税計算の作業の過程は、

① 生の資料の整理

② 仕訳伝票の作成

③ 元帳の記入

④ 試算表の作成

⑤ 確定決算書の作成(決算調整)→ 株主総会の承認

⑥ 申告調整(別表、特に別表四、内訳書)

⑦ 確定申告

の流れです。

 

大事なのは会計上の損益(確定決算書の数字)がそのまま法人税法の所得計算にならないところですね。

企業会計上は、「収益」=「収入」-「費用」で損益を出します。損益法といいます。

これに対して、法人税法22条は、課税標準である法人の各事情年度の所得の金額計算の通則を定めており、その計算は、「所得」=「益金」‐「損金」なのです。

収益=収入―費用

所得=益金‐損金

は似て非なるものです。

確定決算に基づく損益計算結果に、法人税法上の、益金(不)算入項目、損金(不)参入項目を減加算し、法人税法上の所得金額を算出しなければなりません。

それを申告調整といいます。企業会計を基礎として修正する形です。申告書の書式もそのような流れに沿って作成されています。

 

企業会計が、利害関係者に対する適切な表示を目的とするのに対して、法人税法は、担税力を適正に測定し課税公平をはかることを目的とします。目的が違うためのズレですね。

 

法人税法の解釈としては、「益金」と「損金」を明らかにすることがメインテーマとなります。

 

まず、「益金」のことを簡単にお話します。

 

【益金(法人税法22条2項)】

 

□「取引」に係る収益であること

条文上、「取引」に係る収益のみ益金に計上されます。

※ まず、条文上、資本等取引を除きます(法人税法22条4項)。資本維持の要請から資本取引と損益取引とが峻別されており、資本等取引(出資の受け入れ払出し等)からは益金は発生しないとなっております。企業会計と同じですね。デット・エクイティ・スワップ(DES)など資本等取引と他の取引との混合取引については、資本等取引以外の収益取引部分(DESなら債務免除)には課税があります。

※「取引」に係る収益が把握されるため、対外的取引によって生じた収益(実現主義)のみが益金です。そのため、未実現利益は課税の対象から除外されます。資産の評価益(法人税法25条)は益金に算入されません。企業利益は対外的取引によって生じた損益をもって計上する建前ですから、原則的に資産の評価替えによる増加益は益金に含まないのです。例外は一部で認められている時価主義です。

※「取引」すべてが益金発生原因となります。そのため、益金は合法・非合法・金銭・非金銭問わないという包括的所得概念が採用されているとされます。法律上取り戻されかねない違法な収益も益金になり得ます。

※「取引」は法的取引に限られません。有名なオウブンシャホールディング事件(最高裁H18.1.24判決)では、直接取引がなくても、資産価値の移転につき両当事者の合意ないし意図・了解が存在する場合には「取引」とされました。子会社を利用した資産価値移転の例です。

 

□ 収益計上基準について
権利確定主義が採用されているとされています。判例も、「ある収益をどの事業年度に計上すべきかは、一般的に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきもの」としています。
売買なら引渡しのとき、請負なら仕事完成あるいは引渡しが必要な仕事なら引渡し時、不動産仲介手数料なら販売時点といった感じです。実際にお金を払ってもらった時点で益金に計上する現金主義は原則採用できないことになっています。
勿論、権利が確定した時といっても具体的な判定は難しいですね。具体的に判断されます。少なくとも、法的に把握された収入実現の蓋然性に着目する考え方で、債権の現実的な回収可能性に関わるものではありません。債権の発生が確定したらその回収可能性は別問題となります(貸倒損失の話)。

※ この点で、法人税法22の2が創設されました。企業会計基準委員会「収益認識に関する会計基準」に沿った改正です。次のような規定になっています。

1項・・・ 引渡基準または役務提供基準

2項・・・ 契約効力発生日基準または検収日基準の例外

3項・・・ 確定決算と確定申告の不一致の解消

4項、5項・・・益金に算入する金額(通常得べき対価-時価)

6項・・・資本等取引と損益取引の混合取引(損益取引の要素から損益が生ずる)


※ いろいろな判例があるのですが、1つだけ紹介しましょう。
詐欺・横領被害による損害賠償請求権の計上時期という問題です。不法行為の被害者は損害賠償請求権を取得します。損失の損金計上と同時にそれを益金計上すると税額には影響しませんね(損益が相殺される)。勿論、損害賠償請求権が全額回収不能であることが客観的に明らかになった時点では損害賠償請求権は当該事業年度の貸倒損失(法人税法22条3項)として損金に算入できます。
裁判所は、そのような場合、不法行為による損失は法人税法22条3項3号にいう損失の額に該当し、その額を損失が発生した年度の損金に計上する。一方、損害が発生した時に不法行為による損害賠償請求権も発生し、確定するから同時に損金と益金に計上するのが原則(同時両建説)としました。
例外として、加害者を知ることが困難なため権利行使を期待できない場合には、損害賠償請求権は益金に計上しないことが許されます(客観的状況から判断されますので簡単に認められない傾向です)。


※ 権利確定主義の例外もあります。
リース取引、長期大規模工事、一事業年度を超える工事、などですね。工事完成基準等の採用が義務付けあるいは選択できることになっています。
また、一部、時価主義も採用されています。未実現利益の益金算入です。短期売買商品、売買目的有価証券その他デリバティブ、外貨取引等です。

 

□ 「無償」行為からも益金が発生すること
これが非常にわかりにくい話です。法人税法22条2項は、資産の無償譲渡・役務の無償提供その他無償取引に係る収益も益金に算入すると定めています。資産の無償譲渡は時価相当額が、無利息融資の場合は通常の利息相当額が、債務免除益は経済的利益相当額が、個人からの遺贈は時価相当額が、それぞれ益金に算入されます。気を付けないといけないところです。

※ 適正所得算出説
収益は外部からの経済的価値の流入です。無償取引の場合には経済的価値の流入が存在しないはずです。しかし、正常な対価で取引を行った者との負担の公平、競争中立性の観点から無償取引からも収益が発生することを擬制している創設規定とされています。


※「無償」には、低額譲渡等の場合も含まれます。
南西通商事件、最高裁H7.12.19判決です。時価との差額も益金として把握される(結局時価で売却したのと同じになる)ことになります。
なお、実質的に贈与・無償の供与をしたと認められる部分は譲渡の相手方に対する関係では寄付金に算入されます(法人税法37条8号)。
新株の有利発行も時価と払込価額の差額は低額による資産の譲受けによるものとして益金が発生する可能性があります。

 

以上、所得計算の柱の1つである「益金」について簡単にお話ししました。

次回はもう1つの柱である「損金」についてお話しします。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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紛争解決に正解なし [閑話休題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

紛争解決に正解はありません。
というと投げやりな感じがします。
しかし、真面目なお話です。

 
訴訟での解決が正解なのでしょうか。


勿論、訴訟を経由して判決が出て確定した場合は、その結果を受け入れるしかありません。

ただ、それが本当にベストな解決策であったかはわかりません。

 

判決では100:0の結果とならざるを得ない場合も、実際には双方に落ち度があることは珍しくありません。
理屈上どちらかを勝たせないといけないので、原告の請求が立証され裁判官が確信に至ったかどうかで勝訴・敗訴の結論は出ます。
基本的には〇か×かの二者択一です。

 

不法行為が典型的である過失相殺が適用される場面であれば、過失割合によって双方の利益の調整ができます。しかし、そうでない場合には基本的には100:0の判決なのですね。
勿論、項目によって請求が分けられる訴訟であれば、その項目ごとに基本的に100:0で判断され、全体としては中間的な解決になることはありますが。

 

6:4で原告が有利でも立証が足りないとして原告が負けてしまいますし、8:2で被告の言い分も理解できても被告が全負けをするということが起こりえます。
勿論、6:4とか8:2と言っても、裁判官の心証の問題なので、外からは見えませんが。

 

そのため、訴訟でも、具体的な妥当性を求めて裁判官から和解勧奨等がなされ、その結果、和解で解決する事案が多いです。

なお、和解勧奨があった場合には、その内容により裁判官の心証がある程度わかります。
有利な内容の場合には、勝訴の可能性が高いですが、控訴された場合のコスト及び判断が変わるリスクを考えます。
不利な場合には、敗訴の可能性が高いのですが、控訴のコスト及び判断が変わる見込みを考慮して和解に応じるかどうかを決断することになります。

 

なお、訴訟に真相究明あるいは正義の実現を求める方もいらっしゃいます。

そのような理由での訴訟提起はお薦めしておりませんし、そのようなご依頼は基本的にお断りしています。

勿論弁護士である以上、社会的正義の実現を目指す心構えはあります。
しかし、残念ながら、訴訟は、法的な権利があるという主張が立証できるかどうかだけを判断する場で、大岡裁判のように真相究明が図られる場ではないです。
また、権利の有無を確定する手続きであり、正邪を判断する場でもなりません。
あくまでも法的解決を図るための訴訟です。
訴訟は、真実ではなく証拠等に基づいて認定できる法的な事実を基に、正義ではなく法令に基づいて、正邪ではなく法的な権利の有無を判断する手続と考えてください。

 

一方、訴訟に至らない解決の場合、権限をもって判断してくれる人はいません。


そのため、法的な判断は基礎としながら、最終的には折り合いが付くかどうかという判断をしないといけません。
協議が進んでいった場合に、最終的には和解をするのか、訴訟提起等法的手続による解決を望むかの選択をすることになります。正解があるわけではなりません。


最終的に法的手続による解決を望まれるのかそうではないのかによって、交渉の進め方も変わります。

また、訴訟等での解決に馴染まない事案もあるのも確かです。


交渉案件は、主張・立証を重ねればいい訴訟とは異なって、様々な考慮しながら進めることなので、弁護士にとってはかえって難しいこともあります。

 

紛争解決のご相談を受けた際には、まずはどういう解決を望まれているかをお聞きします。
その目的を達成しうる法的構成、主張、現時点でわかる見込み、交渉⇒訴訟等の法的手続に至った場合の想定できるコスト・リスクなどを説明させていただいた上で、どこにも正解はないという前提で方針を選択・決断をしていただくことにしています。

 

残念ながら思いどおりの結果になる訴訟は多くはありません。
法律の縛りがありますし、相手の言い分もあります。誰が見ても絶対勝てる裁判ばかりであれば、そもそも多くは裁判にならずに相手が諦めるだろうと思います。
依頼者様が絶対に勝てるはずだと考えていらっしゃっても、実際に訴訟をしてみると被告からある程度合理性のある反論が出てくることも珍しくはありません。
依頼時に正確な見込みを立てるのは難しいところです。

 

ご相談を受けた弁護士の役割としては、できるだけ多くの情報を相談者の方に提供して考えていただくことなのだろうと思っています。
弁護士が結論に飛びつくのは望ましくないと考えております。

 

なお、債務整理のご相談も正解はありません。
相談者の方の生活状況や取り巻く環境に応じて任意整理、民事再生、自己破産のどれを選択するべきか異なります。
債務整理をしないという結論もあり得ます。
また、手続を選択したとして、どうしても残るリスクがある場合もあります。こちらも、よくお話を聞き、選択肢やリスクを説明した上で、ご決断をしていただくことにしています。

 

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低額譲渡・無償譲渡 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の企業法務コラムでは、法人が絡むことの多い低額譲渡・無償譲渡についてお話ししようと思います。

個人・法人間の低額譲渡・無償譲渡は事業承継対策や相続紛争の処理などで見受けられますね。
節税対策としても行われるのでしょう。法人と法人間のものも、グループ戦略の変更や節税対策などで行われることがあるでしょう。

 

法律的にきちんと契約あるいは遺言をして譲渡を成立させることは当然の前提です。

今回は、そのような行為に伴うリスクについてお話しましょう。

 

【個人→個人の場合】

(無償譲渡)

個人間の贈与ですからこちらは単純です。
贈与者には課税はありません。

受贈者には贈与税課税がなされます(相続税評価ベース)。

暦年贈与は別として、大きな資産の贈与は、相続時精算課税制度あるいは事業承継対策税制等の特例の利用を検討することになるでしょう。

 

(低額譲渡)

売主は当事者間で決めた代金額を収入として譲渡所得課税の問題となります。

低額譲渡とされると、買主には贈与税課税があります(相続税法7条)。相続税評価額と代金額の差額が贈与とみなされます(みなし贈与)。

低額譲渡(「著しく低い価額」による取引)かどうかについては、所得税法と異なり、基準がありません。
時価の2分の1以上での取引でも否認される可能性があります。

事業承継対策として株式を買い取る際の価格設定には注意ですね。

 

なお、みなし贈与については、同族会社における増資による出資持分の価値の変動や同族会社の資産の低額譲受のケースでも問題になり得る怖い制度です。

 

【個人→法人の場合】

(無償譲渡)

個人には譲渡所得税です。所得税法59条11号のみなし譲渡です。

時価(相続税評価ではありません)で売却したものとみなされる点に注意が必要です。かなりの税金を覚悟しないといけないケースがあります。

法人は、時価で益金計上され、法人税課税されることになります。

事業承継対策で事業用不動産を法人に遺贈する場合など気を付けてください!

 

(低額譲渡)

個人は、みなし譲渡です(所得税法59条1項2号)。

低額譲渡に当たるかは、時価の2分の1を下回るかどうかが基準になります。
低額譲渡となると、代金ベースではなく時価ベースで譲渡所得税が課されます。

法人は時価と実際の代金の差額について、法人税課税されることになりますね。

 

【法人→個人の場合】

(無償譲渡)

法人は時価での譲渡があったものとして法人税課税されます(法人税法22条2項)。

個人は役員等であれば給与所得、その他では一時所得での所得税課税です。

ベースはやはり時価です。

 

(低額譲渡)

無償譲渡と同じ考え方です。
法人は時価での譲渡があったものとして法人税課税です。

時価と代金の差額について、個人の給与所得あるいは一時所得での所得税課税ですね。

 

【法人→法人の場合】

(無償譲渡)

譲渡法人は時価での取引をしたとみなされ、譲受法人も時価で取得したものとして法人税課税があります。

(低額譲渡)

譲渡法人は時価での取引をしたとみなされ、譲受法人も時価で取得したものとして(時価と代金の差額)に法人税課税があります。

 

なお、同族会社の行為・計算否認という怖い否認規定(所得税法157条、法人税法132条の2、相続税法64条、地法税法72条の43)があります。

税負担を不当に減少させる結果となる行為は(当該行為又は計算が通常の経済人の行為として不合理、不自然なものと認められるかが基準です)、正常な行為や計算に引き直して更正または決定を行う権限が税務署長に認められています。
同族中小企業が絡む行為は常にこの危険があります。

 

イレギュラーな資産譲渡をする場合には、法律面だけではなく税務面からも慎重に検討して進めなければいけません。

 

顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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相続共有株式がある場合の役員変更 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続共有株式(遺産分割が完了していない)株式がある場合のMAのお手伝いをすることがあります。
相続をきっかけに
MAをするということも珍しくありません。

 

相続共有株式が50%、形式は株式譲渡とします。

全体の株式譲渡は遺産分割を待たなければ事実上できませんが(相続により法定相続分に応じて自動的に分割されるわけではありません。遺産分割が完了しないと共有状態が続くのですぐに株式そのものを譲渡することができません)、経営体制の変更のために先行して役員変更を行わないといけないことも考えられます。

 

取締役は株主総会で選解任を行います。
有効に取締役選任の株主総会決議ができるかということが問題となります。

 

相続共有株式(正確には株式は物ではないので準共有株式と称します)は、権利行使者の届出をしないと権利行使をすることができません。

ただ、届け出がなくとも会社が権利行使をすることに同意すればよいとされています(会社法106条)。

 

しかし、判例があります。

株主権の行使は、それが株式の処分に匹敵するような特段の事情がない限り、民法の共有物の管理行為(民法252条)に該当し、権利行使者の選定は各共有者の持ち分の価格に従いその過半数で決するとされました。会社からの権利行使の同意も持分過半数の共有者の同意がなければならないとされています。

 

相続持分が2分の1ずつの場合、遺産分割で争いが起きているときは、権利行使者の届出に関する合意ができないことが多いのではないでしょうか。

その場合、共有株式について権利行使ができないということになりますね。

 

ところが、株主総会の定足数には、相続共有株式も入ります。

 

通常の株主総会決議(普通決議)の定足数は、過半数株主の出席とされている場合が多いでしょう。会社法の原則なので(会社法309条1項)。

 

半数の株式が相続共有株式で権利行使者を届けることもできない、会社も権利行使を認めることができないということになれば、過半数の定足数を満たさず役員変更決議が有効にできないことになりますね。

 

その場合は定款を確認します。

会社法所定の定足数は定款の定めにより下げることができます。

なお、役員選任決議は特殊な決議として3分の1までしか定足数を下げることはできません(会社法341条)。

そのため、定款にて3分の1に定足数を下げているかどうか確認しないといけないことになりますね。

 

定款にて定足数を3分の1まで下げている場合には、上述の例においても、半数株主の出席により役員の選任決議が可能ということになります。

 

なお、株主総会を開催する場合には、全員株主が出席できるわけではないため、株主総会の招集通知を出さないといけませんね。

 

会社法126条3項・4項に共有株式の場合の会社からの通知方法が定められています。共有者が通知等を受領する者1人を定め会社に通知しないといけない、それがない場合には、会社は共有者のうちの1人に対する通知等をすれば足りるとされています。

共有者からの通知は、先の判例から推測するとやはり過半数持分で決めるのでしょう。

そうであれば、上の例では共有者の1人(MAの売主)に通知をすれば足りるということになるでしょう。

 

このような次第で、定款の定めによっては、上記の例でも取締役の選任決議ができることになります。

 

なお、相続共有株式を作出しないようにすることが肝心なことは当然です。生前贈与あるいは遺言書にて後継者に引き継がないといけません(遺言に対する遺留分については民法改正で今後は金銭請求となります。遺留分減殺請求という形で共有株式を作出することはなくなるわけです)。

勿論、共有相続に限らず、中小企業において株式の分散は避けた方が無難です。少なくともMA事業承継においては困りますね。

 

顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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法人破産のための準備など2 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

法人破産の準備はどうするべきかの続きです。

 

◇ 財産処分・整理

(決算書記載資産)

決算書に記載されている資産項目については、すべて説明をして、現金化できるものはしておくということが基本です。
破産管財人の手間を少しでも削減する意味もあります。
すぐに現金化できないものは破産管財人に引き継ぐことになります。

 

(銀行関係)

借入のある金融機関が絡む保険、共済、定期預金等は解約できるうちに早めに現金化します。申立費用等を捻出する必要がありますしね。
現金化債権者平等原則に従って破産手続により平等に弁済する、あるいは債権者共通の利益に費消するということですので、後ろめたいことはありません。


借入のない金融機関の預金については、もう使わなくていいというタイミングで解約していただきます。


当座取引があり手形帳、小切手帳がある場合には弁護士に預けてください。


貸金庫契約がある場合もあります、中身を空にして解約をしていただきます。

 

(機械・工具、什器・備品)

まずは固定資産台帳の確認です。台帳記載資産のチェックをします。

台帳記載以外の一括償却資産、償却済み資産については、最終的にリストは作成していただきます。

処分をするかどうかはケースバイケースの判断ですね。実際に現場を拝見してからの判断になります。
賃貸物件の整理の必要性からは処分を急ぐ場合もあります。破産管財人の立場ですが、工場内の機械類一式を競争入札で売却したことがあります。

自動車については、使わないタイミングで鍵を預かります。自動車保険についても使わなくなったタイミングで解約をしてもらいます。

 

(既に処分した資産)

法人破産を決断する前には資金繰りのために様々な資産を現金化していることが多いです。
少なくとも半年前、かつ直近決算後の売却、解約等の現金化については説明をしないといけません。
解約関係書類を探していただくことになります。使途も説明しなければなりません。

 

(保証人の銀行資産)

受任通知を銀行に出すと、保証人の口座も凍結され、相殺されることになります。
受任通知を出す金融機関には、法人・個人とも資産がない状態が理想です。忘れることがあるので気を付けてください。

 

◇ 賃貸物件

明渡しをしないといけませんね。弁護士が受任通知を出した上で、弁護士が折衝をすることになるでしょう。

中のものを処分整理して明渡しが可能なら明渡しをします。

中にある物の処分が難しい、あるいは処分費用がかなりかかる等の理由で、明渡しを破産管財人に引き継がなければならないケースも多いです。

勿論、家主と和解的な解決により(原状回復費用が払えないという前提で)、早期の明渡しが可能な場合もあります。

 

◇ リース、所有権留保物件

リース物件、所有権留保物件は返却します。弁護士が受任通知を出せば返還の要請が来ます。確認のため契約書は弁護士に渡してください。

自動車では、予め弁護士に車検証を確認してもらってください。きちんと所有権留保の形の所有者登録ができていない場合には、そのまま返却することができません。

場合によっては、債権者から所有権を放棄される、無償譲渡される場合もあります。そうなるとこちらで処分するか破産管財人に引き継ぐかをしないといけません。

 

◇ 帳簿、税理士

事業廃止までの帳簿はきちんとつけていただきます。

事業廃止後ですが、少なくとも領収書や請求書など帳簿作成に必要な資料を整理・保管してもらいます。

資金がある場合には、税理士への依頼を継続してもらうこともあります。

 

◇ 不動産

不動産については、処分が可能(担保に入っていない)かつ売却をしないと破産申立資金が捻出できない場合には、弁護士関与の下で適正価格にて売却します。
売却資金の使途はきちんと説明しなければなりません。

それ以外はそのまま破産管財人に引き渡します(鍵を弁護士に預けることになります)。

勿論、お邪魔して、写真を撮り、状況を報告します。

 

◇ 許可、認可、登録

法人破産をすれば最終的に法人はなくなります。営業を廃止した後に、営業に必要な許可、認可、登録などは抹消等を届けてもらいます。

 

◇ 仕掛の仕事

基本的には営業廃止にかかる仕事は受けないようにしてもらいます。

それでも残ってします仕掛仕事は、契約書を基に一覧表を作成します。対応ができるものはしていただくこともあります。

賃貸管理会社の破産の場合にもそうでしたが、継続的な仕事についてもリストを作成し、顧客に営業廃止後の対応を説明しないといけないですね。

 

まだまだ法人破産の準備の話は尽きませんが、この辺までにしておこうと思います。法人破産はオーダーメイド色が強いです。できるだけ早く弁護士の助けを得て、ご準備ください。
本格的な準備は営業廃止後ですが、その前にやっておかないといけないこともあります。

ざっと法人破産の準備についてお話いたしました。
勿論、個別の問題毎にもう少し掘り下げて説明しないといけない点が多々あります。機会を見て説明していきますね。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

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法人破産のための準備など1 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

現在複数の法人破産申立て準備を並行して行っていることもあり、法人破産についてご質問が多い点などを五月雨式に説明させていただこうと思います。

 

法人の自己破産時の準備は多岐にわかります。かつ、ケースバイケースの判断が必要になります。

やるべきこと、やっていいこと、やってはいけないことの判断をしながら進めることになります。弁護士もスキル・経験が必要な分野ですね。

 

法人破産を決断される経営者の方々は非常に苦労をされてきています。
簡単に自己破産をしたいとおっしゃる方はいらっしゃいません。万策尽きて弁護士に駆け込まれる方が多いです。

 とはいえ、法人破産の準備は多岐にわたり大変です。経営者の方々にはもう一踏ん張りしていただくことになり恐縮です。

弁護士に早期に相談され、弁護士のサポートを受けながら頑張ってください。

 

2回に分けてお話ししますね(それでも話は尽きませんが・・・)。

 

◇ 従業員関係

(解雇・退職)

事業廃止日が決まれば、従業員の方々を解雇する、あるいは従業員の方に退職していただかなければなりません。
規模が割合小さい会社であると自主的に退職していただけるケースも多くあります。

 

従業員さんの生活のことを考えるとできるだけ早くお話をした方がいいでしょう。解雇をする場合には30日間の解雇予告をするのが通常です。

一方で、あまり早く事業廃止のことを伝えると業務に支障を来すことも予想されます。
給与あるいは解雇予告手当を支払って最後まで働いていただくことが理想ではありますが、悩ましいです。
法人破産はある程度資金が必要であり、資金繰りとの関係でケースバイケースの判断になりますね。

 

なお、破産準備のため「この人がいないと困る。」という経理担当の方などがいらっしゃる場合もあります。
その場合には、引き続きお手伝いをいただき、ある程度の報酬を支払う、あるいは退職時期をずらしてもらうこともあります。

 

賃金等の未払いが残った場合にはどうなるのでしょうか。
破産財団からの支払いができるか、労働福祉事業団立替制度(約6か月分の未払い給与と退職金の80%かつ限度額以内を受けられる制度)の問題になります。
手続に時間はかかりますが、破産管財人に引き継ぐことになります。

なお、賃金台帳、対三カード、就業規則はきちんと弁護士に引き継いでください。

 

(その他)

社会保険の異動手続、住民税の異動手続、ハローワークの手続をしていただかないといけません。

 

◇ 税金関係

税金の支払いをどうすればいいかも悩みます。

差押えをされても困るところですが(破産をするといっても差し押さえてきます!)、資金繰りを睨んでの対応となりますね。

仮に資金手当てができるのであれば、税金の支払いは基本的にはOKです(一般の破産債権よりも優先される財団債権であればという意味です)。
弁護士と相談ですね。資金捻出状況との兼ね合いで決めています。

 

◇ お金の管理

法人破産の場合は、事業を廃止する以上、事業廃止のタイミングあるいはその直前かけて、弁護士が管理をすることが通常です。

もちろん、ある程度のお金は保管していただき、必要な支出に対応していただきます。

その場合、収支を明確にするため、現金出納帳を作成していただき、ごみ処理などの領収書なども保管していただきます。

資産を換価したお金も含めて、弁護士費用、申立費用、どうしても支払う必要がある費用に支出していきます。

 

◇ 売掛金の回収

売掛金台帳、納品書・請求書綴り、注文伝票綴りは整備・保管することを求められます。
ただ、そこまでできない場合も多いのです。

事業廃止時点での売掛金リストを作成してもらい、それで管理をしていくことが多いでしょう。
 

借り入れのある銀行の法人口座は受任通知により凍結されます。
法人破産の場合の凍結後の入金は金融機関が引き出しを拒むでしょう(破産法上相殺は許されませんし、破産管財人からの引き出しの要求は拒めないはずなのですが)。
振込先を借り入れのない銀行口座に変更してもらう、現金で集金する、あるいは弁護士口座に直接振り込んでもらうなどの対処をしなければなりません。
金融機関への受任通知のタイミングも弁護士とよくよく相談しないといけません。

 

◇ 買掛先への対応

買掛先リストを作成してもらい弁護士が受任通知を出します。

それでも仕入先からの返品要請などが来ることがあると思います。弁護士に回してもらい対応します。基本的には返品には応じられません。

取り付け騒ぎの可能性もあります(窃盗行為なのですが・・・)。営業所等のセキュリティーはきちんとしてもらいます。
弁護士名での張り紙をすることもありますね。

 

なお、買掛先に限らず、債権者はすべて弁護士に報告してください。
請求書などが来る都度報告してもらえれば受任通知を出します。

 

◇在庫の処理

事業廃止に向けて在庫は圧縮してもらいます。

棚卸台帳、納品書・請求書綴り、注文伝票綴りは整備保管することを求められます。
こちらもきちんとできない場合は珍しくなく、最終的には簡単な在庫リストを作成してもらうことが多いです。

 

破産申立て前に、弁護士関与の下、適正価格(もちろん通常の販売価格では処分できませんが)で在庫処分をすることもあります。
保管場所の明渡しのため、今すぐになら売却できる、といった事情がある場合などです。勿論、生鮮食品等、劣化するものは早期の処分が必要ですね。
破産管財人が最終的判断した方がよさそうなものはそのまま引き継ぎます。

処分をしたものについては、勿論記録を残さないといけません。

 ごみとして処分するべきものも記録を残した上で廃棄になります。

 

◇ その他各種契約

法人の営業をしていると様々な契約を伴います。
法人破産の場合は、申立て前にすべて契約関係を解消してもらうのが原則です(簡単に解約できるものはという意味です)。
契約書と解約関係書類は保管して弁護士に引継ぎます。

それにより違約金等が発生する場合には債権者に追加します。逆にお金が返ってくる場合にはそのお金はきちんと管理しないといけません。

 

◇ 公共料金

営業所の水道、ガス、電気、電話などですね。

ガスや電話は事業廃止に伴いすぐに止めていいことがほとんどでしょう。勿論、自宅兼事務所の場合は別です。
 

水道、電気はタイミングを図って止めます。
事業廃止後も整理などで立入りが必要です(倉庫のシャッターやクレーンが電動で整理するためには通電が必要というケースもありました)。

そのため、水道・電気は止めないままで破産管財人に引き継ぐことも多いです。

次回も続きをお話しします。

  

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債務整理と給与差押え [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の借金問題コラムでは、債務整理と給与差押えの関係について改めてまとめておきたいと思います。

 

◇ 金融債務延滞と給与差押え

金融債務を延滞すると、まず督促状が来て、その後約款に基づいて期限の利益が喪失されます。

期限の利益の喪失とは、支払期限の約束(債務者の利益ですから期限の利益です)がなくなり、一括請求されることです。


保証会社がある場合には代位弁済をされた上で、支払督促あるいは訴状が届き、判決等の債務名義(強制執行ができる文書のこと)が取られ、給与等に強制執行がなされます(なお、執行認諾文書のある公正証書を作成されている場合には法的手続なしに差押え可能です)。


強制執行が申し立てられると、裁判所から勤務先に通知が届き、給与が差し押さえられます。その後は、給与から税金・社会保険を控除した額の4分の1(ただし、33万円を超える部分は全額)の支払いを受けられなくなります。通常、給与明細上控除されます。


なお、理屈上は、支払督促あるいは訴状提出の前に仮差押えという手続きを採ることも考えられますが、あまり見受けられません。


勤務先が知られている債権者に対して延滞が発生した場合には、できるだけ早く債務整理を行った方が得策です。給与差押えの危険が伴います。

 

◇ 任意整理と給与差押え

任意整理で解決することは困難です。

既に債務名義を取られているので、債務全額に加え執行費用の支払いをするしかないのが基本です。

分割払いの交渉に応じてくれる例はほとんどないと考えていいです。

 

◇ 自己破産と給与差押え

(相談時に既に差押えがなされている場合)

できるだけ急いで自己破産を申し立てることになります。そして、裁判所からの宿題に答える等して破産開始決定を得ます。裁判所にできるだけ早い開始決定をお願いすることもあります。
 

破産開始決定が出て、それが管財事件の場合は、強制執行手続が失効することになります。
給与を全額貰えるようになるわけです(もちろん新得財産となり裁判所に取られることはありません)。


同時廃止事件の場合は、申立人側から強制執行の中止の申立てをすることになります。
ただし、強制執行が中止されても、差押え自体がなくなるわけではありません。免責許可が確定したときに強制執行が失効します。
勤務先はその間は、差押え額をプールして(債権者への支払いを留保して)、免責許可が確定したときにプール金を破産者に渡すことになります。複数の債権者から差押えがある場合には勤務先は供託をしないといけないので大変ですね。

 

もっとも、強制執行中止の申立てをすると(中には、受任通知時、あるいは破産申立て時のこともあります)、債権者は強制執行を取り下げることが多いです。弁護士からも取下げを促します。


(相談時にまだ差押えがなされていない場合)

弁護士が受任して自己破産の準備をしている間は、債権者は法的手続を取ることを待つのが通常です。

最近は、あまり待たずに法的措置をとるようになった債権者もいますので注意してください。そうでない債権者でも受任後半年経てくると問い合わせが弁護士のところに来ます。申立予定が決まっていないと、たいてい法的手続を進める旨伝えられます。
 

弁護士に依頼する場合には弁護士からスケジュールを示されるはずです。弁護士に自己破産申立てを依頼して受任通知を出してもらって安心してはいけません。きちんとスケジュールに従って準備をしてください!遅くなると給与差押えのリスクが高まります。


訴訟等がなされると弁護士が時間稼ぎをしてくれることもありますが、限界があります。
また、差押えは受任通知後の偏頗弁済となり(破産管財人が否認することもできる行為になり)、金額によっては管財事件になる可能性が高まります。


なお、訴訟等がなされる段階になってまだ準備が進んでいないとなると、弁護士から辞任をさせることも多いでしょう。弁護士も依頼者さんが準備をしてくれないと困りますから。

 

◇ 個人再生と給与差押え

(相談時に既に差押えがなされている場合)

個人再生の場合、再生手続開始決定により強制執行は中止されます。

そして、最終的に再生計画の認可決定が確定した場合に失効します。
 

なお、申立て後に強制執行の中止命令を裁判所が出せる制度、差押えの取消しにより留保分を受け取れる制度もあります。裁判所に認められる必要がありますが。


個人再生の場合には、差押え分を偏頗弁済として清算価値(清算価値保障原則により最低弁済額を画するものです)に計上されて、他の財産状況によってですが最低弁済額が大きくなるリスクがあります。。
 

給与差押えとは違いますが、給与天引きでの共済借入金弁済などは天引きが開始決定まで止まらないことがほとんどです。この場合も清算価値に計上するということがあります。

 

(相談時にまだ差押えがなされていない場合)

自己破産の場合と同じです。弁護士に示されたスケジュールに従ってきちんと準備をしてください。遅くなると給与差押えのリスクが高まります。
 

なお、差押えをされている場合、弁護士費用に困ってしまう場合があります。よく弁護士と相談してください。法テラスの基準を満たしていればいいのですが、収入基準を超えていて法テラスは利用できない、しかし給与差押えにより弁護士費用を捻出することが難しい、という事態もあり得ます。その場合は弁護士費用の支払い方法も柔軟に考えないといけません。

 

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自己破産等と自動車 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。


債務整理をしたら車がなくなってしまうのかどうかは相談者さんの関心が高いところです。

広島だと車がないと困る場合もありますからね。


そこで、今回は、債務整理(個人の任意整理、自己破産、個人再生)における自動車の扱いを改めてまとめておこうと思います。
バイクも同じような扱いです。

 

【任意整理】

任意整理の場合には自動車を残せるのが基本ですね。

車のローンを任意整理の対象としなければ関係がありません。

なお、車のローンを任意整理の対象とした場合でも、残せた例もあります。債権者の対応次第かと思います。

 

【自己破産】

自己破産の場合は複雑になります。

まずは自動車が所有権留保物件かどうかですね。

 

◆ 所有権留保物件ではない場合

自動車が所有権留保物件ではない場合には単なる財産としての扱いを考えればいいだけです。

同時廃止と管財事件によって分けて説明しないといけません。

(同時廃止の場合)

初年度登録から(購入時からではありません)6年を経ている自動車では、少なくとも広島では(全国的に基本的に同じような扱いですが)、価値がないとして扱うことが許されています。そのため申立時に自動車の価値を報告する必要もありません。
したがって、自動車は残ることになります。
例外は、外国車や高級車ですね。その場合には、価値の報告を求められます。

 

初年度登録から6年を経ていない自動車の場合には、査定書(最近はなかなか取れないですが)あるいはレッドブックなどで車の価値を報告します。
その価値によっては(20万円を超える場合など)、次の管財事件の扱いとなります。


(管財事件の場合)

初年度登録から(購入時からではありません)6年を経ている自動車の場合に価値がない物として扱うのが多いと思いますが、古い車の査定を取り財産額に計上する破産管財人もいます。

自動車を残す方法は、自由財産拡張手続(裁判所の許可を条件に最大99万円の財産を手元に残す手続)あるいは金銭での財団組み入れです。
 

自動車が自動的に自由財産拡張対象となるわけではありません。自動車が生活あるいは仕事に必要で残すことが相当であることは説明しないといけません。

自由財産拡張対象と認められないあるいは自由財産拡張限度を超える財産がある場合には、車両価値に相当する金銭あるいは自由財産拡張対象外財産分の金銭を財団に組み入れる(破産管財人に引き渡す)ことで自動車自体を残すことも可能です。


なお、イレギュラーですが、合理的な理由が説明できる限りで、親族などに相当額で売却するケースもあります。所有者を変えて利用を続けるということですね。
例外的な扱いなので、弁護士と相談しながら進めないといけません。

 

◆ 所有権留保物件の場合

自動車が所有権留保物件(典型は所有者登録がローン会社名義になっている普通自動車)の場合には、理屈上、返却が必要です。

自己破産の場合は(正確に言えばその前段階の弁護士が受任通知を出したとき)は、債権者から引き揚げ要請(返却要請)が来ます。
借り入れの担保なので返却しないといけないのですね。


なお、銀行・信金などのマイカーローンの場合には所有権留保物件ではないことが多いようです(銀行が所有権留保を主張してきたことは経験ありません)。

 

ここで気を付けないといけないのが、所有者登録名義です。
所有者登録しているのがローン会社であれば問題がないのですが、販売店名義の場合はそのまま返却することが理屈上はできません。
所有権留保の対抗要件(主張できる要件)が登録なので、きちんと登録されていない車を返すと後で問題視されます。

間違って返却してしまうとそれだけで管財事件になる可能性があります。
ややこしいのですが、そのような最高裁判例が出てから、信販会社の方でも契約書類を改定しています。
改定後の最近の契約書類によっては、販売店名義であっても返却はできます。
難しい話ですが、法定代位構成の保証方式の契約書について、最高裁判例が販売店名義でも所有権留保が別除権(第三者対抗要件のある担保権)であることを認めました。

いずれにせよ、車検証の写しとともの契約書類を弁護士に見てもらってください。
手元にない場合には、弁護士が債権者に写しをもらって確認します。

なお、返却できない車だと判明すると、財産としてカウントされて、その価値が20万円以上であれば管財事件になってしまいます。

 

一方、普通自動車と違って、軽自動車の場合は、対抗要件が登録とはなっていません。
登録如何に関わらず、これも難しい言葉ですが、占有改訂が対抗要件となり所有権留保が認められます。
そのため、軽自動車については引き揚げ要請が来ると返却をしても問題がありません。
当職は一応契約書を確認して引き揚げ要請に応じることにしておりますが。

 

自己破産をしても所有権留保物件の自動車をどうしても残したいケースはあります。

保証人あるいは親族等にローン残債額で売却してローンを返済するなどの方法が考えられます。
自己破産手続の前に債権者との関係を整理しないといけないわけです。
イレギュラーなことで後で問題視されることもありますので、弁護士の関与の下進めることをお勧めします。

 

なお、所有権留保車両であっても、稀に価値が明らかにない古い車の場合には、債権者が所有権放棄をしてくれて手元に車が残ることもあります。

 

【個人再生】

◆ 所有権留保物件ではない場合

個人再生の場合には、財産は処分されません。

所有権留保が付いていない車は、その価値が、清算価値に計上されるだけです。
 

個人再生には清算価値保障原則があり、清算価値が最低弁済額を決める基準の1つになります(自己破産した場合よりも多い返済をしなさいという理屈です)。
車の価値が大きい場合には、それだけ返済額も大きくなる可能性があるということになります。


なお、個人再生における清算価値の計上の際には、自己破産における自由財産拡張対象相当の金額を控除することが認められています。
最大99万円まで清算価値を落とせるということですね。


◆ 所有権留保物件の場合

所有権留保物件である場合には、自己破産の場合と同様です。
担保になっていますから引き揚げに応じなければなりません。
その際の問題点も自己破産と同様です。
やはり弁護士に確認してもらってください。


なお、自己破産と同様、所有権留保付き自動車を残すには、所有権留保債権者との関係を決着しないといけません。

 

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相続税法の概観 [税法のお話10]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続税法のお話を簡単にします。

 

相続税とは、相続財産という資産に担税力を認める資産課税であり、日露戦争中の戦費調達のために創設されたようです。
現在の相続税法は、英米系と大陸系の双方を加味した制度になっています。税金の計算方法がやや複雑です。

 

◆ 相続税課税対象財産

相続税の課税物件は、相続または遺贈によって取得した相続財産です。

 

相続財産には、財産権の対象となる一切の物及び権利が含まれます。
民法上の相続財産(民896)ですね。経営者であると会社への貸付金も相続財産ですので気を付けて下さい。

 

相続税法は、相続財産のほかに、相続財産と実質を同じくする財産及び権利も相続税の対象としています。みなし相続財産(相続税法3)ですね。

生命保険金、退職手当金などですね(各基礎控除が定められています)。遺産分割の際の相続財産と申告すべき遺産総額は異なるのです。

 

相続財産の評価は取得の時における時価によります(相続税法22)。
時価は、課税時期における当該財産の客観的交換価値(市場価格)ですが、実務上は、財産評価基本通達その他の通達による財産評価がなされます。
画一的、公平な課税処理のため一応の合理性が認められています。

 

なお、他の相続税課税対象財産もあります。
相続開始前3年以内の受贈(相続税法19)、相続時精算課税(21の9)の適用を受けた財産などです。

 

◆債務控除

相続財産から相続債務を控除できることは当然ですね。
ただし、控除できるものは、現存(相続税法13Ⅰ)+確実(同14Ⅰ)の債務だけです。
会社のオーナーの保証債務は、会社に支払能力がなく顕在化していない限り控除できないことになります。

相続財産に関する費用(遺産の管理保存費用、弁護士費用等)は控除できません。

葬儀費用については税法上債務控除が認められています(相続税法13Ⅰ)。民法とずれるところです。

 

◆基礎控除(相続税法15)

各人の課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額が算出されます。

現在の基礎控除は、3000万円+600万円×相続人の数、ですね。

先年大幅な増税がありました。基礎控除が従前の6割に下がりました。基礎控除を超える相続が増えたわけです。

養子による節税の件ですが、実子ありの場合は1、実子なしの場合は2まで相続人の数のプラスできます(相続税法15Ⅱ)。
なお、相続人の数は、代襲相続人も各1名と数えますし、相続放棄者も
1人に数えます。ややこしいですね。


基礎控除内の相続は相続税申告義務があるでしょうか?

答えはNOです。そのため申告をしないケースもたくさんあります。

 

法定相続分にかかる相続税の総額(相続税法16)

各相続人が法定相続分に応じて取得したと仮定し相続税率を適用して合計したものが相続税総額です。
実際の分割方法は相続税の総額には関係がないことになります。

 

◆各相続人等の相続税額(相続税法17)

相続税総額を各相続人の取得割合に応じて割り振った各相続人の相続税額に、2割加算(相続税法18)、あるいは税額控除をすれば、各相続人が納める税額になります。

 

イメージ的には、遺産総額がある、法定相続分に応じて相続した形で税額を計算して相続税の総額を算出する、それを実際に相続した相続人の取り分に応じて割り付ける、という流れです。

 

各種控除には、贈与税額控除(19)、配偶者の税額軽減(19の2)、未成年者控除、障害者控除(19の3、4)、相次相続控除(20)、相続時精算課税適用者にかかる贈与税額控除、外国税額控除(20の2)等様々な制度があります。

小規模宅地特例、配偶者軽減特例は、遺産分割ができていることが要件ですので注意してください。
揉めていて申告時期までに遺産分割が完了できない場合は、暫定的に相続税を支払って3年延期することも可能です(相19の2)。後で更正することになります。

 

◆その他

相続税、贈与税は連帯納付責任です(相続税法34)。
贈与をして受贈者が贈与税を払わない場合に贈与者に課税が来るという怖い話もあります。

 

遺留分減殺請求を後に受けた場合は、後発的事由による更正(国税通則法23)により還付をしてもらうということになります。

 

遺産分割協議の錯誤無効(想定していない税金がかかった!など)の場合も、民事訴訟を経て後発的事由による更正請求という方法が考えられます(なお、遺産分割の債務不履行解除はできないとされています)。簡単に錯誤無効が認められるわけではありませんが。

 

遺産の再分割、遺産分割協議の合意解除については、新たな契約と見られますのでご注意を(贈与等の課税リスクがあります)。

 

贈与税は、相続税の補完税として相続税回避の防止を立法趣旨としますから、贈与税法に規定があります。
贈与税は相続を前提とするため、個人からの贈与のみ課税対象です。個人が法人から贈与を受けたら所得税(一時所得など)です。

相続財産の評価と贈与財産の評価とは同一評価基準です。

基礎控除110万円内(21の5、措置法70の2)の贈与は申告が必要ありません。
ただ、暦年贈与は少しリスクがあります。確定日付を取っておく等の方法で明確にしなければいけません。

なお、贈与税には、婚姻期間20年以上の居住用不動産等の配偶者控除(21の6)や事業承継税制など特則がたくさんあり、要件も細かく決まっています。
よく見ておかないといけませんね。

租税法のお話が続きました。ここで一休みして、再開の際には法人税法のお話をしようとかと思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

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