弁護士の仲田誠一です。
先日、新聞で日航の整理解雇の記事を読みました、みなさんは読まれましたか?
「一部労組が提訴も辞さない構え」とも書いてましたね。
そもそも「整理解雇」って何でしょうか?
また,労組が提訴し訴訟になったらどのような点が審理されるのでしょうか?
そこで、今回は、「整理解雇」とはどういうものか、また訴訟で争われるとどのような判断をされるのかなどについてお話させていただこうと思います。またまた理屈っぽい話になるのですが・・・
◆ 「整理解雇」って何でしょう?
「整理解雇」とは、使用者(雇い主)が経営不振の打開や経営合理化を進めるために、余剰人員削減を目的として行う解雇です。
◇ 解雇は使用者の都合で認められる?
当然、解雇は簡単には認められません。
実は、民法上では、期間の定めのない労働契 約(通常の雇用契約のことです)について、当事者は「いつでも」解約を申し入れることができると規定されています。これは、「使用者の解雇の自由」と「労 働者の退職の自由」の保障を意味します。近代自由主義のたまもののような規定です。
しかし、解雇も自由に任せると労働者がたまりませんね。労働は生計維持の手段であるばかりでなく、人格発展の機会でもあるからです。もし解雇されたら、労働者は、大きな経済的不利益および人格的不利益を被りますね。
そこで、労働法は,「使用者の解雇の自由」の原則に修正を加えて、労働者の雇用保障と不利益回避を図っています。
すなわち、解雇は、「客観的に合理的な理由」を欠き、「社会通念上相当」であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます。
こ こで、「客観的な合理的理由」は就業規則上の解雇事由に当たるか等によって、「社会的相当性」は、労働者の事情・過去の行状・他の労働者の処分との均衡・ 解雇手続が適正か等の事情によって、判断されます。難しくなってきましたが、要は、解雇には、従業員から職を奪ってもしかたがないと客観的に認められる事 情が必要です。
その際、就業規則の定めが重要になりますから、経営者の方は、就業規則をちゃんと整備しているか確認してくださいね(就業規則にはきちんと整備しないといけない決まりが他にもあります、機会があればお話します)。
◇ 整理解雇の特殊性は?
「整理解雇」も、もちろん「解雇」の一類型です。そのため、上のような理屈が当てはまります。
ただ、整理解雇には、普通の解雇と違い、労働者側に責任がなくもっぱら使用者側の事情によること、解雇される従業員が通常多数に及ぶ、といった特殊性もあります。
そのため、整理解雇の有効性は厳しく判断されそうですよね。
◆ 裁判ではどのような点が審理される?
上のような「整理解雇」の特殊性から、現在、「整理解雇の4要件」(「要素」とされる場合もあります)という「厳しい」判例法理が構築されています。昭和50年代に採られた大企業の雇用調整をモデルにしたと言われています。
その4つの「要件」(「要素」)とは、
①人員削減の必要性があること
②使用者が整理解雇回避のための努力を尽くしたこと(解雇回避努力義務)
③被解雇者の選定基準および選定が公正であること
④労働組合や労働者に対して必要な説明・協議を行ったこと
です。
整理解雇の有効性が裁判で争われると、上記の4要件(要素)に沿った審理がなされることになります。つまり、経営上本当に必要なのか、解雇以外の道を十分探ったのか、不公平な人選になっていないか、労働者側とちゃんと話をしたか、等についてチェックされるのです。
冒頭に書いた日航の場合,訴訟に発展するとどういう判断が下されるかについてはもちろんわかりません。ただ、裁判所の判断は、以前より、やや解雇を 認める方向に柔軟化されているように感じます。会社が自己破産等破綻してしまうと「元もこうもないではないか」という考えが事実上判断に投影されているか もしれません。
ずいぶん難しい、ややこしい話になってしまいました。
弊事務所の事務員さんからも、内容が堅苦しくておもしろくない、と突き上げを食らっています。もっとやさしい、おもしろいテーマを選んで書こうと努力いたします。