弁護士の仲田です。本日は前回の続き「原状回復義務」についてお話しますね。
前回少し触れましたが、確かに借家人には「原状回復義務」がありますが、「新品同様に戻す」という意味ではないんです。
住むために借りるのですから建物は当然によごれますよね。したがって、建物の通常の使用に伴う損耗(通常損耗)及び経年劣化は当然に予定されるものですから、家賃によって賄われるものとされています。
国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に詳しく書かれているので、ご興味がある方は参照してみてください。
といっても、通常損耗も借家人の負担とする特約も条件付で有効とされています。
簡単に要件を書くと
①特約の必要性があり暴利的ではないなど客観的合理的理由があること
②賃借人が通常の原状回復義務を超える義務を負うことを認識していること
③特約による借家人の義務負担の意思表示があること
です。
そのため、上記のような特約が賃貸借契約に盛り込まれているのかもしれません。
ただし、そのような特約がある場合であっても、事情によって、信義則に反し消費者の利益を一方的に害するものとして消費者契約法10条により無効になりえます(機会がありましたら詳しく説明させていただきます)。
原状回復義務の範囲が争われるのは建物退去後の敷金返還の場面だと思いますが、契約の段階で上記のような賃貸借契約を結ばされてしまうとトラブルの素です。できれば、契約段階でトラブル発生を防ぎたいものです。
賃貸借契約に限らず、契約書に署名捺印をする際には、内容をよく読んで、「うるさいやつだ!」と思われるのも覚悟で、おかしいと思ったところは必ず確認して下さい。
ちなみに、保証人をとった上に保証会社との契約を要求する業者も多いようです。なんかおかしいですよね。
以前は保証人がいない場合に保証会社との契約を要求するのが一般的だったと思います。こちらも交渉して、保証会社との契約は外してもらいました。