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「債務整理をしたいけど・・・」 4 【借金問題】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。catface

今回は,破産について補足をさせていただきます。
以前にも破産の話をさせていただいているところですが,そこでお話できなかったことを書かせていただこうと思います。

免責不許可事由とは?
破産制度は,多重債務によって支払不能状態(返済を続けられない状態)にある方の,経済的更生を図るために法律が認めた制度です。

他方,債権者には多大な損失を負わせることになってしまう制度です。

そこで,法律は,誠実な債務者に対してのみ,「免責」(借金をちゃらにすること)を許可するということになっています。

何が誠実な債務者なのか?というと,具体的には,「このような場合には免責をすることはできないですよ」というように「免責不許可事由」が法律で定められています。

そのような免責不許可事由がない破産者は,「権利として」免責を受けることができます。免責不許可事由がある破産者については,裁判所が事情を考慮した上で仕方がないと判断したに限って「裁量で」免責を与えてくれることになります(裁量免責)。

免責不許可事由で,よく問題になる行為を簡単に説明します。
次のような行為に注意してください。
○ 債権者を害する目的で財産の隠匿など財産を不当に減少させるような行為
破産申立に近い時期の財産処分行為などが問題となります。
○ 特定の債権者に対する不公平な返済などの行為
親族など特定の債権者だけに返済する行為がよく問題となります。
○ 浪費や賭博行為により借金を作る行為
ギャンブル,遊興費,高額な商品の購入,投機行為で作った借金がよく問題となります。
○ 詐欺的な債務負担行為
名義貸しやショッピング枠の現金化などがよく問題となります。

上記のような行為があっても,上に書いた「裁量免責」を受けられる途がありますので,弁護士とよく相談してください。

また,免責不許可になるような行為を続けるとだんだん免責を受けられる可能性が小さくなってしまいます。泥沼にはまってしまう前に,早くご相談ください。

万が一,免責が不許可になった場合には(私の経験ではまだ不許可になった例はありませんが),免責不許可事由がない民事再生などを検討することとなります。

◆ 破産の手続って?
管財事件になるか,同時廃止事件になるか,の違いが重要です。

管財事件とは,簡単に言うと,裁判所が弁護士から破産管財人を選任し,その管財人が,破産者の財産の整理や免責をしていいかの調査をする破産手続です。

同時廃止事件とは,裁判所が管財人を選任しないで手続を進める破産事件です。

両者の違いで何が一番大きいかというと,裁判所に納める予納金が,管財事件になると多額になるという点です。

債務者の財産が少なく破産手続費用も出ないような場合には,原則として同時廃止手続になります。

管財事件になるケースは,一定額以上の財産がある場合(広島地裁では60万円が一応の目安のようです),個人事業者や会社代表者の場合,免責不許可事由が存在し免責していいか調査が必要な場合,負債額が大きい場合,価値のある不動産を所有している場合,などです。

同時廃止事件になるか,管財事件になるかは,最終的には裁判所が決定するのですが,微妙なケースもあり,弁護士とよく相談して見込みを把握し,管財事件になる見込みがあれば費用の準備をしていく必要があります。

なお,財産がないとおっしゃる方も,調べてみれば財産があったということは稀ではありません。退職金見込額の一定割合が財産と見られますし,保険の 解約返戻金があったり(実際に解約はしなくてもいいのですが),過払金が返ってきたりするケースもあります。よく相談してください。

◆ 自己破産をするにもお金がかかる?
残念ながらお金はかかります。
自己破産にかかる費用は,弁護士費用と裁判所に納める印紙代・切手代・予納金です。

弁護士費用は,事務所によって異なります。ただ,見かけにはだまされないでください。重要なのはトータルでいくらかかるかです。

裁判所に納める費用は,個人の破産で管財人が入らない手続であれば15,000円程度あれば足りると思います。管財人が入る手続になってしまうと,15万から40万はかかります。

お金がないから破産をするのにお金なんか用意できない!と思われるかもしれません。

どのようにお金を用意するのでしょうか。

まず,換金できる財産がある場合には,換金して裁判費用等に当てることはある程度許されています。また,どこかの債権者から過払金が回収できる場合も回収した過払金を費用に充てればいいのです。

次に,月々の収入がある方には,費用が貯まるまで,月々積み立ててもらうことになります。良心的な法律事務所では,一括で支払えとは言わないでしょう。
一定の条件の下では,法律扶助制度を利用して弁護士費用を立て替えてもらうこともできます。

さらに,全く収入がない方については,生活保護を受けられている場合であれば,法律扶助制度を利用した上で,弁護士費用等の立替金の返還を猶予・免除される制度もあります。

このように,費用のことが心配でも解決方法はあります。とにかく相談してください。

◆ 法人の破産について
会社などの法人の破産の特徴は,個人の破産に比べてお金がかかることと(必ず管財人が入ります),破産にとりかかるタイミングが重要なことです。

弁護士費用を相当額支払う必要があるだけではなく,裁判所費用がかなりかかります。ケースによって裁判所に納める必要がある予納金(費用に当てられる)の額は異なりますが,最低100万円は確保したいところです。

また,法人の破産はタイミングが重要になります。まず,申立書類の準備は大変です(経理の知識ある従業員さんなどの協力を得られる方がベターで す)。また,取引先などの債権者に対する対応や従業員さんに対する手当ても慎重に準備する必要があります。さらに,法人の破産には一定の現預金が必要とな るため,資金繰り上,タイミングを図る必要がありますし,裁判所へ納める予納金を少なくするためには事務所の退去の手当てなど事前の準備も欠かせなくな ります。

もちろん,法人を破産させる場合には,保証債務などを負っている代表者なども自己破産を検討する必要があります。

法人の資金繰りにお悩みの方は,個人の破産よりもより早い段階で,弁護士への相談を検討する必要があるのです。

◆ 最後に
自己破産に負のイメージを持たれている方は多いと思います。

それは,ある意味,健全なことだと思います。債権者に多大な迷惑をかけてしまうからです。

しかし,反面,自己破産は,負債に苦しむ方に経済的に立ち直ってもらう,前向きな制度でもあります。破産者の経済的更生を目的にわざわざ法律が認めている制度ですから,自己破産は「悪」ではありません。「自己破産は悪いことだから」と諦める必要はないのです。

もっとも,破産は,それが債権者に多大な迷惑をかける以上,先ほど説明した免責不許可事由を始め,手続上あるいは法律上,様々なことを考えて行う必要がある制度です。

借金に苦しまれている方は,自己破産も選択肢の一つとして,信頼できる専門家に早めに相談してみてください。

債務整理のお話は,今回で一旦お休みにさせていただきます。債務整理に関する個別の問題点など,もっと細かいお話は,これからも機会を見つけてさせていただきます。

 


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