弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。
週末から非常に寒かったですね。雪が少しでも降ると,慣れてない分,滑らないように歩くのに気を使いますね。
さて,遺言作成がなぜ必要かについては以前にお話しましたところです。今回は,故人が遺言を残していたことが,亡くなられてからわかった場合にどうしたらいいのかをお話したいと思います。
◆ 自筆証書遺言の形式をとった遺言書が見つかった場合
自筆証書遺言が見つかった場合には,家庭裁判所において検認の手続をする必要があります(しなくても遺言の効力には影響しませんが,過料に処されると法律で決まっています)。
検認手続とは,遺言書の存在や内容の保存を確実にして,後日の隠匿や変造を防ぐ手続です。遺言の有効性を確認するものではありません
なお,封印がある遺言書の場合には,勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で開封する必要があります(反した場合,過料に処されると法律で決まっています)。
また,遺言書を変造・破棄した人は,相続欠格者となり,相続人としての資格を失います。
なお,公正証書遺言の場合には,検認手続は要りません。隠匿や変造の危険がないからです。
◆ 遺言書が見つかったのが遺産分割をする前だったら
相続人全員の合意(遺贈がある場合には受遺者も含みます)があれば,遺言と異なる遺産分割をすることはできます。ただし,遺言で遺言執行者が定められている場合には,遺言執行者との関係で問題が生じます。
なお,遺言の執行に関しては,遺言執行者が遺言で決められていない限りは,一部の内容の遺言を除いて,相続人が執行をすることができます。
もちろん,遺言執行者を家庭裁判所に選任してもらうこともできます。
◆ 遺産分割をした後に遺言書が見つかったら
遺産分割後に遺言が見つかった場合も,次の理屈ですでに行った遺産分割の効力を考えることになります。
遺産分割は,相続人等の遺産分割協議当事者の1人でも欠けると無効になります。また,遺産が実はなかったということだと当然に無効になります。
さらに,遺産分割協議の前提となる重要な事項について錯誤(そのことを知っていたら合意しなかった)がある場合も無効とする余地があります。そんな遺言があったなら,あんな分割合意はしなかったと主張するのです。
少し説明すると,以下のようになります。
◆ 相続人資格に変更がある遺言があった場合は?
認知,排除またはその取消しが遺言に書かれていた場合には相続人資格に変更があります。そのため,分割協議は有効だが金銭で賠償しないといけなくなる,分割協議が無効となる,などの事態を招きます。
◆ 遺贈がある場合は?
遺贈(遺言による贈与)があった場合には,それが全ての財産の遺贈であれば分割協議の対象となる財産が存在しないことになり,すでに行った遺産分割協議は無効です。
相続人ではない第三者に割合的(遺産の2分の1など)遺贈をした場合には,遺産分割の当事者が欠けていたことになります。そのため,すでになされた協議が無効となります。
相続人に対してそのような遺贈があった場合には,遺言があったらそんな不利な内容で合意しなかったという相続人から錯誤無効を主張できることになります。
特定の財産の遺贈があった場合は,その財産は遺産分割協議の対象から外れますので,その限りで遺産分割協議が無効となります。もちろん,それ以外の部分も,錯誤無効の話が出てきます。
◆ 「相続させる」旨の遺言があった場合は?
特定の相続人に対して,「包括的」に,「割合的」に,あるいは「特定」の財産を,「相続させる」との遺言があった場合です。その性質は,遺産分割方法の指定だとされています。
不動産を「相続させる」旨の遺言を残しておくと,単独申請で移転登記できるため(遺贈だとすると登記義務者である相続人との共同申請になります),このような遺言がさせているという事情があります。
包括的な場合には,全ての財産の遺贈と同じく,遺産分割協議は無効となるでしょう。
割合的な場合には,当該相続人が錯誤無効を主張できます。
特定の財産の場合には,相続人に対する特定遺贈の場合と同様に,その限りで遺産分割協議は無効となるでしょう。もちろん,それを前提に行った協議については錯誤無効の話が出てきます。
◆ その他の内容の遺言があった場合は?
その他の内容が定められた遺言が見つかった場合も,はじめに書かせていただいた理屈で考えていくことになろうかと思います。
◆ 最後に
今回は,少し難しいお話かなと思います。
遺言が見つかった場合,このように少しややこしい話になりかねません。
お早めに弁護士にご相談ください。