広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
今回の不動産問題コラムは、親族間での不動産売買の注意点の説明です。
親族間の不動産の売買をお手伝いすることがあります。
相続絡み
自己破産をしなければならいがどうしても自宅不動産を残したい場合
事業承継対策
などですね。
そこで、親族間での不動産売買の注意点をお話しようと思います。
親族間の売買でも第三者間の売買でも流れは基本的に同じです。
売買契約を締結し、
代金の支払いと所有権(あるいは持分権)移転登記
をするということになります。
代金ですが、勿論、法律上は自由に決められます。双方が合意した金額でいいのです。
ただ、親族間の不動産売買では、時価よりも価格を安くすることがよくあります。
親族間の売買にはいろいろな事情が絡みますからね。
ところで、不動産の時価とはなんでしょうか。
時価とは、流通価格、交換価値というべきでしょうか。
不動産の価値を示すものとしては、固定資産評価、路線価、公示価格がありますね。
一般的にはその並びで金額が上がっていきます。
固定資産評価は固定資産税等のための評価額です。
時価とイコールではありません。
昔は時価の7割と言われていましたが、ケースバイケースです。中には時価よりも高いケースもあります。
路線価とは相続税、贈与税のための評価額です。
これも時価とイコールではありません。昔は時価の8割と言われていました。こちらもケースバイケースです。
路線価評価は国税庁のホームページで簡単に調べることができます。
設置道路毎に価格が出ているのです。
ただし、路線価が出ていない地域もあります。
その場合は、倍率表というものがあって、固定資産評価×〇倍の評価をすることになっています。
公示価格は時価に最も近いものです。ただ、基準点の価格しか出ていないので、個々の不動産の評価には役にたつことは稀です。
たまたま基準値と近似した不動産だったりする場合には参考するという程度です。
結局、時価は簡単に調べられるものではありません。不動産業者に売買事例等を基にした評価をしてもらう、鑑定士に鑑定をしてもらう必要があります。
鑑定費用はかなりかかるので、査定書をとることが多いでしょう。
自己破産に絡んで自宅不動産を残すために売買をすることもあります。
自己破産絡みの売買であれば、時価相当額でなければ後に破産管財人に否認されるおそれがあります。
時価相当額での売買でなければなりません。弁護士が介入して売買をし、かつ査定を取っておいた方がいいでしょう。
持分権の売買の評価は難しいです。
時価を基本として、一定程度減価することも許されるのではないでしょうか。
事実上、持分だけを売ることはできないですからね。
自己破産絡みでない場合でも、時価は気にしなければいけません。
廉価売買は贈与税の課税対象となり得るのです。購入者に対して贈与をしたとみなされるのです。
基準は、時価の2分の1だと思ってください。ただ、時価がいくらかを考えるのは難しいのは上述のとおりです。
税務調査がなされた場合にきちんと説明ができるように、価格算定の根拠は残しておかなければいけません。
時価の2分の1ぎりぎりでの売買は、税務署が考える時価がいくらか分からない以上、危険です。
事情があって安くする場合でもある程度余裕を持った金額、説明がきちんとできる金額で売買をした方が無難です。
後から税務署が高い時価評価をして課税してくることもあり得ます。
この点で、親族間の売買であっても不動産仲介業者を介入させることや、弁護士や税理士の価格算定に関する意見書を作成することもあります。
親族間の不動産売買は、このような税金面で慎重に検討しなければなりません。
なお、不動産を売買で取得すると、後から不動産取得税を支払わなければいけません。
不動産業者が絡む売買(新築戸建ての購入等)だと、不動産取得税の申告(そんなに難しいものではありません)の申告を代行してくれたりすることもあり、申告が必要なことをご存じないケースがあります。購入者は不動産取得税の申告が必要である点にもご注意ください。
親族間だからといって、簡単に売買をしてしまうと、足元をすくわれることがありますのでご注意を。
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