広島県広島市の弁護士仲田誠一による不動産問題コラムです。
不動産の問題を解決するにあたり、取得時効の援用を行うケースがあります。
例えば、隣地との境目の争いがあり占有部分の所有権を確定させるケースがありますね。
あるいは、自宅が曽祖父などの名義のままになっており相続人が分散して話し合いでは解決できそうもないケースも多いです。
今更、枝分かれした多数の他の共同相続人全員から合意を取り付けることは難しいことが多く、訴訟提起して解決するのですね。
不動産の時効取得が認められて登記を変更できた場合、所得は把握されるのでしょうか。
今回は、どんな税金がかかるかというお話です。
無償で不動産を取得することになるので贈与税が課税されるかというとそうではありません。
時効取得が、一時所得として所得が把握され課税されます。
課税対象は、時効援用時の当該不動産の時価になります。
民法上は時効の援用の効果は占有開始に遡るのですが、一時所得の課税時は時効援用時とされています。
遡ると税金が時効でとれないということがあるからでしょうか。
一時所得なので、所謂2分の1課税です。
ただし、収入が時価の2分の1で大きいかもしれません。
かつ、収入から控除できる「直接要した費用」はあまり認められません。
弁護士費用などは駄目なのですね。
そのため、相応の所得が発生する可能があります。
このように、不動産の時効取得により所得が把握されるということは気を付けてください。
不動産登記の名義変更をするので、時効取得の事実を税務署は容易に把握することができます。
そうであれば、仮に売買などの別の主張が認められそうであれば、あるいは遺産分割等他の方法で解決できるならば、税金がかからない方法を優先するという検討も必要になります。
例えば、過去の売買が認められると課税されないのは当然です(買主なので譲渡所得税はかからないですね)。
過去の遺産分割が認められた場合も相続税の話になり時期的にもはや相続税課税が難しくなるでしょう。
売買や遺産分割等の証拠があるのであれば、まずはそちらの主張を前面に出して、時効取得は予備的に主張することになるでしょう。
時効で解決できるからといって簡単に時効取得に飛びついてはいけないことになります。
勿論、時効取得を検討する案件では、他の主張が認められることが難しいから時効取得を主張しているということが多いのですが。
その場合は仕方がないですが、仮に和解の場面が出てきたら、課税関係を意識して臨まないといけません。
時効取得に限らず、紛争の解決には税金の検討の必要が伴う場合が多いです。
紛争の解決方法としてお金や物が動くと非課税所得等ではない限り何かしらの税金がかかる可能性があります。
思わぬ落とし穴があるかもしれません。
不動産に関するご相談はなかた法律事務所にご用命を。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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