広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
今回の企業法務コラムは、退職の申出に対する対応のお話です。
会社と従業員との間で退職時期に関する紛争が生じることが珍しくありません。
会社としては急に辞められては困る、従業員としては次もあるから早く辞めたいということですね。
人手不足でだからでしょうか、前者の相談が多くなっているような気がします。
期間の定めのない正社員などを前提とすると、民法では、2週間前までに申し出るルールです。
ただし、月給制であれば当期賃金支払計算期間の前半に次期の退職を申し出する必要があります。
月末締めの給与支払いであれば、5月14日に辞めたければ4月15日までに申し出るということでしょう。
実際には就業規則にて、退職の申出は1カ月前と決められている会社が多いでしょう。
そのような決まりがある場合には1カ月前の退職予告が必要です!
と言いたいところです。
しかし、どちらが優先されるかは争いがあります。
どちらかというと、就業規則の規定が裁判では認められない傾向にあると言えるかもしれません。
1カ月前を前提に動くと、リスクがあるわけです。
2週間というとかなり短いですね。
経営にはこういうリスクもあるということを頭に入れてください。
なお、退職届が出されたら会社側からするとアウトです。
法律上、退職届の受理の留保は認められません。
会社側が受け取らない場合には、従業員側から内容証明郵便で退職届がなされることもあります。
勿論、辞めてもらいたい従業員から退職の申出があった場合には、撤回されないように直ちに正式受理してください。
正式受理するまでは撤回をすることが可能です。
辞めた場合に仕事に支障を来す場合に、損害賠償請求ができるかという点は、会社、従業員双方から相談がされることです。
基本的には損害賠償請求権は発生しません。
職業選択の自由は憲法で保障された権利ですから、退職行為自体は不法行為にはなりません。
他の従業員の引き抜き等の相当な範囲を超えた行為をした場合に損害賠償請求の余地があるというレベルだとお考えいただいた方がいいでしょう。
有給休暇も頭が痛いですね。
労働者の有給休暇の取得は権利です。
平時では、使用者には時季指定権・変更権が認められていますが、退職日が決まった段階ではそれが行使できません。
労働者側でも、いきなり休むのではなく、引継ぎを早く済まして有給を消化して円満に退職する気持ちがあった方がいいかもしれません。
買取りについては双方合意があればOKでしょう。
従業員からすれば辞めると決まったら早く辞めたいのでしょう。
一方、会社としては、辞めたいと言って既に士気が下がっている従業員を引き留めてもあまり意味がありません。
双方が折り合いをつけて、最小限度の引継ぎを行って退職できるような話し合いが一番ですね。
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広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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