広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
前回、債権回収トラブルの要因の大きな2つのうちの1つは契約内容の意識にズレがある場合である、契約内容の疑義をなくすことが実は債権回収対策の1つの柱である、ということをお話いたしました。
契約内容に疑義がなくても発生する債権回収のトラブルの要因(債権回収トラブル発生のもう一つの要因)は、勿論、相手に支払能力がないという場合ですね。
弁護士では手元不如意の抗弁なんて言ったりします。
中小企業の場合、取引先の財産や業況の把握が不十分である例、あるいは取引先事に与信枠(売掛金の枠)を設定しないで、あるいは意識もしないで、ご商売をされている例があります。
なかなか手が回らないところかもしれません。
しかし、売掛金があるということは取引先と債権債務関係に立っているということです。
お金を貸しているということと理屈上は同じです。
したがって、御社も取引先に対して「貸している意識」を持たないといけません。
取引先へは頻繁に訪問しないといけませんね。情報収集を欠かしてはいけません。
会社の雰囲気だけでも順調な会社と危ない会社は全く違います。取引先の情報が一番の保全だと思ってください。
在庫の管理状況や、荷物の搬出入状況も、日ごろから何気なくかつ意識して見ておかないといけません。
取引先が説明している状況と合っているでしょうか?在庫が不自然に溜まっているあるいは在庫がない、ないし荷物の搬出がほとんどないということはないでしょうか。
従業員の士気など会社を見ていてわかることもありますね。
特別なことをする必要はありませんが、日ごろの意識が大切です。
情報察知能力ですね。
売掛金の限度額(与信枠)も設定し、急激な取引増加はリスクの増大の兆候であることにも気を付けないといけません。
もしかしたら、他の取引先から断られて御社の取引量が増えているかもしれません。
実際に取引先の危険を察知した、トラブルの兆候が出てきたらどうしたらいいでしょうか。
残念ながら、契約内容にズレがあるケースではそれを解消するしかありません。
訴訟での解決等が必要な場合も多く、その解決は長期化します。
契約トラブル防止のお話でも説明しましたが、契約トラブルは怖いのです。
支払い能力に問題がある場合には、初動対応が大事です。
支払いが滞るまで至らない場合は、速やかにその取引先の与信枠を引き下げないといけません。
同業他社よりも先に逃げるということです。
支払いが滞りそうである場合には、まずは、契約書類等のチェックをし、不備があれば補完してもらいます。
契約に不備があると後で困りますので。
残高確認書などを貰うこともいいでしょう。
同時に、訪問・督促を頻繁に行い、「うるさい取引先」になることです。
うるさい先の順に頑張って支払うというのはよくあることです。
残念ながら取引先が手を挙げる(弁護士に依頼する、破産申立を考える)段階になるとどうしようもありません。
まだ、取引先が協力的なうちに、保証、相殺、商品引き揚げ、代物弁済、債権譲渡等の合意を取り付けて債権保全・回収を図らなければなりません。
同意なく商品の引き揚げや備品等の持ち出し等の取付行為がなされることがあります。
後に破産管財人に追及されることもありますし、刑事の問題にもなり得ますのでご注意を。
勿論、取引先の協力が取り付けられない場合には、法的措置をとるしかありませんね。
ただ、法的措置は、支払能力がない相手に対しては、時間がかかり実効性にも問題が生じます(弁護士が入って自己破産の準備をされてしまうと、基本的には何もできないと思ってください)。
債権回収対策は、トラブル発生を防止するためのルール・仕組みづくりが大切、日ごろはアンテナを張って情報察知能力を高める、一旦トラブルが発生したら初動対応に尽きる、ということだと思います。
顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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