広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
今回の相続問題コラムは、相続人がいない場合あるいは相続放棄によりいなくなった場合に選任してもらうことがある相続財産管理人についてのお話です。
みなさん相続財産管理人をご存知でしょうか。
相続財産管理人の選任の例が増えているようです。身寄りのいない人が増えてきているのだろうと思います。
相続財産管理人とは、家庭裁判所に選任さえた相続財産の管理をする者です(民法957条)。相続財産につき、法定代理人として管理、清算することになります。
「相続人のあることが明らかではない」ときに、「利害関係人」または検察官の請求によって家庭裁判所が選任します。
当職も何件か家庭裁判所に選任されて相続財産管理人になったことがあります。
どのような場合に選任が請求されるのでしょうか。
典型的な例では、相続人がいない方が亡くなった場合、あるいはすべての相続人が相続放棄をして相続人がいなくなった場合です。
相続財産に利害関係がある特別縁故者や債権者などが利用するケースが多いでしょう。
成年後見人が被後見人の死去の引継ぎとして申し立てた例も経験しました。
「相続人のあることが明らかではない」とは、相続人の存否が不明なことをいいます。
典型例は、戸籍上相続人がいない、あるいはその皆が相続放棄した場合ですね。
ほかにもいろいろなケースで相続財産管理人選任ができるかどうかの議論があるところです。
なお、相続人がいるがその相続人が行方不明な場合は、不在者財産管理人の選任あるいは失踪宣告の手続になります。
「利害関係人」とは
利害関係人とは、相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者です。
特別縁故者、相続債務者、相続債権者、担保権者、事務管理者(遺産を管理している人などです)、受遺者、遺言執行者、相続財産の共有持分権者、被相続人が相続分を有する遺産の共同相続人、国・地方公共団体などが挙げられています。
相続財産管理人の仕事は、いろいろあります。
まず、財産目録を調整して家庭裁判所に提出しなければなりません(民法953条)。選任後1カ月以内ということで忙しいです。
相続放棄をされた方など関係者のご協力が必須です。関係者との面談や現地調査も必要です。銀行の調査もしないといけません。
そして、財産の管理をします。財産の把握が大変なケースもあります。
田舎の山林・田畑の位置確認等が大変だった経験がありますね。
何度か現地調査をしたり、近隣の親戚の方に教えてもらったりしました。
時には売買などの処分行為もすることになりますが、その際には家庭裁判所の許可が必要です。
経験した例では、売買だけではなく、古家の解体をしたり、道路にはみ出ていた物を撤去するような仕事もしました。
田畑は大変ですね、農業委員会に問い合わせるなどして誰か引き継いでくれないか探すことになります。
相続債権者に対しては、請求申出の催告を公告あるいは知っている債権者に対しては個別にしないといけません(民法927条)。
相続人捜索の公告の申立ても家庭裁判所にします(民法958条)。
相続人捜索の公告満了後特別縁故者からの分与申立てがあった場合には、その対応もありますね。
財産を処分して、相続債務を返済しても、かつ特別縁故者に分与しても、残余財産がある場合もあります。
その場合には、国庫に帰属させることになります。
基本的には、現金化して国庫帰属をするのですが、処分できない不動産はそのまま財務局に引き継ぎます。
昔は財務局がなかなか引き取ってくれず、不動産を残したまま手続を終了させる形が多かったようですが、最近は、お墓がある、所有関係が明確ではないといった不動産以外は引き取ってくれるようになりました。
けっこう大変な仕事ですよね。
そのため、申立ての際の予納金は数十~50万円程度かかる例が多いようです。
勿論、相続財産管理人の想定される仕事量、被相続人の財産額に照らし、ケースバイケースで判断されることになります。
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