広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
お父さんが亡くなってまだお母さんが健在であるときなど、面倒くさいから、あるいは揉めることはないから、といって遺産分割協議書を作成せず、不動産の登記も亡くなった方のままにするケースがあります。
そのようなケースは、当職の経験上、珍しくありません。
事実上、誰かに、上の例だとお母さんが引き継ぐということで口頭では合意ができていることが多いでしょう。
遺産分割を放置しておくこと自体、曖昧な状態を残し、紛争が起きる原因になります。
また、更に代替わりした際には当事者が増えて登記をきれいにする場面で応じない方が出てきたり、相続手続自体が面倒になったりします。
今回は、債務整理の観点から、遺産分割をしないままで放置していた場合の問題点をお話しします。
亡くなった被相続人名義のままに不動産をしておくと、相続人が債務整理をしないといけないような事態に陥った場合、困ったことになりかねません。
債権者から強制執行をすることができますね。
相続登記を代位して、債務者の持ち分を差し押さえてくる可能性があります。
競売にかけられ、あるいは他の相続人が持分の買取りを強いられる結果になるかもしれません。
また、相続人の1人が自己破産あるいは個人再生をした場合、法定相続分が債務者の財産としてみなされます。
これが実務上よく出くわす事態です。債務整理に支障が出てくるのです。
個人再生の場合は、清算価値に当該不動産の価値の相続分を計上しなければなりません。
個人再生には清算価値保障原則というものがあって、清算価値=財産額以上の計画弁済額を定めなければいけません。
未分割の遺産の価値により清算価値が上がり多少返済額が大きくなるならまだいいのですが、債務額よりも清算価値が大きくなる、返済できないほど弁済額が大きくなってしまうような場合には、個人再生をする意味がなくなり手続を進めることができません。
かといって、次にお話しするように、自己破産を選べばいいかというとそうもいかないのです。
自己破産の場合は、オーバーローンではない不動産が存在するとして、原則として管財事件になります。
ます、予納金の負担が大きくなりますね。30万円強程度でしょうか。
さらに、破産管財人から、他の相続人に対して、破産者の持ち分(相続分)の買取り要求がなされたりします。
理屈上は、他の相続人が買取りを拒否すれば、管財人による換価手続もされ得ます(手順については議論があるのですが)。
このように、お金もかかるし、他の相続人に迷惑がかかることになってしまいます。
ただし、田舎の自宅田畑が相続登記されていないケースで、同時廃止事件として処理された例もあります。
遺産分割の話は既に決まって、引き継いだ人が占有を続けている、かつ資産価値も小さいという案件です。
逆に、遺産分割をしておけば、相続発生から多少遅くなっても、それが自己破産等申立ての直前あるいは経済的危機状況での遺産分割ではない限り、問題視されることはほぼありません。
相続登記を直前にした場合は管財事件となり否認対象となるか吟味されることになります。
遺産を未分割のまま終わらせないことは、後々のトラブルの防止のため、やはり大事なことなのです。
また、借金を抱えて苦しい方は、相続手続が終わっているかどうかを早めに確認してください。
債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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