広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。
債務整理をしないといけない場合に、給与口座がある、年金受取口座がある銀行が債権者である場合があります。
その場合は注意をしないといけません。
軽々に弁護士に受任通知を送ってもらってはいけません。
銀行に債務整理の受任通知を送ると、届いた時点で借り入れについて期限の利益が喪失され(直ちに一括請求されるという意味です)、預金口座は凍結され、口座の預金債権は借入債務と相殺されてしまいます。
なお、任意整理のケースでは銀行ローンは手を付けないことが多いです。
自己破産、個人再生の場合はそうはいきませんから、銀行に受任通知を送らないといけません。
給与口座、年金受取口座を凍結されてしまうと、勿論、預金を引き出すことができません。
一方、給与口座指定を変更しない限り、給与が入金されます(口座凍結がなされても振込入金は入ってしまいます)。年金も同様です。
給与、年金が引き出せないと困りますね。
そのため、給与口座、年金受取口座のある銀行が債権者であるときは、受任通知を出す前に、給与口座あるいは年金受取口座を借り入れのない銀行の口座に変更してもらいます。
年金口座の変更には時間がかかります。また、給与口座の変更にも大きな企業だと時間がかかることがあります。
そのため、相談を受けた時点ですぐに変更をするようアドバイスしております。
銀行が債権者であるかどうかは相談時にわかっていることがほとんどです。
しかし、預金口座とセットのカードローン契約やクレジット契約がある場合に銀行が債権者であることを認識されていないケースがありますのでご注意ください。
ただ、中にはメイン銀行の口座しか給与振込口座に指定できない勤務先もあり、その場合は困ります。
その場合はなんとか勤務先に掛け合ってもらいます。
残念ながら口座凍結がされた後にその口座に給与、年金が入ってしまった場合にはどうしたらいいのでしょうか。
まず、キャッシュカードが使えませんから窓口で引き出しをしないといけません。
かつ、口座凍結されている以上、簡単には引き出せません。
銀行に予め連絡して承諾を得ておく必要があるでしょうし、債務者の方が窓口に行った後に弁護士に確認の連絡が来ることもあります。
ただ、給与、年金の場合には、最終的には銀行が引き出しに応じるのが通常です。
広島の地場の金融機関、都市銀行には断られたことがありません。ただし、ネット銀行は経験がありません。
勿論、銀行の判断によりますが、受任通知後の入金による預金債権と借入金を相殺することは破産法でいう否認対象行為になるということと、債務者の生活のために必要なお金だということかた応じてくれているものだと思います。
中には、受任通知が届いたら「給与口座が指定されていますが大丈夫ですか。」と確認の電話をしてくれる銀行もあります。
なお、口座凍結絡みですと、借入のある銀行に対し保証人となっている方の口座が当該銀行にあるケースも怖いです。
主債務者の受任通知により、同じように保証人の口座が口座凍結されて相殺される恐れがあります。
契約書を探して保証人がいるかどうか確認した上で、正確に弁護士にご報告いただかなければなりません。
個人の給料、年金と異なって、法人の売掛金が口座凍結後に入金されたケースだと、引き出しを拒む金融機関があります(基本的には断られるイメージです)。
自己破産開始決定後の破産管財人による引き出しには応じるが、債務者の要請には応じないといった対応です。
債務整理を考える場合に銀行が債権者であるときはこのような注意をしてください。
債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602