広島市の弁護士仲田誠一です。
債務整理のうち、自己破産や個人再生の場合にはご相談時に給与明細をお持ちいただいた方がいいかもしれません。
自己破産や民事再生の申立準備のためには給与明細をお持ちいただくのですが(給与明細は必要書類になります)、その際に、依頼者様がご認識されていない事実が判明してしまうことが時々あります。給与明細には自己破産や個人再生の準備にあたって重要な情報が載っている場合があるのです。
特に、給与明細の控除(給与天引き)の欄の問題です。裁判所もかならずチェックをしているところです。
まず、債務、債権者の面です。
自己破産、個人再生では、債権者を一部外して手続をすることはできない原則です。
債権者はすべからく債権者として扱わないといけません。
給与明細の控除欄を見ると、稀ではありますが、勤務先からの借入金や労働組合・共済組合からの借入金があることが漏れていたことが判明する場合があります。
勿論、勤務先からの借入れや組合からの借入金があると、勤務先等を債権者として扱わないといけません。
そうすると、自己破産、個人再生を申し立てるということが勤務先等に判明してしまいますし、何よりも弁護士からの受任通知や裁判所からの通知が届いてしまいます。
理屈上、そのことにより勤務先が従業員を解雇することは難しいですし、その事実をもって解雇された例も経験がありません。ただ、困ってしまうのは当然ですね。
場合によっては、後々偏頗弁済として問題になる行為であることを承知の上で、勤務先に対する返済を手続に先行して行うケースもあるでしょう(勿論、弁護士が推奨できる行為ではありませんが)。
なお、共済組合等からの借入金など保証会社が付いているケースでは、割とすんなり受け入れられる傾向があります。
ただし、通常、破産開始決定あるいは個人再生開始決定まで給与天引きは継続されてしまいます、開始決定時に保証会社による代位弁済がなされ給与天引きがなくなります。
これを偏頗弁済として突っ込まれるケースもなくはありません。管財事件だと否認の対象になり得ますから(当職も破産管財人として否認し勤務先に返還してもらったことがあります)。
問題は勤務先等に「債務」があるかどうかです。
勤務先での事故や何かの手当の返戻があるなどの事情で、「弁償金」、「返納金」、あるいはただ単に「その他」などの名目で天引きされていることがあります。
運送会社などだと事故負担金が天引きされていることもあります。
勤務先からの借入金は忘れなくても、それら支払債務を「債務」だと認識されていないケースもあります。
借入金でなくとも勤務先に対して債務を負っていれば勤務先を債権者として扱わないといけないことにご注意ください。
次に財産の面です。
控除の欄に、団体保険や共済保険の給与天引きの記載があることがあります。けっこう、忘れてしまうケースがあります。
自己破産、個人再生では、保険契約がある場合、保険証券と解約返戻金証明書(あるいは解約返戻金がない、ある場合は金額がわかる資料)が必要書類の中にあります。
団体保険は書類が残っていないことが多く、慌てて問い合わせや再発行をしてもらうことがあります。事前に確認しておきたいところです。
また、〇〇金、〇〇積立、〇〇会等の項目で給与天引きがある場合もありますね。
資産性の有無(解約したらお金が返ってくるのか)、資産性がある場合には残高がわかる資料の報告を求められます。
組合費や親睦会であれば資産性はないという説明ですんなり通るのですが、旅行積立等「積立」は説明に困りますね。
旅行積立は会費みたいなものでお金は帰って来ないということも多いのではないかと思いますが年金等他の積立は通常資産性があるのだろうと思いますから資料あるいは説明が必要になりますね。
財形預金、社内預金の天引きがある場合には、それらは勿論資産性があるものでしょう。残高がわかる資料が必要ですね。
なお、給与天引きの控除欄ではないですが、保険料の所得控除の欄も要チェックです。
控除があるのに保険契約の資料がないこと、あるいは金額的に保険契約が一部漏れていることがわかるケースもあります。勿論、被扶養者契約の保険料もあるかもしれませんが。
このように、自己破産や個人再生の検討・準備をする際には、給与明細は、その控除欄(給与天引きの欄)を中心に早めにチェックをしておかないといけない書類です。
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