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破産手続における破産管財人 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の借金問題コラムは、破産手続に登場する破産管財人のお話です。

破産管財人をご存知でしょうか。


当職も破産管財人を多数経験しておりますが、一般的には馴染みがない言葉かもしれません。

 

【破産管財人が就任する場合はどのような時でしょうか】

 

破産管財人が選任される事件を管財事件と呼びます。

破産法上、破産手続のために破産管財人が選任されることが原則です。

法人が破産をした場合には、原則どおり、破産管財人が裁判所によって選任されます。
法人破産の場合は、管財事件となるということです。

 

これに対して、個人が破産をする場合には、同時廃止事件を除いて、破産管財人が選任されます。
建前と異なり、個人の自己破産の場合、多くは破産管財人が選任されないまま、同時廃止事件として終了します。

同時廃止事件というのは、財産があまりなく(各裁判所によって基準があります)、破産手続費用を支弁できないと認められる場合に、破産開始決定と同時に破産手続が廃止される手続です。
だから同時廃止と呼ばれます。

財産の基準は、同時廃止基準あるいは振り分け基準が各裁判所で決められており、それに沿って判断されます。
広島地裁本庁ですと、現在、現預金50万円、その他財産は項目毎に各20万円が基準となっています。

ただし、財産がなくとも、広島地裁本庁では5年以内に会社を経営したり事業を行っていた場合や、免責不許可事由がありその程度が重大な場合と思われる場合
(免責調査型の管財事件と呼ばれます)にも、破産管財人が選任されます。

 

【破産管財人就任のタイミングは】

 

破産管財人が就任するのは破産開始決定のタイミングです。

自己破産を申し立てた場合は、裁判所からの補正連絡に対応して、指示された予納金を納めたタイミングか、あるいは債務者審尋にて破産管財人候補者と会ったタイミングですね。

 

【破産管財人は誰が就任するのか】

 

裁判所が、弁護士から選任します。
自己破産申立代理人ではない客観的な弁護士が選ばれます。
法人の自己破産と個人の自己破産とを同時に申し立てる場合には、同じ弁護士が就任します。
割合大規模な破産の場合には、管財人代理の弁護士も選任されることがあります。

 

【破産管財人の仕事とは】

 

様々な仕事がありますが、大まかに言えば、調査、財産の管理処分、債権調査・配当(なお、配当が全く見込まれないと債権調査はされません)です。

 

まず、一番大きい仕事は財産の管理処分ですね。

破産開始決定後の破産者の財産(個人の場合には財団に組み入れる財産に限られます)の管理処分権は破産管財人に移ります。
個人の場合には、自由財産拡張(財団に組み入れない財産を決める手続)に対する意見も出します。


財産を換価して配当原資を作るということになります。

当職の経験でもいろいろなものを換価しました。

預貯金、株式、保険、ゴルフ会員権、保証金、不動産、車、機械工具類、在庫商品等々、様々なものを処分します。
 

工場内の機械工具一式等、場合によっては入札方式で売却をします(引取業者に声をかければ現地に来てくれます)。

不動産は、基本的には業者さんに仲介して売却しますが、流通性が乏しい不動産や賃借人、借地人がいる不動産では、近隣の方や賃借人・借地人にお声がけをしたこともあります。

特に苦労したのは農地の処分ですね。農地は普通には処分できません、農業委員会などに問い合わせる、あるいは近隣の農家さんに声をかけるなどしないといけません。
また、有害廃棄物がある場合は処理してからではないと売却できません、たまたま処分工場が閉鎖になっている時期に当たり一時保管場所の確保等苦労したことがあります。
抵当権者や租税公課の差押権者との交渉も骨が折れる場合があります。
売却する場合には、現状有姿売買、境界確認義務免除、瑕疵担保責任免除の形で購入してもらいます。
その分、ある程度安価になることは止むを得ないかもしれません。
 

 

なお、財産の管理処分に関連して、破産者の訴訟を引き継ぐこともありますし、換価回収のために訴訟を提起することもあります(敷金返還の訴訟を提起したこともあります)。

 

次は調査です。

破産管財人には調査権限があり、破産者には回答協力義務があります。

財産調査、負債調査、個人破産の場合には免責調査もします。
破産者宛の郵便物は破産管財人に転送され、開封してチェックすることになっております。

個人破産の免責調査については、破産管財人から免責に関する意見書(免責不許可事由がない、免責不許可事由があるが裁量免責相当である、免責不許可が相当である)が裁判所に提出され、ほぼそのとおりの結論が出ます。

 

調査に関連して、否認権というものがあります。
破産管財人には、破産法に定められた否認対象行為がある場合、同法に定められた要件で、破産者が行った行為を否認し(法的効果を覆す)、散逸した財産を取り戻す権限があります。


よくあるのが、受任通知後あるいは破産直前の偏頗弁済(不公平な債務の弁済)や贈与などの無償行為ですね。
破産直前の相続、離婚に伴う財産分与・慰謝料支払、不動産や車の売却もよくよく吟味されます。営業譲渡、会社分割も否認の対象となり得ます。


通常、まずは交渉による解決を図りますが、解決できない場合には破産裁判所へ否認請求を申し立てる、あるいは通常裁判所へ否認の訴えを提起するという流れになります。

和解的な解決ができるケースが多いのですが、当職が申し立てた否認請求が破産裁判所で認められた後に通常裁判所に異議訴訟を提起され、それが控訴審まで至って解決にかなり時間がかかったケースも経験しています。

 

なお、法人破産の場合、破産管財人が税務申告をすることもあります。
従前の税理士さんに頼める場合は頼むのですが、資料が散逸している、関係が悪くなっている、あるいは税理士さんにお願いする費用が出せないような場合には、破産管財人自ら申告作業をします。
当職も何件か自分で申告をしました。そのため、法人破産の場合には、会計書類の保全、引継ぎも大事になってきます。

 

勿論、破産管財人は、上述に限らず、開始決定から手続廃止・終結まで、破産手続の隅々に関与します。

破産管財人の経験がないと破産のことは完全にはわからないと言ってもいいかもしれません。
特にどのような行為が問題となりそれがどの程度突っ込まれるかですね。

申立代理人を選ばれるときにも、破産管財人の経験が豊富な弁護士が望ましいですね。

 

今回は破産管財人についてご紹介をしました。
破産管財人に接することがございましたら、ぜひご協力のほどよろしくお願いします。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

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