広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
今回の借金問題コラムでは、自己破産、個人再生の際の債権者一覧表に一部債権者の漏れがあった場合についてお話しします。
あってはならないことですが、稀に起きることがあります。
債権者数が多い場合、しばらく支払えていない場合、保証債務や個人間の債務など請求がまだ来ていない債務がある場合、代位弁済・債権譲渡が続き債権者を把握できていない場合などが考えられます。
債権者の督促状が来ていない、しばらく口座引き落としもない、という場合には、依頼者が弁護士に伝えない限り、弁護士が把握できないですね。
勿論、弁護士事務所等の単純なミスで債権者一覧表にある債権者が漏れる可能性もあります(あってはいけないことですが)。
自己破産、個人再生手続の途中で債権者の漏れが判明した場合はどうするのでしょうか。
その場合には、債権者一覧表を補正して債権者を追加すればいいです。
なお、手続の途中で督促状等債権者からの連絡が来た場合は、債権者一覧表にその債権者が記載されていない可能性が高いので、弁護士に確認をしてください。
債権者一覧表に記載漏れがあったまま自己破産、個人再生手続が終わった場合はどうなるのでしょうか。
自己破産の場合、非免責債権を定める破産法253条1項6号に、
「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)」
と定められています。
非免責債権とは、破産免責の効果が及ばず破産者がその弁済責任を免れない債権です(ということは債権者が法的に請求を継続することができます)。
「債権者名簿」とは、債権者一覧表を指すと思ってください。債権者一覧表に知りながら債権者を記載しなかった場合には非免責債権として免責対象外になってしまうのです。
裁判所は債権者一覧表の記載に基づき債権者に通知を行います。記載漏れがあると、当該債権者は免責についての意見申述をする機会を奪われるなどの不利益を被ることから、非免責債権として債権者を保護する趣旨と説明されます。そのため、債権者が破産開始決定のあった事実を知っている場合には債権者を保護する必要がないので非免責債権になりません。
「知りながら」とありますが、記載漏れ自体が破産者の過失による場合であっても非免責債権になるとされています。怖いですね。
破産者が無過失で記載を漏らした場合にはその債権者に免責の効果が及ぶということになります。
確たる判例がありませんが、当たった下級審裁判例でも、
「債権者名簿に記載されなかったことが破産者の責めに帰することのできない事由による場合にまで非免責債権とすることも相当ではない。そうすると、債権者名簿に記載されなかった債権について、債権の成立については了知していた破産者が、債権者名簿作成時に債権の存在を認識しながらこれに記載しなかった場合には免責されないことは当然であるが、債権者名簿作成時には債権の存在を失念したことにより記載しなかった場合、それについて過失の認められるときには免責されない一方、それについて過失の認められないときには免責されると解するのが相当である」
「破産者が、債権の存在を知って債権者名簿に記載しなかった場合のみならず、記載しなかったことが過失に基づく場合にも免責されないと解すべきである。」
などとされています。
過失がない場合というのは、長年請求も来ておらず破産者が債権者であるとの認識がなかったなど、破産者がその債権者を記載をしなかったとしてもやむを得ないケースに限られるでしょう。
制度趣旨からは、免責の及ぶ場合を拡げる方向で解釈してもいいように思います(債権者が手続関与をしても免責結果は変わらないと思われる場合など)。
しかし、裁判例を見ると免責の効果が及ぶのは例外的な取り扱いのようです。記載漏れがあると基本的には免責の効果が及ばないと覚悟をした方がいいですね。
記載漏れがあった債権者から請求があった場合には、とりあえず破産免責決定書の写しなどで破産免責を受けたことを説明することになります。
それに対する対応は債権者が考えることになります。非免責債権かどうかというのは債権者が主張すべきことですからね。
債権者が金融機関の場合は、破産開始決定通知、免責決定通知を送って破産免責を得たことを説明すると、免責処理をしてくれる、すなわち請求をしないケースが多いと言われます。実際、当職もOKを貰ったことがあります。ただ、ケースバイケースの判断なのでしょう。
自己破産の場合は、債権者の記載漏れがないかよくよく確認しないといけないですね。
なお、破産者が主債務者である場合の保証人、あるいは保証債務者である他の保証人の求償権については、債権者一覧表に記載がない場合にも免責の効果が及ぶのか議論があるようです。広島では保証人や他の保証人を債権者一覧表への記載を指導されております。
続いて、個人再生の場合に認可決定後に債権者漏れが発覚したときはどうでしょうか。
こちらは割合傷が浅いです。認可された再生計画の再生債権の弁済率に応じて漏れていた債務を弁済するということになります。
ただし計画に基づくと期限が来ている弁済分は一括弁済となります。
こちらもやはり債権者漏れは怖いですね。
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広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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