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相続法改正ポイント1 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

民法(相続法)の改正がありました。2019年71日から順次施行されます。

 

ということで、相続法の改正点についてご説明しないといけません。今後、次かいつまんで説明させていただこうと思います。

 

【相続による権利変動に対抗要件が必要なことが明記された】

改正民法899条の2のお話です。相続により相続財産の相続人等への権利移転が生じますね。これを第三者に主張する場合の規定です。
想定できるのは、他の相続人が遺言や遺産分割結果を無視して法定相続分に応じて相続登記をして自分の持ち分を第三者に譲渡した場面、遺言があるあるいは遺産分割協議が成立したにもかかわらず登記をしていない間に他の相続人等が相続登記を代位登記して差押等をした場面でしょうか。

遺産に属する動産類の譲渡も理屈上はその範疇に入りますね。

 

権利の変動を第三者に主張するには対抗要件が必要です。
対抗要件とは、両立しない譲渡などの物権変動がある場合の優劣を決めるものです。
不動産であれば登記、普通乗用車であれば登録ですね。
典型例は、二重に不動産が譲渡されたがどちらが所有者になるのか、という問題で、先に登記を得た方が勝ちます。

 

現在は、最高裁判例に従って、

遺産分割方法の指定(「相続させる」)旨の遺言による権利取得には対抗要件が必要ない、

遺産分割や遺贈(「遺贈する」旨の遺言)による権利変動は対抗要件が必要である、

とされています。

遺言書の書き方によって扱いが違うのです。相続させる旨の遺言による権利の承継は、登記をしなくても第三者に主張できていたのです。
他の相続人が勝手に法定相続分を譲渡してもそれは無効と言えるというわけです。

 

今回の改正では、遺言の場合も遺産分割の場合も統一して、相続分を超える権利の承継については対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとしました。
取引の安全を考慮したものと言われています。

 

改正相続法の施行により、「相続させる」旨も遺言があっても、登記をしないで放っておくのは危険になります。
相続人の
1人が相続共有登記を行いその持ち分を第三者に譲渡して登記をしてしまえば、受け継ぐはずであった不動産の一部が他人に渡ってしまいます。
債権者が共有登記をして債務者の持ち分を差し押さえるということも考えられます。
損害あるいは損失を被った分は当該相続人に請求できるのは当然ですが。


遺言がある場合も安心しないでできるだけ早く相続登記をするべきでしょう。


勿論、相続に限らず登記をしないで放置することは百害あって一利なしです。

 

債権を相続した場合も同様です。

 

可分債権(数字で分けられる債権ですね。金銭債権は基本的に可分債権です。)は相続開始と同時に法律上当然に分割されるという判例があります。


なお、預貯金も預貯金債権という債権の一種で可分債権ですが、特殊な扱いを受けます。

少し前までは、預貯金は当然分割されるから遺産分割の対象とはならない(審判で判断してもらえない)という不都合が生じていました(逆に、遺産分割が完了していなくても各相続人は法定相続分に応じた預貯金の払戻請求権が認めらるという便宜はありました)。
しかし、最高裁は、預貯金債権については遺産分割の対象となる旨の判例を出しました。平成29年のことで、実務上影響が大きい判例でした。

 

預貯金債権以外の可分債権、例えば貸金返還請求権は、そのままの扱いとなります。

上記のとおり、すべての場合に法定相続分を超える権利の承継を主張するには対抗要件が必要となるわけです。

 

ここで問題があります。債権の第三者対抗要件は、譲渡人からの債務者に対する確定日付がある譲渡通知あるいは債務者からの承諾になります。

相続の場合に譲渡人に当たるのはすべての相続人です。
でも皆で出せないことがありますね。

そこで、改正民法では、相続分を超える債権を承継する相続人が遺言あるいは遺産分割の内容を明らかにして単独で債務者に通知をすることで足りると手当をしています。

 

【可分債務の扱いの明文化】

改正民法902条の2の問題です。可分債務の扱いの明確化です。

 

可分債権の対概念の可分債務(数量的に分けられる債務ですね)も、可分債権と同様、共同相続人間で法定相続分に応じて分割承継されるとされます。
被相続人の借金等、相続債務である金銭支払債務は基本的に可分債務です。

被相続人に1000万円の相続債務があって相続人が子2人の場合、遺産分割をしなくても500万円の債務を承継していることになります。
怖いですね。

 

遺言や遺産分割によって債務の分割割合を指定あるいは合意したとしても、債権者には対抗できません。
債権者は当事者の合意に拘束されずに請求することができます。
一方、債権者から分割割合の指定あるいは相続人間の合意の内容に従って請求することも許されるとされていました。

 

改正民法902条の2はその考え方を明文化した規定です。

 

債権者は、その気になれば法定相続分に応じた弁済を各相続人に要求できます。
遺産分割協議を進めるにあたっては、この点を前提としなければなりませんね。
債務の整理をどうつけるか、それに応じて資産の配分をどうするのか、意識して合意をしておかなければなりません。

 

遺言、遺産分割、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

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