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相続放棄と廃車など財産処分 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 
今回の相続問題コラムは、相続放棄後の廃車など、相続放棄をした後の処分行為が許される範囲などを説明します。

 

最近は相続放棄の話が多くて恐縮です。偶々変わった相続放棄をお手伝いすることが多かったのでご容赦ください。

 

相続放棄をするのであれば、被相続人の財産を「処分」してはいけません。

被相続人の財産の「処分」行為をしたら、単純承認事由となります。
相続債権者が相続放棄の効果を覆すことが可能になってしまいます。
相続放棄の申述手続自体でも家庭裁判所から来る質問内容に処分行為の有無が入っています。

 

被相続人の家主等から遺品の整理や引き取りを頼まれるようなこともあるでしょう。
賃貸借の連帯保証人でなければ理屈上は対応する必要はないですが、心情的に断りづらいですね。

 

仮に保管してしまった被相続人の財産は、理屈上、相続財産管理人か新たに相続人が判明したらその相続人に引き渡すまで管理をすることになります。

皆が相続放棄をしても相続管理人が選任されることは稀です。

引き継ぐ先が永遠に現れない場合は、財産的価値がなくなるあるいは誰からも文句を言われることがなくなっただろう頃合いを見計らって処分せざるを得ないと思います。
理屈ではなく現実的な対応ですが。

 

勿論、財産的価値のない遺品の廃棄等は、被相続人の財産の処分としては見られません。
念のため、財産的価値がないことを後で説明できるよう証拠を残しておいた方がいいでしょう。

 

被相続人の車を預からざるを得なかった場合はどうしたらいいのでしょうか。

勿論、相続放棄をしたら基本的に預かる必要はないのですが・・・

 

被相続人の所有名義車両に価値がない場合には、処分することは単純承認行為にはならないでしょう。
ただ、査定書を出してもらってから処分した方がベターです。

 

車両に価値がある場合には、困ってしまいます。

売却して代金を保管する行為は、保管料・保管の手間を省略して財産を管理する行為として、単純承認行為にはならない可能性はあります。
管理費用を削減することになりますからね。

もっとも、法律上は、相続放棄をした人は相続財産を取得しないため、車両を第三者に売却できませんよね。
売却するために相続財産管理人の選任をしてもらうことも費用がかかり躊躇します。

そうすると価値がなくなるまで保管するという選択肢しかないかもしれません。

 

預かった車がクレジット会社の所有名義である場合は、別の観点からも考える必要があります。
車両が所有権留保物件であった場合、クレジット会社の所有名義になっています。

 

仮にクレジット会社の債権が残っているのであれば、原則として債権者に引き揚げてもらえますね。
債権者に連絡して引き揚げてもらっても問題がないです(清算金が発生する場合には受け取れない旨伝えないといけませんが)。
それができたら楽ですね。


しかし、クレジット会社に車両の所有権を放棄すると言われた場合(価値がないあるいは小さい場合に言われることがあります)には、困ります。

価値のある車だと、理屈上は価値が亡くなるまで保管し価値がないと思われる時点で処分をしないといけません(あるいは相続財産管理人の選任申立てをして処分します)。

 

価値がない車であれば、理屈上、債権者から放棄の書類(名義変更の書類)を貰って廃車できるのでしょう。

 

クレジット会社に債権が残っていなくて、単に名義を変えていない場合(価値がないことが前提です)も、理屈上、債権者から放棄の書類(名義変更の書類)を貰って廃車できるのでしょう。

 

ただ、双方の場合とも、相続放棄をした親族が債権者から放棄の書類(名義変更の書類)を貰えるかが問題とはなります。

 

実際に経験した例は後者のケースでした。
 

被相続人の家主に頼まれて車を引き取って保管していたのですが、保管に困り廃車にしようとした、
しかし車検証を見るとクレジット会社が所有者登録されており廃車ができないと言われた、
クレジット会社に問い合わせたところ弁護士から連絡をしてくれと言われた、
ということでした。


当職がクレジット会社と交渉しましたが、最初は相続人ではないから書類は渡せない、相続財産管理人にしか渡せないと断られました。
 

困っている事情と理屈(相続財産管理人は選任されておらず選任される予定はない、車両価値がないことは明白なのでこちらが処分しても問題はない等)を説明して、他の部署からOKを貰い、なんとか名義変更書類を取得することができました。

 

一般的な扱いかどうかはわかりませんが、紹介させていただきます。

 

相続放棄をする以上、下手に被相続人の財産を管理することがないようにすることが一番大事です。
勿論、事情があってやむを得ず管理することになってしまうこともあります。
預かった以上は管理の義務が発生しますので、管理する財産の処分等は慎重に判断してください。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

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