広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
【初めに】
今回は、債務整理のうち自己破産と相続、離婚との関係のお話です。
前にも説明はさせていただいたことがありますが、最近何件か自己破産と相続、離婚が関係する案件をお手伝いしたので、改めてお話しようと思う次第です。
自己破産のお話をしますが、勿論個人再生もパラレルに考えられます。
個人再生では自己破産における否認という問題が直接には出てきませんが、清算価値保障原則の関係で個人再生も同じように考えます。
【自己破産と相続】
自己破産の申立て時には、相続の有無の報告をしないといけません。
広島ではご両親がなくなっている場合には必ず報告を求められています。
いつ亡くなったか、遺産の有無、遺産分割協議の有無、居住形態は所有か賃貸か、を聞かれます。
未分割遺産の報告漏れが多かったからです。
未分割遺産については、相続分に応じた持ち分が財産として評価されるのが原則です。
それが不動産であれば、即管財事件になることが基本です。
他の財産である場合には、その評価額次第で管財事件になるかが決まります。
未分割遺産があり管財事件になるケースでは、破産管財人が、他の共同相続人に持ち分の買い取りをお願いする、あるいは共同で売却・解約し換価することを要請します。
他の共同相続人がそれに応じない場合は困りますね。破産手続が進みません。持ち分のみを市中で売却することは困難です。
また、破産管財人が遺産分割協議をしてその後に共有物分割請求を行えるかどうかは議論があります。
そもそも時間もかかります。
破産管財人からは他の共同相続人に粘り強く協力要請が来るでしょう。
例外もあります。未分割遺産(多く場合は田舎の不動産でしょう)の売却可能性が乏しく財産価値があると評価できないケースです。
そういう場合は、きちんと説明をすれば、管財事件にならず、同時廃止事件として処理してくれる例も何件か経験しました。
田舎の不動産で、遺産の分け方は跡取りあるいは母が相続することが決まっていたが、相続登記をするのが面倒かつ費用がかかるということで、相続登記をしていないケースもあり得ます。
対抗要件に登記が必要という点を除けば、理屈上は他の相続人が受け継ぐことに合意した破産者の財産ではないですね。
価値がない、あるいは小さいケースでは、既に遺産分割は終了しており破産者の財産ではないと認めてくれるケースもあります。
ただし、価値が相応にある不動産の場合には裁判所の対応も厳しいでしょう。
経験上、未分割遺産があるケースではそもそも価値がない不動産であることがほとんどです。
その場合、遺産分割が終了しているという理由で同時廃止になるのではなく、価値がないという理由で同時廃止を認めてくれる傾向があると感じています。
価値がある不動産の場合にはハードルが高いかもしれません。
破産直前に急いで相続登記をしても、登記自体が否認の対象になり得ます。
いずれにせよ、戸籍、相続関係図、登記、固定資産税評価証明書、写真、査定書(取れないならその事情を説明)、他の相続人の事情説明書などを揃えて申立てをすることになります。
経済的危機状態あるいは破産申立て直前の遺産分割あるいは相続放棄ということもあります。
最近も何件かお手伝いしました。
経済的危機状態あるいは破産申立て直前の場合は、否認対象行為になるかという問題が出てきます。
破産管財人は、一定の要件の下で、支払不能状態等での財産散逸行為、無償行為等の効力を否定し、財産を取り戻すことができるのです。
相続放棄は破産直前であっても基本的に大丈夫です。
財産処分行為ではなく、身分行為だからという理由です。裁判所に突っ込まれたことはありません。
遺産分割は、相当な内容だと大丈夫ですが、不相当な内容であると(正当な理由がなく破産者の取り分を少なくする内容であると)、否認の対象となります。
必ず説明を求められるため、合理的な説明を用意しておかなければいけません。
【自己破産と離婚】
離婚自体は自己破産申し立ての有無は関係ないです。
離婚を自己破産後まで待つ必要はありません。
破産申立て直前の離婚時給付と否認の問題があります。
離婚時給付というと、財産分与・慰謝料ですね。養育費はあまり問題視されることはありません。
理屈上は相当の財産分与・慰謝料はOKです。不相当な部分は否認の対象となります。
この相当性という説明が問題です。必ず突っ込まれるところなので、説明は慎重に期します。
もっとも、相当性がある支払いであっても偏頗弁済行為として問題視される可能性は残ります。
自己破産をお手伝いするときは、相当性のある財産分与等の組立てをします。慰謝料については原因の証拠も提出することが多いです。
離婚時給付を分割でお支払いされているケースもあります。
財産分与の分割払いを見たことがありますが、これは破産債権として免責の対象になってしまいますね。
慰謝料は内容によりますが、非免責債権として扱うことも可能です。
今回のお話はここまでとなります。
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広島の弁護士 仲田 誠一
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