広島市の弁護士仲田誠一です。
法人税法のお話の続きです。
私は個人事業主ですが法人税の税務申告をしたこともあります。
法人の破産管財人として申告をするケースがあるのですね。
ちなみに、他人の所得税申告も、成年後見人としてしたことがあります。
元銀行員なので会計の知識はあり、決算書も読めます。簡単な決算書であれば作成も可能です。
ただ、税務申告は難しいですね。付表等とにらめっこしながら申告を行いました。
前回は、法人税法上の「損金」のことをお話しましたが途中で終わっていました。
今回はその続きです。
損金の通則を定める法人税法22条3項の特則(別段の定め)の続きをお話します。
□ 減価償却費(法人税法31条)
固定資産の取得費用を当期の損金として計上することは特例を除いて許されません。
減価償却資産は長期間にわたって収益に貢献します。
費用収益対応の原則からは、固定資産の取得費を使用または時の経過によって減価するのに応じて各事業年度の必要経費に配分することになっています。
減価償却費は、経済的には、投下資本の回収、更新資金準備の機能、要するにCFを生む機能を有する制度です。
キャッシュフロー表を見ると、減価償却費はプラスされる項目になっています。会計上は費用なのですが、実際にお金が出ていかないので、キャッシュフローにはプラスして戻すのです。
固定資産であっても、事業の用に供していない資産は減価償却資産から除外されます(施行令13条)。
節税スキームの金融取引で問題となる点です。フィルムリース事件とう有名な判例がありました。
減価償却資産には、有形固定資産だけではなく無形の償却資産(営業権等)もありますね。営業権というとM&Aで見るものです。赤字会社の事業譲受から営業権は把握できないとする裁判例もあり注意です。
耐用年数は、耐用年数省令(法定耐用年数)で定められています。
※ 少額減価償却資産
取得費の損金算入(施行令133等)等の特例があります。政策的に特措法で度々改正されるところです。
※ 償却の方法
棚卸資産の評価方法と同様、減価償却の方法の税務署長への届出、変更の際の税務署長の承認が必要となっています(施行令)。
耐用期間内に毎期均等額で償却する定額法と
耐用期間内の毎期期首未償却残高に耐用年数に応じた一定の償却率を乗じて償却する定率法がメインですね。
ほかに、生産高比例法、リース期間定額法もあります。
減価償却はCF政策にも関わりますので、資金計画に沿ってその方法を採用するのでしょう。
なお、建物付属設備及び構築物は定額法のみ採用可能です(施行令)。
□ 役員給与等(法人税法34)の損金不算入
使用人に対して支給する給与は原則としてすべて損金に算入されます(ただし、特殊関係使用人に対する過大な給与の損金不算入、法人税法36条)。
ところが、役員給与については、法人税法は、以下の3種類の役員給与について損金算入を認めます。
利益の処分にあたるものを損金不算入にする趣旨です。
・ 定期同額給与
・ 事前確定届出給与(役員賞与)
・ 利益連動給与 ×同族会社
※ 勿論、役員給与等には、債務の免除益その他の経済的利益も含まれます(法人税法34条4項)。
※ 不当に高額な部分は損金に算入されません(法人税法34条2項)
不当に高額かの判断基準は次のとおりです。
職務の内容、法人の収益および使用人に対する給与の支給状況、同種事業・類似規模(「倍半基準」-売上高が0.5~2倍の範囲内の同業者)の法人の役員給与の支給の状況等に照らし相当であると認められる金額を超える部分(実質基準)、または定款の規定、株主総会の決議等により定められている役員給与の限度額等を超える部分の金額(形式基準)、のいずれか多い金額(施行令70条1号)。
ただし、裁判例で、当該役員のその法人に対する貢献度等も合わせて考慮しなければならないとされています。ここが問題ですね。
※ 役員退職給与
役員退職給与についても、不相当に高額な部分の金額は損金に算入されません(法人税法34条2項)。
その判断基準は次のとおりです。
法人の業務に従事した期間、退職の事情、同種事業・類似規模の法人の役員退職給与の支給の状況等を総合的に勘案して判断する(施行令70条2号)。
ただし、こちらも、当該役員のその法人に対する貢献度等も合わせて考慮しなければならないとされています(裁判例)。
弁護士の立場からすれば、中小企業のオーナー社長については、貢献度が非常に高いのであり、かつ、役員報酬等を決める権限は法律上株主総会にあるはずです。
株主総会がきちんと決定した退職金は損金と認められるべきものだと考えますが。
思ったよりも長くなってしまいました。次回に、法人税法上の「損金」のお話をもう1回だけさせていただきます。
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