広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
前回、債務整理のうち、個人の自己破産の流れ、スケジュール感をお話しました。
今回は、個人の民事再生(個人再生)のお話をさせていただきます。
自己破産のお話と同じく、広島本庁での申立てを前提としていると思ってください。
自己破産にならって、1契約、2受任通知、3申立準備、4申立後開始決定まで、5開始決定後支払開始まで、の流れでお話しします。
1 契約
2 受任通知
契約、受任通知の流れは、自己破産でお話したところとほぼ同じですね。
そちらをご覧いただければ幸いです。
法テラスの民事法律扶助をご利用される場合には、弁護士費用が自己破産よりも設定金額が高めになっています。手続が煩雑なためでしょうか。
個人的には、自己破産の方が弁護士の負担が大きいのではないかとは思っておりますが。
給与天引きで共済借入等が控除されて返済になっている場合がありますよね。受任通知を出しても通常止まりません。
自己破産の場合はあまり言われないのですが、理屈上は偏頗弁済となります。個人再生の場合には、清算価値(個人再生には清算価値保障原則というルールがあり財産=清算価値以上の金額は弁済しなさいということになっています。)に弁済分を計上するルールです。受任通知後はできるだけ早く申し立てないといけない場合がありますね。
なお、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用する場合には、住宅ローンは従前どおりお支払い続けていただきます。
3 申立準備
個人再生の準備期間は、通常、自己破産よりも1カ月ほど延びます。家計収支表を3か月分提出しないといけないからです。
また、個人再生を選択する場合には、収入がある程度あり、自己破産のケースよりも法テラスを利用できない方が多いですね。
分割で弁護士費用をお支払いいただくために準備期間が長くなる傾向もあります。
申立準備期間は、本当に個人再生ができるか見極める期間でもあります。
数か月いくらお金が残るか試してみて、やはり一定の弁済原資が確保できそうもないという場合には、自己破産に方針を変更せざるを得ないことになります。
個人再生認可決定を得ても、途中で弁済を継続できなければ債権者の申立てにより取り消されてしまいます。
もし確実に支払いを継続できる自信がない場合には最初から自己破産を選択する方がベターです。申立てまで方針は変更できますから。
個人再生申立ての場合、滞納租税公課があるのであれば、役所と弁済方法について協議をしていただかなければなりません。その結果と履行状況は報告します。
税金を払った上で、再生計画どおりの弁済を継続できるか見られるわけです。
他の必要書類などは、自己破産とほぼ同じになります。
4 申立後開始決定まで
こちらも自己破産とほぼ同じですね。
宿題のような補正連絡が来て(来ないこともありますが)、補正報告に答えて予納金を納めれば開始決定です。
予納金等申立費用は3万円以内で収まるかという感じで、自己破産よりも高くなっています
。
自己破産でいう管財事件と似たようなものとして、個人再生では、個人再生委員という弁護士が選任されることがあります。
その場合、予納金が別に20万前後(最近は21万6000円でしょうか)かかります。
個人再生委員のお仕事は以前のコラムでも書かせていただきました。簡単に言えば、個人再生開始要件のチェック、及び再生計画案等に対する助言とチェックをする役割でしょうか。
個人再生委員が選任されるのは、書類上さらりと流して手続を進めることに躊躇がある場合ですね。
破産でいう否認対象行為が顕著で清算価値に計上すべき金額の判断が必要なケース、財産の評価が正しいか吟味する必要があるケース、本人申立や弁護士が代理人となっていない場合にきちんとした報告が裁判所いなされないあるいは本人が手続を理解できていないケース、などでしょうか。
個人再生委員が選任される場合には、開始決定に際して意見を貰う等のために開始決定が遅くなります。
5 開始決定後支払開始まで
開始決定が出ると手続進行予定表がもらえます。
大まかにいうと 開始決定 ~ 再生計画提出 ~再計計画認可 ~支払開始の流れです。
再生計画案提出期限は、開始決定から2か月ちょっと先のイメージです。
それに合わせて、家計収支表の作成継続(必ずしも指示されるわけではないですが)と試験積立(計画案どおり弁済できるかテストするための毎月の積立)を行ってもらいます。
再生計画提出時に家計収支表や積立通帳の写しを裁判所に提出します。
試験積立というのは、将来の再生計画案どおりの弁済ができるかどうか(履行可能性)のテストのため、通帳に毎月一定額を入金し貯めてもらうものです。
試験積立のタイミングですが、申立前、申立後、開始決定後のいずれでも大丈夫です。
わたしは、開始決定後にお願いすることが多いでしょうか。開始決定後の試験積立は清算価値に計上が必要ないからです。
再生計画を提出してから認可決定までは1カ月ちょっとのイメージです。
小規模個人再生の場合、債権額の過半数、あるいは債権者の頭数の半分以上が反対してきたら、不認可決定が出ます。
債権者数が少ないとき、あるいは一部の債権者の債権額が突出しているときには注意ですね。
その際には、改めて自己破産あるいは給与所得者等再生を申立てします(勿論私はそこまで付き合います)。
債権者も経済的には反対しない方がいいような気がするのですが(自己破産されるよりは回収できるという意味です)、少数ながら反対をしてくる債権者がいます。
再生計画の認可決定がでたとして、実際の支払開始は、認可決定の1か月後から2か月後です。
官報掲載のタイミングによります。
弁済方法は、通常、3か月ごとの返済にしています。毎月弁済だと手間と振込手数料が大変ですからね。
試験積立をしているはずですので、第1回の返済(3か月分)は問題なくできるはずです。
まとめ
個人再生は自己破産よりも手続がいくらか煩雑ですが、それは主に弁護士事務所にとってです。依頼者さんにとってはそうでもありません。
ただ、同時廃止の自己破産と比べれば長丁場でしょうか。申立てから再生計画認可まで5カ月前後、受任からだと8カ月程度かかるのがスタンダードでしょう。
債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602