広島市の弁護士仲田誠一です。
「相続法改正ポイント5」というコラムにて、配偶者居住権のお話をさせていただきました。
配偶者居住権の税務上の評価方法が出てきたのでまた取り上げます。
少しだけおさらいを。
配偶者居住権は、被相続人の配偶者の保護の制度でしたね。
自宅が他の相続人と配偶者の共有の状態になると、場合によっては不動産を処分しないといけなくなる、賃料相当金の支払義務の問題が出てくる、共有物分割請求がなされる等々、配偶者が法的に不安定な立場におかれます。
そのため、改正民法は、配偶者居住権を新たに定め、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間、無償でその配偶者に居住等を認めることにしましたということでした。
配偶者居住権設定の方法は、
① 遺産分割協議による設定
② 遺言による配偶者居住権の遺贈(死因贈与でもかまわないと解釈されています。)
③ 家庭裁判所の審判
の3つでした。
もっとも、遺言を作成するのであれば、わざわざ配偶者居住権という形で保護を図る必要はないとは思っております。
遺言の内容を工夫すればいいだけですね。
配偶者居住権の期間は、原則配偶者の終身の間でしたね。
ただし、遺産分割協議、遺言あるいは家庭裁判所の審判で期間を定めたならばその期間です(改正民法1030条)。
配偶者居住権は、財産権(相続財産の一部)とみなされます(改正民法1028条)。
すなわち、配偶者はその配偶者居住権の財産的価値に相当する金額を相続したものとされます。
ただ、評価方法は難しいですということを書かせていただきました。
勿論まだ動いていない制度なので裁判上どのように評価されるのかわかりません。
そして、相続税法上の計算の方法が出てきたようです。
配偶者居住権も相続財産ですので、当然に相続税の課税対象となりますね。
一方、配偶者居住権が付いた不動産の評価は、その分下がるはずですね。
そこら辺の計算方法が出てきたということです。
あくまでも税制上の評価方法です。
しかし、民法上(すなわち、相続法)の計算も、税制上の計算方法に引っ張られていくことになると思います。
財産の評価方法について税制上の評価と、裁判所が算定する所謂時価とは異なります。
ただ、時価評価も難しい物や権利があり、税制上の評価方法が使用される、あるいは参考にされるということもあります。
建物についての配偶者居住権の評価は、
建物の相続税評価額 -
建物の相続税評価額×(残存耐用年数-居住権の存続年数)/残存耐用年数×複利現価率
です。
建物の評価額から居住権が及ばない耐用年数分の現在価値を引いたら居住権の価値が出るというイメージでしょうか。
残存耐用年数は、法定耐用年数(住宅用)×1.5‐築後経過年数、
存続年数は、配偶者居住権の存続期間が終身であれば配偶者の平均余命、それ以外の場合には定められた期間(平均余命を上限とする)、
ということです。
平均余命というのは、年齢別に統計上出されている数字になります。
配偶者居住権の建物の相続税評価は、建物の相続税評価額-配偶者居住権の価額です。
当然ですね。
土地についても定められています。
居住建物の敷地の評価は、
土地等の相続税評価額-敷地の利用に関する権利の価額
です。
配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利の価額は、
土地等の相続税評価額-土地等の相続税評価額×存続年数に応じた複利原価率
になります。
なお、同じく説明させていただいた配偶者短期居住権については、課税上の問題は生じないです。
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