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民法改正講座5 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。

まず、法定利率が変わります。 
【民法404条(法定利率)】
利息を生ずべき債権について利率に関する合意がない場合には、その利息が生じた最初の時点における法定利率が適用されます。
勿論、無利息貸付等、無償での債権も存在します。
個人間の貸付について「これまでの利息は請求できないのか。」と、質問を受けることがあります。
しかし、利息が生ずべき債権ではない限り、法定利率で利息を請求することができません。
遅延損害金は約束がなくとも請求できますが、利息は約束がないと請求できないのです。
貸付であれば、利息が発生することが契約書に明記される等が必要です。
 
法定利率が、5%⇒3%となりました。
近時の低金利に合わせた形です。それでも高いような気もするかもしれません。
 
かつ、法定利率が、3年毎の見直しにより変更されることになりました。
過去5年間の短期貸し付けの平均利率として法務大臣が告示する基準割合を基準にして調整する形です。条文を見てもイメージが湧き難いところです。慣れないといけませんね。
ただ、1%未満の端数は切り捨てる調整ですので、簡単に変動するわけではありません。
 
あわせて商事法定利率6%の商法規定が削除されました。商人が貸すのと個人が貸すのとでは異なった利率だったのですが、統一されます。
施行後は、弁護士が訴状を書く際に、商事利率が適用されるか民事法定利率が適用されるか悩まなくてもよくなります。
 
金銭消費貸借契約(お金の貸し借り)では、利息の支払合意があるのであれば利率に関する合意も当然ありますよね。
利息の支払い合意がなければそもそも利息は発生しないことは上述したとおりです。
法定利率はあまり関係がないじゃないかと思われるかもしれません。
 
実は、法定利率は実はいろいろなところで出てきます。
遅延損害金の利率や、不当利得の悪意の受益者に対する利息、損害賠償請求権の行使の際の中間利息の控除にも影響を及ぼします。
弁護士も訴状にて法定利率を請求することが多いのです。
特に中間利息の控除の考え方は損害賠償以外でも利用されます。要するに現在価値の計算ですからね。影響が大きいのではないでしょうか。

次に履行不能のお話です。履行ができない債務を内容とする契約をした場合ですね。
 
【履行不能(民法412条の2)】
1項 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
2項 契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。
 
履行不能に関する新設規定です。
1項では、履行不能の効果として、債権者が履行請求権を失うことが明文化されました。
考え方は変わっていません。履行が不可能で会ったら履行を請求しても意味がないですからね。勿論、履行を不能にした責任のある当事者は損害賠償義務を負います。
 
2項では、契約のはじめから不能であった場合(「原始的不能」といいます。)でも、契約は有効に成立したとの前提で、債務不履行による損害賠償請求が可能であることが明文化されました。
従来は原始的不能の場合には契約が無効である、そのため給付すべき者に過失がある場合には契約締結上の過失責任として損害賠償責任が生じうるとされていました。
しかし、契約締結上の過失責任は、債務不履行責任と異なって、履行利益の賠償が含まれていない信頼利益のみとされています(儲けがなくなった損とイメージすればわかりやすいでしょうか)。
履行利益、信頼利益は、弁護士泣かせの概念で、具体的事案に当て嵌めると非常に判断が難しい場合もあります。
原始的不能か後発的不能かの違いは偶然の事情によるのに損害賠償の範囲が違うとおかしいということで、効果を同じにしたようです。
 
続いて受領遅滞のお話です。債務の目的物の受取を拒んだ場合等ですね。

【受領遅滞(民法413条)】
受領遅滞という言葉をご存知でしょうか。
履行の提供をする側が怠った場合は履行遅滞ですね。わかりやすいです。
その反対に履行の提供を受ける側が受けなかった場合が受領遅滞です。
受領遅滞の効果が整理されています。
そんなことあるのか、と思われる方がいらっしゃると思います。
契約内容に争いがあるなどの思惑があって履行の提供を受けないことは珍しくありません、弁護士はけっこう出逢う事態です。
 
まず1項で、受領遅滞の効果として、債務の目的物が特定物の引渡しであるときは、履行の提供後は「自己の財産に対するのと同一の注意」をもってその物を保存すればいいとされています。
特定物ではなく種類物が目的の場合(例えば缶ジュース)には、保存ということ自体考えられないですね。
ただ、実務上は、いつの時点で特定物になるかは難しいところです。汎用性がある物も(これは種類物といいます。)、どこかの過程で特定されることになりますね。
「自己の財産に対するのと同一の注意」は善良な管理者の注意(善管注意義務)を軽減する際に使われる言葉です。保存義務の程度を軽減する意味です。少し乱暴かもしれませんが、軽過失があっても責任が生じるのが善管注意義務、そうではないので自己の財産に対するのと同一の注意というイメージでしょうか。
 
次に2項では、履行に要する費用が増えた場合には、増加額は債権者の負担とすることが明文化されました。
 
【履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由(民法413条の2)】
新設規定です。
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務の履行が不能となった場合、履行遅滞の間であれば債務者の責めに帰すべき事由によるもの、受領遅滞の間であれば債権者の責めに帰すべき事由によるもの、と各みなすとされています。
従来の考え方を明文化したものです。

今回のお話した内容は実務にも影響がある改正点かと思います。
 
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なかた法律事務所
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