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死亡保険金の指定受取人が先に死亡した場合の受取人 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
お盆前は例年忙しい気がしています。
今年も訴訟や調停の期日がお盆前に集中してしまい、忙しさに負けてコラムの投稿を怠りがちになってしまっております。
8月いっぱいはこのような状態が続いてしまいます。
 
ということで、久しぶりの投稿になります。相続関係のお話をさせていただきます。

死亡保険金の扱いです。
厳密に言えば相続手続ではないのですが。
 
まず、生命保険の死亡保険金が相続財産として扱われるかどうかの話からです。
 
死亡保険金に受取人指定がある場合(通常ありますね)、生命保険金は指定受取人がその固有の権利として原始取得すると最高裁が結論を出しています。
したがって、死亡保険金は被相続人の相続財産になりません。遺産分割の対象とはならないです。

ただし、死亡保険金が相続財産に属さないことの結果として不公平が著しい例外的な場合に(遺産と保険金の金額の比較や被相続人と受取人との関係等諸事情が勘案されます。)、特別受益に準じて持ち戻しの対象となることが判例で認められております。
その限りで遺産分割に影響があります。
ただし、特段の事情がないといけませんので、実務上簡単に認められるわけではありません。
 
税法上は、異なりますね。相続財産として扱われ、相続税の課税対象となっています。
 
ただし、被相続人が保険契約者かつ保険金の受取人になっている場合は、死亡保険金は相続財産となります。
また、受取人を相続人と指定している場合には、法定相続人が法定相続分に従って死亡保険金を受け取ることになります。
 
死亡保険金の保険金受取人として特定の者が指定されていても、その指定受取人が被相続人よりも先に死亡しており、その後に受取人の変更がなされていないケースもありますね。
 
次に、その場合には誰が死亡保険金を受け取るのかのお話です。
 
実は、死亡保険金の受取人の相続人(故人の相続人ではありません)が受取人になります。
 
保険法の定めによります。相続法の規律を定める民法によるわけではありません。
そのため、指定受取人の相続人が複数いる場合には、相続人全員が等しい割合で取得するとされています。
均等割合ですね。民法427条の規律によります。相続ではないから法定相続分ではないのです。ややこしいです。
 
ただ、遺産分割に盛り込むことには親和性があります。
たいていの場合は受取人が配偶者で受取人の相続人と被相続人の相続人が一致しますから、数次相続の扱いで協議をすることができますね。
 
勿論、以上の規律よりも保険会社との約款等の合意が優先されますので、保険会社の約款を確認しないといけません。
 
しかし、簡易生命保険、かんぽ生命保険の取り扱いは特殊です。注意が必要ですね。
 
受取人が先に死亡している場合には、死亡保険金を、指定受取人の相続人ではなく、「遺族」が受け取るのです。
相続法の規律とは異なる旧簡易生命保険法、約款にて遺族制度が定められているのですね。
 
遺族とは、①被保険者の配偶者、②被保険者の子、③被保険者の父母、④被保険者の孫、⑤被保険者の祖父母、⑥被保険者の兄弟姉妹、⑦被保険者の扶助によって生計を維持していた者、⑧被保険者の生計を維持していた者、です。
 
遺族制度にはさらに注意点があります。
 
①~⑧の順により遺族が定まり、先順位の遺族がいる場合には、後順位の者は遺族ではありません。
配偶者と子がいる場合には、民法で定める相続法の規律では配偶者と子が共同相続人です。
しかし、遺族制度では、遺族は第1順位の配偶者のみです。第2順位の子は遺族にはなりません。
なお、同順位の遺族が複数いる場合には、均等割合で取得します。
 
相続法と異なり、代襲相続の仕組みがありません。
被相続人に子が3名いるが1人は子を残して既に亡くなっている場合(配偶者が既にいない場合)、民法で定めている相続法の規律では、法定相続人は生存している子2人と亡くなった子の子(すなわち被相続人の孫)ですね。孫は亡くなった子に代わって相続人となります。これを代襲相続といいます。
しかし、遺族制度では、代襲相続を定めていませんので、被保険者の子は生存していた子2人だけになります。孫は受取人になりません。
これが公平なのかどうかは疑問ですが。
 
このように、死亡保険金の受取人が先に亡くなっている場合には注意が必要ですね。
特にかんぽ生命は気を付けないといけません。
 
遺言、相続、遺留分、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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