広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
今回の不動産問題コラムでは、不動産に昔の抵当権が残っているケースについてお話します。
相続で受け継いだ不動産に昔の抵当権設定登記が残っていて売却に支障が出ているという相談を受けたこともあります。
通常は、被担保債務を弁済したら、抵当権設定登記を抹消しますね。
昔の抵当権が残っているケースでは、被相続人あるいはその先代が抹消手続をするのを漏らしたのだろうと思います。
もしかしたらまだ弁済していないかもしれないケースもあるかもしれません。
ただ、昔の事情はもはやわかりません。
ところで、抵当権抹消登記は、抵当権者と所有者の共同申請になります。
住宅ローンを完済したら銀行から抹消書類をもらえますね。
実際には債務者が自分であるいは債務者が司法書士に依頼して抹消登記をするのですが、形上は、共同申請なのですね。
そうであれば、昔の抵当権も、抵当権者の協力を得られれば抹消登記をすることができます。
ただし、昔の抵当権であれば、抵当権者の相続人(勿論、相続が何回か続き、相続人が枝分かれして多数になっているかもしれません。)が相手ですね。、
あまり現実的ではないかもしれませんし、手間がかなりかかります。
関係者が多い場合にはすべての方の同意が得られるかわからないし、書類取得などの協力を得ることも煩雑なため、訴訟により解決することの方が多いのではないでしょうか。
相続人は調べないといけませんが、相続人を相手に抹消登記手続請求訴訟を提起し、判決に基づいて抹消登記を行うのです。
判決に基づいて債権者の相続人の登記申請意思が擬制されますから、所有者一人で登記申請できます。
弁済した証拠がある場合は弁済による抵当権消滅を理由にして、ない場合には(ほとんどそうでしょうが)、消滅時効の援用による被担保債権の消滅を理由として、抹消登記を求めます。
勿論、訴訟提起をする場合には、事前に、被告となる相続人に対して連絡をし、事情を説明し納得してもらう努力をします。
訴状がいきなり届いたら驚かれますし、要らぬ紛争を生じさせてしまうかもしれません。
事情を理解してもらい、訴状が届いても放っておいてもらえつならば、スムーズに判決を得ることができます。
相続人による先祖名義の不動産の時効取得のケースですが、被告である現在の相続人が枝分かれをして30名を超えることになった例がありました。
事前にご理解を得て、お一人だけ裁判所に出てこられましたが、争わないというお話をその場でいただいたので、すぐに判決を得ることができました。
売却を予定しているケースなどでは、できるだけ早く抹消登記を実現しなければなりません。事前の根回しも必要です。
複雑なケースでは相続人調査だけで1~2カ月要することもあります。
できるだけ早く着手しましょう。
なお、昔の抵当権者が法人であった場合には、相続はありません。
その法人に対して抹消登記手続を依頼、あるいは抹消登記手続請求訴訟を提起します。
名前が変わっても、合併があっても、法人が存続している限り問題ありません。
法人がなくなっていたらどうでしょう。
なくなった、の意味によりケースバイケースで考える必要があるでしょう。
今回は、不動産に昔の抵当権が残っているケースでどうやって抹消をするのかをお話ししました。
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