広島市の弁護士仲田誠一です。
今回は相続問題のうち、同族中小企業の株式が遺産分割審判においてどのように分割されるのかをお話ししたいと思います。
企業法務、特に事業承継とも関わりが深い問題です。
遺言がない場合、原則として法定相続分に応じて各相続人が遺産を共同相続します。
当事者間で遺産分割協議が整わない場合は、家庭裁判所へ調停を申立て、それでも合意できない場合には、家庭裁判所で審判を出してもらい、具体的な分割方法を決めてもらいます。
審判に不服があれば抗告です。
それでは事業に支障をきたす可能性があります。相続共有株式の権利行使者を決めることができなければ株主総会も開催できない、したがって取締役の選任もできないということになりまねません。
だから事業者や経営者は遺言を始めとする事業承継対策が必要なわけです。
ここで、抗告審の事例を目にしたのでご紹介します。
審判で株式が共有とされた、それに不服の会社後継者である子が抗告をしました。
民法906条には遺産の分割の基準を定めています。
裁判所は、株式について、典型的な同族会社で、経営規模も小さく、経営の安定のためには株主の分散を避けることが望ましいという事情が、同条の「遺産に属する物又は権利の種類及び性質」「その他一切の事情」に当たるとして、後継者に株式を単独取得させて、他の相続人らには代償金を支払せる形に審判を変更しました。
事業承継問題の社会問題化、事業承継法制の整備といった事情を考慮した判断です。
同族中小企業の実情に合った判断だと思います。
ただし、ここで注意。裁判所の判断理由として、後継者に代償金の支払能力があることが示されています。
後継者に資力がないとこのような判断はできないのですね。
自己資本が厚い(内部留保をきちんとしている)会社ほど、株式評価額は高くなります。
代償金の支払能力は、事業承継対策における後継者の資産形成が必要な理由の1つですね(他に、相続税、株買取資金、遺留分対策などもその理由です)。
後継者を受取人に指定した生命保険が有効かもしれませんね。
相続財産とはみなされず、原則として遺産分割に影響しません(例外はあります)。
将来を見越した役員報酬戦略も有用でしょう。
ここでご紹介した裁判所の判断は、もちろん一般的なものとは言えません。
経営者、事業者の方は、このような裁判所の判断に頼ることなく、後継者が会社をスムーズに承継できるよう、株式の移転、遺言等の相続対策といった事前の対策を行うのが本筋です。
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