広島市の弁護士仲田誠一です。
本年もよろしくお願いします。
遺産たる預貯金(法的には預貯金債権になります)の遺産分割における取り扱いに大きな変更がありました。
遺産分割の対象となるかならないかの大きな話です。最高裁の判例変更です。
従前は、預貯金債権は一部の例外を除いて、可分債権(数量的に分けられる債権)として、相続発生と同時に各
相続人に各相続分に応じて帰属するという理屈で、遺産分割の対象となっていませんでした。
そのため、以前のコラムにて、
遺産分割調停において
相続人の誰かが預貯金を遺産分割の対象に含めないと主張した場合、当該預金が遺産分割の対象とならないこと(郵便局の定額貯金だけは別扱いとの判例がありました)、
そしてそれは不公平であること(特に特別受益があるかつ遺産のうち預貯金がほとんどの場合)
を投稿させていただきました。
例えば息子が生前贈与をたくさんもらって遺産はわずかな預貯金のみという場合、預金は遺産分割の対象から外れるので、特別受益たる生前贈与を遺産分割に反映できなかったのです。
最高裁判所もその不公平な点を無視できなかったのでしょう、頑張った方あるいは弁護士がいたからこそですが。
大法廷で従前の扱いを覆す判断が出ました。
預貯金債権は相続によって共同相続に間で当然に分割はされず、遺産分割の対象となることになりました。
なかなかコラムを書く時間がなくて判例紹介が遅くなりましたが、紹介させていただきます(本年は反省して書いていこうと思っております)。
これで遺産分割が公平になったのだろうと思います(実際の案件でも困ったことがありました)。
実務上、影響が大きい判例変更です。
一方で問題もあります。
これまで金融機関は遺産分割前でも相続分に応じた払い戻し請求に応じてきました。
金融機関が仮に応じなくとも、訴訟をすれば請求が認められてきました。
しかし、預貯金が遺産分割の対象となるのであれば、金融機関も相続分が決まらない遺産分割未了の段階での払い戻しには応じなくなりますね。
その点での不便さは出てくることになろうかと思います。
※ 後に、民法改正により一部払い戻し制度が創設されました。
ただ、早期に遺産分割をしないと預貯金も下ろせないので、相続問題を早期に片付ける契機になる点は間違いないと思います。
なお、判例変更は、預貯金債権のみについてです。
他の可分債権(例えば貸付金など)は、これまでどおり遺産分割の対象外とされるのでしょう。
たびたびお話しておりますが、家事事件と言われる相続・
離婚は本やインターネットを見て簡単に結論を出すことはできない論点が意外に多い分野です。
弁護士とよくご相談されて進めてください。
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