広島市の弁護士仲田誠一です。
企業法務のお話です。
株式会社(特例有限会社も)の所有者は株主です。代表取締役社長ではありません。
上場会社であれば株式が分散している、すなわち株主がたくさんいるのは当然ですね。株式は資金調達手段ですから。
株主が経営することは不可能ですから、経営は専門家たる取締役が行います。
これを所有と経営の分離といい、会社法の想定する典型的な姿です。
株主からリスクを株式に限定された形で広く資金を集め、経営者が運用し、株主に配当する形ですね。
効率的な制度設計とも言えます。
同族中小企業で株式の分散をする意味はあるのでしょうか?
意味はないとは言いませんが、弊害の方が大きいと思います。
株式の分散はお勧めしません。
同族中小企業は、大企業の小さい版ではありません。別物です。
会社法が本来想定した株式会社ではありません。
同族中小企業の資金調達は銀行借入です。
経営者が連帯保証により無限に責任を負い経営しております。株式により資金調達をするわけではありません。
責任を負う経営者が、全株式を所有し、機動的にスピード感ある経営を行うことが中小企業の強みです。
会社法もそのような中小企業のために法定手続を簡素化できる制度を用意しています。
事業承継の観点からも株式の分散は問題です。後継者が会社をスムーズに引き継げるように(将来あるかもしれないM&Aのために)株式は集中するべきでしょう。
実際に、株式を分散すると面倒なこともあります。
株主は会社の所有者ですから、少数株主であっても株主権というものが認められています。ひとたび揉めると、対応が非常に面倒なのです。
弁護士をしていると実際にそのような揉め事に接することになります。
勿論、それにより経営が立ち行かなくなるということはないでしょうが、いちいち法定の手続をきちんと踏まないといけないコストがあります。
一方、株主側から見ると、同族中小企業では、少数株式を保有していてもあまり意味がありません。
市場で売却してお金に変えることもできません。それなのに相続税の課税対象となるだけです。
配当を貰えばまだいいのですが、会社の経営戦略として中小企業が配当をすることは税務上メリットがなく、かえって弊害があると言えます。
従業員の士気向上のためなどの従業員持株制度も、上場企業では安定株主の確保というメリットがあるでしょうが、中小企業には関係ありません。
しかも、株式の付与(譲渡)、退職時の株式の買取りの際、額面や低廉な金額で取引をしていることが通常のようです。
それは、税務上のリスクがありますので気をつけてください。
従業員の士気向上は別の方法で行うのがよろしいのではないでしょうか。
もし株式が分散している中小企業があれば、早期に株式を集中させることをお薦めします。
顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602