広島市の弁護士仲田誠一です。
企業法務のお話です。
株式会社って誰のものでしょうか?
答えは簡単です。株主のものです。
日本的な感覚では、従業員も会社の一員のようなイメージですね。
現在の株式会社制度は輸入物なのです。そのため、江戸時代までの日本的な感覚とは違うのですね。
あくまでも制度の問題ですが。
株式会社制度の原型は、大航海時代まで遡ります。
アジアとの交易は非常に儲かるが、航海の沈没や海賊などに襲われる危険も非常に高かった。無事に帰港できるかどうかギャンブルですね。
単独で出資して船を出すのは危険です。そのため、教会や貴族が出資し合い(株主)、船長を選んで(取締役)、奴隷を使って(従業員)、交易し、沈没等したら教会・貴族が諦める(株主有限責任)、帰還できれば利益を教会・貴族に分配する(配当、残余財産の分配)という仕組みができたのですね。
同時に出資者への会計報告のために複式簿記が開発されました。
そのためなのでしょうか、法律上、株式会社は株主のもので、従業員は法律上の構成員ですらありません。
合同会社など会社法でも「社員」は存在しますが、それは出資者を指します。
従業員は、労働者保護法制による修正により大航海時代の奴隷的立場ではなくなりましたが、法的には構成員ではないのです。
従業員は、特に中小企業にとって生命線と言っていいほど大切なのは事実です。
日本の社会通念でしょう。
経営者の中には、社会のため、従業員のためにと、経営をされている方も多くいらっしゃいます。
法律は西洋から来たため日本人の意識とはギャップがありますね。
なお、従業員に自社株を持たせると従業員の会社の構成員になりますが、経営戦略上、あるいは事業承継上、お薦めできません。
従業員の士気向上は他の人事施策に任せましょう。
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広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602